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RE:幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。 作者:のきび
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救国の女勇者は救われる

「ち、違うんだミスティア。俺はまだミスティアに何も言ってないから」

 多分マイラはこうなることを知っていて、それで俺にキスよけの練習をさせたんだ。一本取られたけどマイラの思う通りにはさせないぜ。

 俺はミスティアに告白しようと正面に立ちミスティアの肩を押さえた。

「ミスティア!」

「は、はい!」

 ミスティアの目は俺の顔を見ては右へ左へとクルクルと目まぐるしく動く。

「はい、ストップですよガリウス。次の敵です」

 マイラは俺の襟首をひっぱり次の敵だと言う者と対峙させた。そこにいたのは黒いローブに三角帽を被った魔法屋のオババだった。

「オババが敵? なんの冗談だマイラ」

「いいえ、敵ですよ。ね? シズさん」

 その名前を言われたオババの眉間がピクリと動く。


「ただの人間が私の正体を見破るとはね。それでどうするね?」

「ミスティアさんの呪いを、救国の女勇者(ヴァルキリア)の称号をはずして欲しい。あなたならできますよねシズさん」

「……」

「私はガリウスにもミスティアさんにも幸せになって欲しいんです。何よりあなたの方法は間違ってるから」

「……」

「あなたの大事なものは私が復活させるわ、だからあなたの大事なガリウスを苦しめないで」

 初対面のオババが俺を大事? マイラは何をいっているんだ。だが言われた方のオババもマイラの話を真剣に聞いている。正直何がなんだかわからない。

「……」

「シズさん!!」

「わかったよ、どうせこんなに早く私の正体がシズだとバレたんじゃ真奈美は暴走しないだろうしね。ならすべての計画は失敗だ。私はまた隠れることにするよ」

 オババはそう言うと俺の方に向かい歩み寄る。その表情は先程までとは違い優しい表情だった。

「それでガリウス。ミスティアを助けたいのかい?」

 オババが俺の顔を真剣な眼差しでみて問いかける。

「はい、助けたいです」

「ミスティアを助けることによってすべてを失っても?」

「ミスティアを救えるなら命だって惜しくない!」

 その瞬間、後頭部にチョップが入れられ怒り顔のマイラが俺の服を掴み引き寄せる。

「ガリウス! あなたが命をかけるのは勝手だけど、あんたが死んだら悲しむ人がいるでしょ! バカなの!?」

 そう言うとマイラはミスティアを指差す、もちろんそのあとに自身も指差してドヤ顔をする。

「ごめん、でも俺はミスティアを救いたいんだ」

「……ガリウス、もし私のせいであなたが死んだら私はどうすればいいの? あなたの命で生きている私は死ぬこともできないし毎日悲しみにくれなきゃいけないのよ? そんなの地獄だわ」

 そう言うとミスティアは俺に抱きつきギュッと体を抱き締める。

「はい、バカップルはちょっと離れてね。と言うことよシズさん」

「本当にバカップルだね。こんな子達を苦しめたら、あの人も私を許してくれないだろうね。ただ本当にあんたに任せてもいいのかい?」

「ええ、まかせて。あなたの大事な人は私が復活させる。ただしあなたが望むような結末になるかは私にもわからない」

「いいさ、甦ってくれればそれで良い。分かったよミスティアは助けよう」

「助けられるんですか!?」

「ああ、その代わり真名命名(ネーミング)とレベルを失うけど良いかい?」

「構いません、こんなものでミスティアが助かるならいくらでも取ってください」

 俺がそう言うとミスティアは俺の腕をとり強く握りしめた。

「「バカップルうぜぇ」」

 マイラとシズの言葉が被ると二人は顔を見合わせて笑った。まるで無二の親友のように。

「はぁ、イチャイチャとうざいのでさっさと終わらせることにするよ”神気よ我が元に戻れ”」

 その瞬間、俺の中の力が光となってオババへと向かうミスティアからも小さな光が飛び出し俺の光と一つとなりオババへと吸い込まれた。

「ガリウスこれでミスティアは助かった。ただしあんたは今日からレベル1だ。せいぜい頑張って、もう一度強くなるんだね」

「ありがとうオババさん」

「ふん、だ……の頼みだ無下にはできないだろうよ」

「え?」

 小さすぎて聞こえなかったけど、その言葉を言うときのオババの表情はあの人と同じだった。だから俺はオババの正体がその時わかった。

「じゃあ、さようならだね」

 そう言うとオババの後ろに黒い渦が現れ、その中に入ると一瞬で掻き消えた。

 俺はミスティアの手をとり見つめあった。ミスティからは救国の女勇者(ヴァルキリア)の称号が消えていた。救えた。救えたんだ。今こそ俺の想いを打ち明けよう。俺の本当の心を。


「きしゃま! ミスティアからはにゃれろ!!」

 いつの間にか目を覚ましたランスロットがプルプルと俺に剣を向けボロボロの体を奮い立たせる。

「……ランスロット」

 ミスティアがランスロッに駆け寄ろうとするが俺の方を見ると首を振った。

「ランスロット、私はこの人がガリウスが好きなの。あなたと婚約したのは破棄させてください。ごめんなさい……」

「だまれぇ! お前は俺のものだ誰にも渡さない!」


「はぁ~。ミスティア、俺は情けないよ」

「……ガリウス?」

「だってそうだろ、おれが先にミスティアに告白しようとしてたのに先を越されちゃったんだから」

「ガリウス」

「俺もお前が好きだ、絶対に誰にも渡さない!!」

「くそぉが!!」

 ランスロットが剣を大きく振りかぶり俺に剣を叩き下ろそうとした瞬間、おれは身体中に魔力を流し身体操作を行った。

 振り下ろされる剣を避け俺はランスロットの腹部へ拳を当てた。その力は絶大でレベル1といえどもランスロットを壁に叩きつけるには十分な威力を見せた。


「ぐぞぉが!」

「とどめだ!」

「やめてガリウス!」

 振り上げる俺の腕をミスティアが掴むと首を横に降る。

「何で止めるんだ? こいつはミスティアを操っていた一味だぞ」

「それでも、最初に助けてくれたのは本当だと思うから」

 助けたか。確かにこいつは俺にできないことをした。ミスティアの命を救った。

「……そうか、ならこれ以上は攻撃しないよ」

 俺は腰の剣を抜きランスロットの倒れこむ道に突き刺した。

「悪いな俺はミスティアを誰にも譲る気はないから、今回は許すけど次は殺す」

「ぐぞぉがぁ!!」

 ランスロットは俺の刺した剣を抜くと俺めがけ切り付けてきた。しかし剣は俺に振り付けた瞬間コップの水を投げ捨てるように崩れ去った。

「なっ!」

「チャンスは与えた、お前はそれを無下にした」

 俺はランスロットの顔に一撃をいれた。その衝撃でランスロットは気を失った。まあ、今回は許してやると決めたからな、まだこれは今回だ、命拾いしたなランスロット。

「ミスティアが救ってもらったことがあるなら恩は返さないと寝覚めが悪い。だが次は本当にないぞ」

 おれは気を失ったランスロットにそう告げるとマイラとミスティアを連れその場をあとにした。


「それでガリウス、そちらの方はどなた?」

「あ、この子は――」

「あは、始めまして。私の名前はマイラ。ガリウスの婚約者で本当の勇者です! よろしくねミスティアさん」

 そう言うとマイラはニコリと握手の腕を差し出した。

 まだまだ一波乱ありそうだ……。




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