「心臓止まっちゃっているけどビックリしないでね」我が子抱っこできぬまま母親死亡…遺族が病院提訴
- 陣痛促進剤を使用し出産した29歳の母親が死亡
- 遺族は、陣痛促進剤が適切に投与されなかったなどとして病院に損害賠償を求め提訴
- 陣痛促進剤は「安全な薬」ではあるが、使用量など注意が必要だという
我が子を抱っこできないまま、29歳の母親が…
お産がスムーズに行えなくなった時、人工的に陣痛を強めるための薬が「陣痛促進剤」。
厳重なチェックのもとに使うことで、お産を安全にコントロールでき、赤ちゃんと母親の命を救うことにつながる…しかし、悲劇は起きてしまった。
生まれたばかりの我が子を、やさしい笑顔で見つめてる母・川島美沙(29)さんの写真。
その写真が撮影された数時間後…
母親になったばかりの美沙さんは、29歳の若さで、帰らぬ人となった。
2017年8月、神奈川県内の産婦人科で陣痛促進剤を使用し出産した美沙さんは、その後、出血多量の末、亡くなった。
美沙さんの妹:
最初に抱っこしたかったはずなのに、抱っこできないまま…
美沙さんの夫:
向こうから「心臓止まっちゃっているけど、びっくりしないでね」と簡単な口調で言っていたのが、今でも鮮明に残ってました。
遺族側が病院を相手に損害賠償訴訟
美沙さんの遺族は、陣痛促進剤が適切に投与されなかったうえ、止血など適切な処置が行われなかったとして、4月3日、病院側に対し、約1億4200万円の損害賠償を求める訴えを起こした。
陣痛促進剤とは…
遺族側が適切に投与されなかったとしている陣痛促進剤とは、子宮の動きをうながし、陣痛を活発化させるための薬だ。
中林病院副院長の中林靖医師は「なるべく陣痛を適正化させるという、安全なお薬ではあります」と話す。
しかし、その使用量には十分な注意が必要だという。
中林医師は「(投与量が多くなり)陣痛が強くなりすぎると、今度は子宮が破裂するという子宮破裂といったリスクも出てきますので、そうならないように注意をしながら見ていきます」と話した。
一般的に陣痛促進剤の使用量を誤ると、子宮が破裂し出血する恐れがあるという。
3日提出された訴状によると、病院側の事故調査報告書では美沙さんは「別の要因で死亡した」とされているという。
提訴されたことについて病院側は「状況が入ってきておらず、現時点でコメントは差し控えます」と回答している。
日本産科婦人科学会の定めたルール
本来、陣痛促進剤は、無事に出産するために使うものだが、危険な状態になりうることもある。
このため、日本産科婦人科学会は厳格なルールを決めている。そのルールを見ると…
・まずこのケースは使用が適切かどうか確認する。
・そのうえで、本人の文書による同意を得る。
・分娩監視装置で、陣痛の強さ、胎児の心拍数などを連続的にモニターする。
・基準量の範囲内で使用する。
ルールが守られないケースも…
一方、こんなデータもある。
日本医療機能評価機構によると、脳性まひで補償対象となった赤ちゃん817件の中で、
陣痛促進剤として一番多く使われているオキシトシンという薬が使用された例が185件。
そのうち57%にあたる105件で、基準より多く投与されていた。
さらに、2割以上が連続的にモニターされていないなど、
ルールが守られていないケースがあるのが現実だ。
中林医師は「使用量を守り、母子の状態をしっかりと監視して使えば決して危険なものではない。使用のリスクも含め医師と話し合うことが重要だ」と指摘している。
(「Live News it!」4月3日放送より)