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【野球】

東邦・石川、センバツVの千両役者 決勝2ラン&ダメ押し弾&97球完封

2019年4月4日 紙面から

 平成元年の優勝校が、平成最後のセンバツを制した。東邦(愛知)が決勝で習志野(千葉)に6-0で勝ち、1989年以来30年ぶり5度目の優勝を決めた。東邦は今秋ドラフト上位候補の石川昂弥投手兼内野手(3年)が2本塁打を含む3安打4打点と大活躍。右打ちのスラッガーとして、プロ側の評価をさらに押し上げた。投げても初戦から5戦連続で先発。3安打無失点に抑えて、初完封で締めくくった。

(左)習志野-東邦 30年ぶり5回目の優勝を決め、集まって喜ぶ石川(中)ら東邦ナイン=甲子園球場で(松田雄亮撮影) (右)優勝旗を手にする石川(黒田淳一撮影)

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 最後の打者を三ゴロに打ち取ると、マウンドで右腕を突き上げた。三塁手の山田が真っ先に抱きつくと、石川は続けて駆け寄ったナインにもみくちゃにされた。投打二刀流の主将が平成最後の甲子園ヒーローになった。

 「優勝旗は重かった。でも、持って実感が湧きました」。主将がエースを務めるチームが優勝したのは平成初。平成最初の優勝校が、最後の優勝校にもなった。

 「狙うと言ってきたけど、まさか本当にできるとは」

決勝で3安打完封の力投を見せた(内山田正夫撮影)

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 初戦から5戦連続の先発マウンド。1回無死一塁のピンチを自らの好フィールディングで併殺に仕留めると、2戦連続無安打だったバットに勢いが乗り移った。1回1死一塁で迎えた第1打席で、バックスクリーン右に飛び込む特大の先制2ラン。5回にも2死二塁で、右中間に放り込んだ。

 「1本目は打った瞬間、いったと思った。2本目は入ると思わなかった。でも、これで投球が楽になるなと」。先制弾の後、森田泰弘監督(59)から「オマエが打って、投げて、やってくれ」と声を掛けられた。「分かりました」と答えたとおり、平成最後の甲子園本塁打となった高校通算44、45号を含む3安打4打点。石川らしい中堅から逆方向への特大弾で、度肝を抜いた。1試合2本塁打と1大会3本塁打は、松井(元ヤンキースほか)、清原(元西武ほか)らに並ぶ最多記録。準決勝まで打率1割台に沈んでいたスラッガーが、決勝で目覚めた。

 「1、2回はしっくりこなかった」というマウンドでは、3回からやや肘を下げて投げるなど、昨夏から本格的に投手を始めたとは思えない対応力を披露。二塁すら踏ませず、自身、今大会初の完封を成し遂げた。それでも「本職は打者か、投手か?」と問われると「バッターです」。愛知県東郷町のグラウンドのベンチ裏にある黒板には、投手陣の1年の目標が書き込んである。石川が記したのは「背番号5で甲子園」。背番号1で臨むことになったものの、打者にこだわり、決勝はバットでも結果を出した。

 入学直後から、森田監督の妻が経営する飲食店の近くで暮らす。「あれだけの選手には、なかなか出会えない。できるだけ、そばにおきたかった」。そう話す森田監督と食事をともにし、コミュニケーションを取ってきた。森田監督は店の駐車場に筋力トレーニングの器具を設置。夕食後も練習できる環境で、細かった上半身はすっかりたくましくなった。

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 平成が間もなく終わり、夏は令和元年として迎える。石川は「もう優勝は過去のこと。夏も優勝するために、一からやり直す」と表情を引き締めた。高校ナンバーワンスラッガーとして、今大会でプロの評価はさらに上昇。石川のバットから、ますます目が離せなくなった。 (麻生和男)

 ◆完封&本塁打 東邦・石川昂弥投手が3安打完封、2本塁打。センバツ決勝での完封と本塁打は1985年(第57回)の伊野商・渡辺智男(元西武など)以来2人目。2本塁打となると、春夏、全試合を通じて史上初。

 

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