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“有給休暇”取らせなきゃダメ!
取得率が37%から61%にアップ!あるスーパーの大改革とは。
働き方改革の一環で、有給休暇に関し1日から新たなルールが適用されます。パートやアルバイトを含め年間10日以上の有給休暇を与えられた人について、本人の希望を踏まえた日程で年5日の有給休暇を取得させることが企業に義務づけられました。違反した場合には、30万円以下の罰金が科せられます。
世界各国の有給休暇の取得率を見てみましょう。日本は50%で、ほかの主要国に比べ格段に低くなっています。以前より取りやすいと感じている人もいるかもしれませんが、それでもご覧のような状況です。休暇を確保するために企業はどう変わるべきか。あるスーパーの改革からヒントを探ります。
会議を削減 業務を「見える化」
【報告:経済部 仲沢啓記者】
新潟を中心におよそ80店舗を展開するスーパー。3年前、およそ1400人の正社員の有給休暇の取得率は、平均を大きく下回る37%でした。運営する「アクシアル リテイリング」の山岸豊後専務によると、「人手不足の状態だからパートやアルバイトをなかなか採用できない。(有給休暇を取ると)同僚に迷惑がかかるから取りづらいよね、というのが実態だった」といいます。
そこで2年前、徹底した業務改革に乗り出しました。まずは、むだな会議の削減です。店長や主任が出席していた本部での会議を半分に減らし、店舗の人手を確保しました。このスーパー「原信 寺島店」の廣川正樹店長は「会議が時間を半日使うようなものばかりだった。それが1日なくなると、ほかの(代行の)従業員も出勤させる必要がなくなる」と話しています。
さらに、すべての業務を「見える化」し、従業員一人ひとりの作業を時間ごとに明確にしました。例えば、6時出勤のある従業員の場合、10分間で点検作業を済ませた後、値札づくりを20分行うよう、あらかじめ業務が決められています。
「マルチタスク化」へ 従業員全員がレジ打ち研修
なかでも効果が高かったのが、従業員が1人2役以上をこなす「マルチタスク化」です。取材した日、廣川店長が「レジ応援お願いします」と呼びかけると、バックヤードから総菜を作る担当者が出てきました。そして、慣れた手つきでレジを打ち始めました。このスーパーでは、すべての従業員にレジ打ちの研修を行っています。
時には、レジ打ちの応援に駆けつけた総菜担当者の隣の列で、同じようにレジを打つ廣川店長の姿が見られることも。従業員が1人何役もこなすことで、現場の業務の効率化に成功しました。廣川店長は「複数の作業ができるようにしたり、違う部門の仕事も覚えてもらったり、無理・むだ・ムラがなく人を割り当てることができる」と話しています。
有給取得率70%目指す
マルチタスク化を支えるための積極的な施策もあります。バックヤードで行う食材のカットやパッケージ作業の一部を工場に集約したことで、負担を大幅に軽減したのです。
こうした努力が実り、3年前に37%だった有給休暇の取得率は61%まで上昇。2019年度は70%を目指しています。「アクシアル リテイリング」の山岸専務は「いかに効率化してくか、どのぐらいまでいけるか、やってみようと。それが従業員からの会社に対する信頼につながるはず」と話しています。
総菜づくりからレジ打ちまで、勤務時間内の密度が濃くなっているような感じがしましたね。
そうですね。それによって休みを取りやすくしようということですね。ただ、小売業としては先進的な取り組みをしているこのスーパーでも、全員に年5日の有給休暇を確実に取ってもらうのは簡単ではないとしています。業務の見直しを前提にしたうえで、さらに計画的に休みを取ってもらう環境づくりも必要になるということですね。