新元号に便乗して転機をはかる安倍政権の行き詰まり
もうひとつの狙いとして、皇太子とは仲良くしたいという思惑がある。今上天皇は徹底した平和主義者、護憲主義者であるし、沖縄県民に深く寄り添う気持ちを何より大切にしていて、そのどれをとっても安倍とは正反対の立場にある。かつて天皇が女性天皇・女系天皇や女性宮家を可能にする皇室典範の改正を政府に働きかけた時に、それをことごとく潰したのは安倍であり、そのため、この生前退位は政府に頼まずに、天皇が自分で直接国民にメッセージを発してようやく実現したのである。このように、安倍は今上天皇とは冷たい関係なので、次の天皇とは何とか関係を良好にしたいという思いがあるのだろう。
しかし、皇太子の学友である小山泰生の著書「新天皇と日本人」を読むと、皇太子は「天皇制には民主主義政治の弱点を補完しうる大事な機能・役割がある」という考えを持っているようで、しかもそれは深い歴史の研究に根ざした信念であるらしい。歴史に限らず何事も勉強不足の政治家など相手にされないのではないか。