大阪維新という名の「東京への憧れ」
2019.04.03
菅野完
「大阪維新」なるものの正体
おそらく、これだ。これが、ここ10年、「大阪維新」なるものが猖獗(しょうけつ)を極めた原因だ。――東京から見たら大阪はどう見えるか。大阪と東京はどれほどの差があるのか、大阪が東京になるためには何が足りないのか、…そんなくだらないことを意識してみたり確認してみたりするために、「改革」の名のもと、文化予算を削り、病院を潰し、文楽を殺し、児童図書館を破却し、渡辺家住宅を壊したりと、ありとあらゆるものを、この10年、大阪は壊し続けてきた。 「東京になんか、負けてられるか!」 大阪人特有のこの態度が、美的な要素をいささかでも帯びていたのは、工業の街大阪、商業の街大阪が、実際に、金を稼ぎ、人を集め、商品を生み出し続けていた高度成長期のころまでだろう。「お前らには負けてられるか!」が絵になるのは、実力のない権威主義者を、権威は持たぬが実力を有する側が下克上し、それに成功する場合に限られる。その他の事例は単なる負け惜しみであって、腐臭を発するのが関の山だ。 今の大阪のテレビをみてみればいい。タレント、芸人、文化人の類が、「東京のテレビではこんなこと言えません」の枕詞を置いて「ぶっちゃけトーク」を展開することが定番となって久しい。しかし「東京のテレビではこんなこと言えません」の一言を発する、タレント、芸人、文化人を、東京のテレビで見かけることはほぼない。そりゃ東京のテレビでは言えないだろう。言うチャンスがないのだから。 大阪では世論形成に絶大な影響をいまだに有しているという「そこまで言って委員会」なる番組の恥ずかしさは目も当てられない。やしきたかじんが仕切り、三宅久之、田嶋陽子などのコメンテーターが受け答えするという、番組開始当初のスタイルは、番組構成から出演者まで「ビートたけしのTVタックル」の模倣だ。単に、ビートたけしを、たかじんに置き換えただけにすぎない。たかじんはまだよかった。能力も実力もあるのだから。しかし彼亡き後、この模倣のフォーマットは、もはや「劣化コピー」という言葉さえ似つかわしくないほどに堕落している。「東京の真似」でテレビ番組を作り、「東京のテレビには呼ばれない人」を出演させ、「東京のテレビでは言えない」の一言に拍手喝采を送る……これは一体、なんの茶番なのだ。
茶番とルサンチマンの狭間で踊った最果てに……
こうした茶番とルサンチマンの間を、ジェンカのようにいったりきたり10年踊り続けたその最果てとして、今次の選挙で「都構想」なる代物が問われることとなった。 大阪市を廃止して、「特別区」を設置するのだという。「住民サービスが身近になる」「二重行政の解消」と、大義名分はいろいろあろう。が、ならば「特別区設置構想」とでも呼べば良い。しかしそれをことさらに「都構想」と呼ぶ。実にいじましいではないか。ここまでして「東京への憧れ」を吐露することもあるまいに。 いかに維新が大阪の選挙で勝とうとも、「大阪府が大阪都になる」ことはあり得ない。全国レベルの政党支持率が、あの社民党と肩を並べる程度しかない維新の会に、地方自治法の改正などという大仕事ができるはずがないではないか。大阪府が大阪都になれない以上、大阪府は大阪府のまま。「都構想」なるものが実現しても、大阪市がなくなるだけに過ぎない。新しく設置される「特別区」にしても、すでに東京の港区や千代田区あたりが「こんな不便な制度やめて、普通の市になりたい」とさえ言っている、時代遅れで中途半端代物だ。つまりは、よしんば都構想が実現しても、東京からはるか20年遅れの状態になるに過ぎない。はたして、その結果を「東京には負けてへんで!」といいたがる人たちは、素直に受け入れることができるのか?
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