こうした経済的なプラス面をいうと、必ず出てくる反論は、IRの施設の3%にすぎないカジノへの批判である。

 だがもちろん、夢洲IRでも、ギャンブル依存症対策は考えられている。

 2016年12月にIR推進法が成立したが、2018年7月にはギャンブル等依存症対策基本法が成立した。

 夢洲IRでは、この法律に基づく措置に加えて、大阪府と大阪市はIR事業者に対して独自の対策も講じる予定だ。

カジノはギャンブルを
国際標準に変えられる

 それに加えて、筆者は、カジノという国際的なギャンブルが国内に導入されることのプラスの効果があるとみている。

 既存の国内ギャンブルの低い当せん金率がよりはっきりし、野放図な国内ギャンブルから、よく規制管理されたカジノへのシフトが起こり、長期的には健全なギャンブル規制ができると思っている。
 
 国内ギャンブルの当せん金率について、宝くじは45.7%、公営競技は74.8%、サッカーくじは49.6%だ。

 事実上、ギャンブルといえるパチンコについては、出玉調整があるので、事前に当せん金率がわからない。

 この意味ではギャンブル以前の問題がある。一方、カジノの当せん金率は国際標準で行われれば、95%程度である。

 カジノができれば国内のギャンブルがカジノ中心へと移行し、その結果、その他のギャンブル依存、もっと単刀直入に言えばパチンコ依存を減らせる可能性があることを示している。

 いずれにせよ、夢洲IRを拠点として近畿圏は大きく発展する可能性がある。

 夢洲IRからの納付金・入場料等の大阪府、市への貢献もある。府市では、その財源を子育て、教育、福祉、観光振興、文化芸術・スポーツの振興、懸念事項対策、地域経済振興などに充てるという。

 年間の納付金収入570億円、入場料収入130億円で計700億円になる。そのほかに事業者などからの税収増150億円も期待できる。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)