日本刀の周辺

日本刀に関連した事物についての随想

泥棒と詐欺師が操作する刀の値段

2014年09月04日 | 日本刀

 8月29日のブログについて、知人から注意を受けた。
 現代刀の買い取り価格20~30万円というのは刀屋が刀鍛冶から新作刀を買い取る時の値段であり、愛刀家から買い取る値段は数万円からせいぜい十数万円だそうである。
 新作刀が20~30万円では材料費にもならない。刀鍛冶が精魂込めて鍛え上げた作品がそんな値段で買い叩かれているとは、言葉も出ない。ここまで来ると金の問題ではなくプライドの問題だ。一切の妥協を排して年に一振りできるかどうかの作品を作っている刀鍛冶にとって、その値段は自己の存在を否定されたに等しい。多くの刀鍛冶が廃業するのは当然だし、杉田刀匠のように一振り一振り自らの生命を鍛ち込むように精魂込めて鍛刀している刀鍛冶が自決するのも理解できる。

 刀屋は刀匠の生命・精魂を蔑(なみ)し、足元を見て材料費以下で買い叩いているのである。完全に泥棒である。
 現代刀は新作刀なら200万円以上で売れるし、新作刀でなくても仕入れ値の何倍もの値段で売れる。
 こんなおいしい商売はない。
 最近やたら現代刀が出回るようになったのも頷ける。

 刀屋から現代刀を買う場合は、こうした事実を踏まえ、高くても20~30万円以内で買うべきである。特に刀剣初心者は出来が良く偽物の心配がない現代刀から入って行く人が多い。それは良いのだが、刀屋の売値は酷いボッタクリ価格なのを忘れてはならない。必ず値切らなければならない。初心の愛刀家は刀屋の言い値で買うから、刀屋は味を占め、とことん現代刀で儲けようとする。その皺寄せを受けるのは現代刀匠なのである。そのせいで自殺した刀匠もいるのだ。事実として刀鍛冶が精魂込めて作った刀が200万円以下では大赤字である。年に一振りできるかどうかの精鍛作なら2000万円は貰わねば割に合わない。200万円という値段は刀鍛冶が日本刀文化に報いるための奉仕価格なのである。大赤字でも日本刀文化に報いる意味があるからこそ200万円で売る事ができるのである。それ以下で売れば日本刀文化に泥を塗る事になってしまう。刀屋に精鍛作を20~30万円で盗み取られてしまい、日本刀文化に対する自責の念から自決した刀匠がいても不思議はない。

 特に居合刀は業者と居合道場と鍛冶屋・職人のカルテルだから絶対に買ってはならない。そこで売られているのは粗悪な材料を数回折り返しただけの刀身にオモチャの拵を付けた文字通りの玩具だ。それが60万円。玩具にしては高い。下取り制度もあって業者は客(道場生)に定期的な買い替えを勧める。客から中古を20万円で下取りし、そのまま40万円で再販。右から左へ流しただけで倍だ。業者は商売をしてどこが悪いと居直るだろうし、この御時勢に結構な商売じゃないかと羨ましく思う人もいるかもしれない。しかし連中は居合の道場生を洗脳して売り付けているのである。
 居合のような形式だけの運動をしていると脳の働きが単調になり被暗示性が高まる。しかも武道(これは大嘘、実際はカルトダンス)なので先生や先輩の言う事は絶対だ。先生や先輩が刀を買えと言えば買わなければならない。そこで「当道場で販売している刀は特別な刀匠が特別な材料(これも大嘘、実際は粗悪な洋鉄)で作っている特製品である。鉄をも断ち斬る斬鉄剣である。これを買いなさい。」と言われれば、一切の疑念も許されない。先生や先輩が買えと言った刀(もどき)を嬉々として買わなくてはならないのである。
 極めて悪質な洗脳商法である。
 勿論そんな物は日本刀ではない。だがそんな物を買う人がいるから、悪徳カルテル以外の刀剣業者が便乗して、本物の日本刀鍛冶の精鍛作を居合い刀以下の値段で取引するようになるのである。
 水は低きに流れると言っても、ここまで低きに流れる業界は他にない。泥棒と詐欺師の世界である。繰り返すが、刀剣業者ほど下劣な人種を私は知らない。
 居合い刀と日本刀は全く違う。居合い刀を日本刀と称して売っている業者がいたら完全に詐欺である。武道でないものを武道と詐称し、日本刀でないものを日本刀と偽って売る。どこから見ても詐欺だ。詐欺師からは絶対に買ってはいけない。






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