【羽ばたけ中部勢】畳発、会社員経由、藤島部屋。 藤佐藤、目指すは部屋関取第1号2019年4月3日 紙面から
大相撲の東三段目52枚目の藤佐藤(24)=岐阜県関市出身、藤島=が、春場所で4勝3敗と3場所連続の勝ち越しを決めた。相撲経験ほぼゼロで脱サラし、角界入りした異色の経歴の持ち主は「今年の目標は幕下定着」と、師匠の藤島親方(元大関武双山)が継承した部屋の関取第一号を目指し、着実に成長を続けている。 畳発で工場勤務を経て、現在は土俵-。会社員の安定した収入を捨て、完全燃焼する場を求めてきた藤佐藤が「人生を懸けて挑戦するラストチャンス。中途半端なことはしたくない」と、怖いもの知らずで攻め続け、平成最後の場所で4勝3敗と勝ち越した。 幼少期から柔道一筋だった。岐阜県関市出身だが、生まれは北隣の同県郡上市。自然豊かな地域で「鬼ごっこで1日5キロくらいは、軽く走り回ってました」。足腰の粘りを武器に、関市緑ケ丘中と岐阜第一高では、全国大会16強まで進んだ。 柔道の実績が評価され、道都大(現星槎道都大)に進んだが、周囲との温度差に悩んで半年で中退。故郷に戻って2年半近く、自動車部品工場で働いたが相手と対峙(たいじ)する刺激を忘れられずにいた。 そんなときに思い出したのが、郡上市西和良小6年で周囲の勧めで出場したわんぱく相撲だった。あれよあれよと県大会を勝ち抜き、両国国技館の土俵に上がった。1回戦負けだったが、頭と頭でぶつかる衝撃は体に刻まれた。「緊迫感は格別。角界で自分の限界を確かめたい」と21歳で、幼なじみが所属する藤島部屋の門をたたいた。 悩みは何より、無意識で出る柔道の動きという。相手を呼び込むように下がって投げを打つと、勝っても師匠からは叱られる。しかし、それもけがを心配するからこそ。元大関は「相撲経験がほとんどなかったから、まだまだこれから。しっかり稽古をして、体をつくれば面白い存在になる」と温かく見守る。 右手首の剥離骨折で昨年九州場所を全休し、序二段まで番付を落としたが、復帰して3場所連続で勝ち越し。突き押しが身上だった師匠仕込みの前への圧力と、柔道で磨いた足技がうまくかみ合ってきた。 「上から読んでも下から読んでも『ふじさとう』。親方に付けてもらったしこ名を、もっと有名にしたい。まずは幕下定着」。師匠への恩返しも胸に、関取までの距離を縮めていく。 (志村拓) ▼藤佐藤洸朔(ふじさとう・こうさく) 本名は佐藤洸朔。1995(平成7)年2月20日生まれ、岐阜県関市出身の24歳。182センチ、113キロ。2016年夏場所で初土俵。最高位は東三段目17枚目。得意は左四つ、寄り。
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