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(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)新元号の「令和」の典拠は『万葉集』巻五、梅花の歌32首併せて序からなのだそうです。
そこで今回は、その典拠となった歌を詠んでみたいと思います。
はじめに歌を紹介します。
『万葉集』巻五、梅花の歌32首併せて序
初春令月
気淑風和
梅披鏡前之粉
蘭薫珮後之香
<読み下し>
初春(はつはる)は 令(よ)き月(つき)にして
気(き)は淑(よ)くて 風(かぜ)和(なご)み
梅(うめ)披(ひら)く 鏡前(きょうぜん)の粉(こな)
蘭(らん)薫(かほ)る 珮後(はいご)の香(か)
<語釈>
令月・・・「令」は天命を授かる意があり、陰暦2月の異称で、何事をするにもよい月とされる。
気淑・・・「淑」は、しとやかとかおだやかという意味で、気がおだやか。
梅披・・・「披」は披露宴などにも用いられる漢字で、訓読みは「ひらく」
鏡前之粉・「粉」は鏡の前の粉とあるので、この場合女性のお化粧用の白粉(おしろい)のこと
珮後之香・「珮(おびだま)」は、女性が着物の帯や胸につける飾りの玉。
<現代語訳>
初春となる陰暦の2月は何ごとをするにも良い月です。
気はおだやかで、風も和(なご)んでいます。
梅は、女性たちが開いた鏡の前の白粉(おしろい)となって咲き
蘭も、帯玉の残(のこり)り香のように薫(かを)っています。
<解説>
この歌は、大伴旅人が太宰府の長官だった天平2年(730年)正月13日に、旅人の屋敷で行われた歌会で出詠された歌です。
歌の作者は、大伴旅人とも山上憶良ともいわれていますが、はっきりとした特定はされていません。
つまり、作者不明の歌ということになります。
ここでいうお正月というのは旧暦の正月ですから、いまでいうと2月の初め頃になります。
まだ寒い時期です。
その寒い時期に、この歌は「初春令月(しょしゅんれいげつ)にして」と歌いだしています。
春の始まりを迎える2月という表現も、これまた旧暦ですから、いまの暦ですと3月の中旬です。
ちょうど梅の花が開花する頃になります。
その2月のことを、歌は「令月(れいげつ)」と呼んでいます。
「令(れい)」は「りょう」とも読みますが、ひらたくいえば「令月」というのは「良い月」という意味になるのですが、ここでは意図して「良月」と書かずに「令月」と表現していますから、「令」に特別な思い入れがありそうです。
「令」という字は、神々の意思のもとに傅(かしづ)く姿の会意象形文字です。
ですからこの字には『神々の御意思として」という語感があります。
つまり2月(いまの3月)に花が開くのは、素晴らしい神々の御意思なのだ、というわけです。
そして「令月」というのは、古くから「何をするにも良い月」とされてきたときにあたります。
従って「初春令月」は、「何をするにもめでたい良い月に」といった意味になります。
続く「気淑風和」の「気淑」の「気」は、運気とか大気とかで、それが「淑」と書かれています。
「淑」という字は、しとやかとかおだやかという意味ですから、「気淑」は、気がおだやか、という意味になります。
「風和」は、そのまま「風(かぜ)、和(やわら)ぐ」で、それまで冷たい冬の木枯らしだった風が、暖かな心地よい柔らかな風に変わったことを示します。
従って「気淑風和」は、「気はおだやかで、風も和(なご)んでいる」といった意味になります。
「梅披鏡前之粉」にある「披」は、披露宴などにも用いられている漢字で、訓読みは「ひらく」です。
つまり「梅披」は、何かを梅がひらいているわけです。
そのひらいているものが「鏡前之粉」で、鏡の前の粉というのですから、これは女性が付けるお化粧の粉のことをいいます。
従って「梅披鏡前之粉」は、白梅が、まるで女性が鏡を開いて付ける白粉(おしろい)のように開く、つまり「梅が、女性たちが開いた鏡の前の白粉(おしろい)のように、咲きほこっている姿」をあらわします。
「蘭薫珮後之香」は、歌い出しの「蘭薫(らんかほ)る」は、わかりやすいとおもいます。
「珮」というのは、女性が帯などに付ける匂い玉のことで、乾燥させた花などを小さな袋に入れて、その香りを楽しむもので、「においぶくろ」などとも呼ばれているものです。
女性が動くと、そのやさしい香りが後にただよいますが、まるで蘭の花の香りが、美しい女性たちが通ったあとに薫るように、やさしく薫っている様子を描いています。
以上を要約しますと、
「初春となる陰暦の2月というのは、
何ごとをするにもまことに良い月ですなあ。
気はおだやかで、風も和(なご)んでいます。
梅の花が、まるで女性たちが開いた鏡の前の白粉(おしろい)となって咲きほこり
蘭も、女性たちの帯玉の残り香りのように薫(かを)っています。
まことにおめでたいことです。」
といった内容の歌ということになります。
ちなみにこの歌にある「梅」は白梅で、梅の季節は桜よりも少し早い時期になります。
「紅梅」であれば、春爛漫をイメージさせます。
「白梅」の場合、冒頭の写真のように、まだ雪が降る日も残る、そんな時期です。
まだ冬の寒さが残っている。
けれど、そうした中にあっても確実に春の到来を予見させているのが白梅です。
つまり、まだまだ冷たい寒い冬は残っているけれど、心機一転、新たな暖かさのある時代に向けて、みんなで和をもって進んでいこうという意思を象徴するのが、白梅です。
「令和」という元号は、この歌から「令(よし)」と「和(なごみ)」の二字をとった元号です。
冬の寒さは春となり、
おだやかな春の季節に爛漫と咲き誇る花と美しい乙女たち。
そんな春を愛(め)で、なごむ。
まさに春爛漫。
「令和」は、これからの日本の求める姿や方向を、「令」の字で御神意とする見事な元号だと思います。お読みいただき、ありがとうございました。

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今日も拝読させていただきました。シェアさせていただきます。
丁寧で分かり易い解説!
ありがとうございます。
町中インタビューで『涼しそう』は許せても、調べもしないで『馴染めない』と宣伝している方々には呆れてしまいます。
「令和の頃は最高だったね」と後世に伝えられる時代を築いていきましょう。