第十一話:タルトの力
ディアのスキルを調べ終わって、いよいよタルトの番だ。
ディアはすごいと思っていたがスキルも優秀なのが揃っていた。【私に付き従う騎士たち】で渡したスキルとの相性もいい。
そして……タルトは。
「かっこいいスキルです!」
「かっこいいっていうより、タルトらしいな」
「うん、なんかもうぴったりすぎて怖いぐらいだよね」
鑑定紙を三人で見る。
そこには【私に付き従う騎士たち】で与えたスキルを除くものが書かれてある。
・【従者の献身】
Aランク。
自らの魂が認めた主と契約を交わすことで発動可能になる。
契約は粘膜接触後に主従関係になったことを確認し、了承されることで行われる。魂が認めた相手でなければ失敗する。主の変更はできない。
能力発動中、自らと主の全能力強化。また、主の死亡時に自らの命と引き換えに蘇生・回復が可能
・【槍術】
Cランク。
槍装備時の身体能力、槍を使った攻撃の威力・速度・精度に上昇補正。
・【努力】
Dランク。
努力をする才能。努力を惜しまない性格、集中力・精神力が回復しやすい。
「【従者の献身】、これは異性ならいいが同性ならどうすればいいんだ……」
「男同士でやればいいんだよ」
「それはそうだが」
……これも知らない限り発動できないスキルだな。
なにせ、そもそも主と認める相手と肉体関係を持たないといけない。
そして、そういうことをやってすぐにわざわざ主従関係であることを確認するなんてことをする状況が考えられない。
「あの、ルーグ様、このスキル、すぐに使うべきです! だって、私もルーグ様も一緒に強くなれますから」
タルトが期待を込めた目で俺を見ている。
たしかに、条件が厳しい分、二人分の全能力強化という破格すぎる能力だ。
他のAランクと比べても頭が抜けて強力なのは使い捨てだからだろう。
主と定めた人物は変えられない。主が死ぬ、あるいはその主と別離すれば、その時点で完全に死にスキルとなる。
また常時強化だけでなく、発動中のみの強化でしかないという点もマイナス。
だからこそ、【私に付き従う騎士たち】と違ってAランク扱いなのだろう。
「タルト、一つ約束してくれ。全能力強化は積極的に使うべきだ」
発動時及び発動中の体力・魔力消費や、強化幅の検証は必要だが、使わない手はない。
しかし……。
「後半。自分の命と引き換えに俺を救う。その能力は使わないと約束してくれ」
きっと、スキル名から考えると後者こそメインのスキルなんだろう。
だが、それを俺は望まない。
「……申し訳ございません。約束なんてできないです。だって、そうなったら、絶対私は使っちゃいます。ルーグ様に嘘はつけないです」
タルトがうつむいて呟く。
「なら、契約はできない」
タルトはもうただの道具じゃない。家族を犠牲にすることを前提にしたスキルはいらない。
「ルーグ、それってちょっと変じゃない」
「変って何がだ?」
「タルトを犠牲にしたくないから、そのスキルを使わないってことだけど。それ使うときってルーグが死んだときだよね。死ぬつもりなの?」
「そんなつもりはない」
「なら、気にすることないよ。【従者の献身】があると強くなって死ににくくなるよね。死ぬ気がないのに、死んだあとのこと考えて死にやすくなるって変だよ」
めちゃくちゃを言っている。
だが、筋は通っている。
「ルーグ様!」
タルトのほうに目を向けると、決意を込めた目で見つめていた。それから、首の後に手を回し強引に唇をあわせてきた。大人のキスだ。
避けようと思えば避けられた。
でも、タルトの表情を見たら、そんな気が失せてしまった。
長いキスが終わる。
「私のご主人様になってください。それから、私を死なせないように、死なないでください。私は、こんなスキルなくても、ルーグ様が死んじゃったら、死んじゃいます」
タルトを死なせないように死なないでくれか。
……ずるいな。こんなことを言われたら逃げられないじゃないか。
「わかった。改めて頼む。俺の従者になってくれ」
その言葉を放った瞬間、俺とタルトの魂が熱い何かで結ばれた。
主従の絆。そういうものがしっかりと結ばれる。
魂でタルトを感じる。
「ルーグ様が流れこんでます。今なら、このスキルを使えるって感じます。【従者の献身】」
タルトがスキルを発動した。
それと同時にタルトをより強く感じるようになった。
身体能力、魔力、動体視力、反射神経、思考力、計算力、ありとあらゆる能力が向上するのを感じる。
「私、強くなってます。それに、とってもルーグ様が近くて、安心します。ずっと、こうしていたいです」
「そうだな、心地いいよ」
力だけじゃない。タルトの気持ちが伝わってくる。
……いや、これ、そんなレベルじゃない。タルトの考えていることがわかる。
『さっきのキス、大胆すぎたかな? ルーグ様にエッチな子って思われったらどうしよ。でもとっても気持ち良かった。またしたいです。キスしたせいでほてってる。後でルーグ様のお部屋へ行って……って、あれそれを聞いてるってルーグ様の思考が、うそ、えっ、えっ、あれ、あっ、今日の晩ごはんはお肉がいいんですね。かしこまりました。ってええええええええ』
どうやら能力同時はお互いの思考は筒抜けになるようだ。
なら、ついでにもう一つ実験をしてみよう。
『タルト、俺の思考が聞こえるなら右手を上げてくれ』
『タルト、俺の思考が聞こえるならもう一度キスをしてくれ』
2つの思考を並行して走らせる。
タルトが右手をあげる。
しかし、キスはしない。
なるほど、表層での思考は共有されてしまうが、深層での思考は聞こえないのか。
暗殺者は拷問や自白剤への対策で、表層と深層で思考や記憶を使い分ける。
たとえ、自白剤を使われても、掘り起こせるのは表層だけで深層は暴かれない。これは特殊な訓練でできる技術。
……これを使えば、聞かせたくない思考は聞かせないで済むようだ。
一方、タルトのほうは顔を真赤にして煙を吹いていた。
『ううう、恥ずかしいです。変なこと考えないようにしないと。エッチなことは特にだめって、エッチなことを考えないようにしてるって聞かれてる!? それも恥ずかしいです。エッチなことを考えないように考えることをやめて、ルーグ様の胸板……って、だめです。考えようとしないようにしたら余計に、また頭にあわわわわ』
この力はタルトにとっては危険なようだ。
俺からしたら面白いが。
それに、デメリットばかりじゃない。テレパシーを使えるといのは便利だ。
リアルタイムの通信は連携を取るときに圧倒的なアドバンテージ。
密談などに用いることもできる。
「ルーグ、さっきからにやにやしているよ」
「タルトがおかしくてな」
本当に可愛らしい。
「タルト、力の発動で疲労は感じるか」
「えっ、はっ、はい、全然感じません」
「そうか、なら、このまま実験させてくれ」
せっかく能力を発動したのだから、色々と試してみよう。
まずは効果範囲を調べた。
離れていくと、おおよそ二百メートル付近で繋がりが切れた。
再び近づいても自動ではつながらない。
もう一度、発動しようとしても使えなかった。
一分ごとに再使用を試すように言う。一度使うとしばらく使えないタイプのスキルのようだ。どれだけインターバールがあるかは知っておきたい。
「あの、ルーグ様、ごめんなさい。変なこといっぱい考えて」
「いいよ、可愛かったし。だがな、精神修行をもう少し頑張ろう。いつでも雑念を払えるようにな」
「はいっ、がんばります!」
戦いのときは、優れた集中力を発揮できるが、それをいつでもできないのは問題だ。
「残りのスキルは【槍術】と【努力】か。どちらも使いやすいスキルだ」
「前から、タルトの槍さばきはすごいって思ってたけど、スキルがあったんだね」
俺はCランクに汎用性重視、つまりはありとあらゆる武器を使い分けるという前提で【体術】を選んだが、武器を固定するならこういったスキルのほうが強い。
「はい。これからはもっと槍に自信を持てそうです! それに、努力ってスキルがあるなら、もっともっと頑張らないと。人より努力できるんですから!」
タルトはきっと、そんなスキルがなくても頑張りやだ。
「これからどうするか。【槍術】があるなら、銃の訓練はやめて、そっち一本に絞ったほうがいいかもしれない」
「そんなことないです。とっさに使えて便利です。懐に入られたときとか、こんな感じで!」
タルトがスカートを翻し、太もものホルスターにセットしてある拳銃を抜いて構える。
速く、流麗。神速のクイックドロウ。
努力のあとが伺える。
「その速さなら、十分な武器になるな」
「はい、槍使いを倒そうと、懐に入り込んできたところをばーんってします。あと、槍を組み立てるよりずっと速くて、いきなり戦闘になったときも便利なんです」
拳銃は射程が短いが、取り回しがいい。そういう芸当も可能だ。
「ねえ、ルーグ。槍だったらスキルが発動するんだよね。だったらさ、銃が撃てる槍を作ればいいんじゃない」
「それは槍なのか。……できないことはないな。よし、試すだけ試してみようか」
銃剣というのが、それに極めて近い。
ただ、それを使う場合は槍をメインに戦い、懐に入られれば銃を使うというものではなく、銃で遠距離戦を行い、距離を詰められたら槍という扱いになる。
「ぜひお願いします!」
「あまり期待しないでくれ。今のように折りたたみにするなんて無理だし、構造上もろくなる。槍としての性能はさほど高くない」
「それでも、遠距離攻撃ができるのは嬉しいです」
タルトの場合、風という攻撃に向かない属性で、本人にも魔法の才能はあまりないので遠距離攻撃はできない。
だから、遠距離攻撃ができる俺たちが羨ましかったのだろう。
「これで、二人のスキルは把握できたな」
「ルーグのがまだだよ! 私達のスキルを教えたんだから教えてよ」
「あっ、私も気になります!」
俺は微笑み、俺のスキルを説明していく。
【超回復】【式を織るもの】【成長限界突破】【体術】、勇者にもらったスキル。
「めちゃくちゃだよ! なんで、全ランクのスキルもってるんだよ。そんなの聞いたことがないよ」
「運が良かったんだ」
「あれ、Dランクのスキルがないですよ。ルーグ様に昔、絶対にDランクは誰もがもっているって教えてもらいました」
「それは秘密だ。……これは切り札で一回こっきりの不意打ち用。だから、絶対に誰にも言わないと決めている」
それは、あのスキルを取得したときから決めていたこと。
知られた瞬間、無価値になる。
だが、知られない限りは切り札足り得る。たとえタルトとディア相手だろうと教えない。
「うわぁ、私たちは全部教えたのに秘密なんて、ずるだずるだ。すっごく気になっちゃったよ」
「……私もです。でも、ルーグ様が秘密にするって決めたなら」
二人は不平があるが、言わないものは言わない。
「さて、そろそろ屋敷に戻ろうか。マーハが海外の美味しくて面白いお菓子を送ってくれているんだ」
「ああ、逃げる気だ」
「待ってください、ルーグ様!」
二人のスキルは把握した。
スキルを知り、有効活用したことでより俺たちは強くなる。
あとは、【可能性の卵】をかえすだけだ。
そちらの調査も進めている。近いうちにそちらの努力をするだろう。
でも、今日はうまい茶とお菓子でまったりしよう。
休息も大事だ。
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