校正前のオリジナルをパソコンのトラブルで消失してしまい今回のみ完成原稿です。 違いは初心者向けの導入雑談などが無くなり、メーカー他さんへの配慮が入ってます。 尚、HELPに書いている通り「磯投げ情報誌」の号が過ぎる日(月25日)のアップです。 本との違いを堪能下さい。 File番号は連載前の掲載「キャッチアンドリリース」があるため1つ多いです。 日頃つり人達を悩ませるエサ取りたちを釣って自宅の水槽に入れ、 エサの食べ方を観察してみたのが前回。 エサを噛み砕いて吐き出してから、その破片を飲み込む様子を観察し、 アタリが出にくかったり合わせてもなかなか針がかりしない理由はこれかと合点がいきました。 あれから1ヶ月、魚たちは飼い主の私の姿が目に入ると、水面まで上がってエサをねだります。 飼い主の仕草やエサやりの動作などを学習して、というよりもほとんど条件反射の世界です。 ここまで慣れてしまうと、実験対象ではなくもうペット。 可愛くなってしまい、食べるなどとんでもありません。 そんなエサ取りも含め、10数年前から行っている水槽飼育実験で分かったことや 感じたことを記してみます。 ▲作者は水槽・釣りエサのメーカーさんの要請でアドバイスをしていた経験があります。 ←既出 満腹になるのは約15分 魚はエサが豊富な場所ではどのような食べ方をするのか。 一気食いするのか、それとも人間のようにユックリ時間をかけるのか、 ライオンのように食い溜めできるのか、ネズミのように常に食べ続けるのか。 興味の湧いた私はエサをドバッと与えてみました。 1日~数日エサを与えなかったケースで何回かやってみたところ、 大型魚も小物も食わなくなるまで(腹いっぱいになるまで)15分ほどでした。 次に食い始めるのは4~6時間後で、これは成魚より幼魚のほうが早いサイクルでした。 15分というのは予想よりもかなり早く、このことからエサが豊富なポイントでは、 時合いはあっという間に過ぎ去ってしまうと考えられます。 また、エサ取りを別の場所に集めようとコマセを大量に撒いている人は、 往々にして本命魚までも腹いっぱいにさせているのではないでしょうか。 よくコマセを撒いている人のそばにこっそり仕掛けを入れるのも一つの手なんて 言う人もいますが、実際は恩恵があるどころか、逆にいいことが無い場合のほうが 多いかもしれませんね。 ちなみに私は長期出張が多いのですが、その間エサをどうしていると思いますか? 実はまったくやっていません。魚というのは餌を食わなくても軽く1ヶ月は平気です。 以前詳しく解説しましたが、魚には人間のような空腹感はないようで、 上生体という器官、側線、耳石などの感覚器官で なんらかのきっかけをキャッチして食い始め、その次に臭いをたどって 具体的行動に移します。 その「なんらかのきっかけ」を人工的に作り出せれば大ヒット間違いなし!!!なのですが、 それが簡単に分かれば苦労しません。 水質変化に強い魚とは 釣り人に馴染みのある魚を水質変化に強い順にあげていくと、 ボラ>クロダイ>スズキ>ヒラアジ(メッキ)>ハゼ>メジナ>カワハギ>ベラ>フグ>イシダイ といった順番になります。 ただし、魚というのは個体差が大変大きく、種としての傾向と捉えてください。 一般に汽水域まで入ってくる魚はボラやクロダイ、スズキなどを筆頭に水質変化に強く、 メッキもなかなか強いです。 逆に言えば、そうでないと浸透圧に耐えられないとも考えられます。 ただし何事にも例外はあり、汽水域でメッキ(主にギンガメアジ)の外道で釣れた イケカツオを飼育したら、水質変化には弱いようですぐ死んでしまいました。 海は川や湖に比べて水温の変動幅が小さいため、海水魚は淡水魚よりも水温変化に弱く、 水槽内で急に3℃以上水温を上下動させると、ほとんどの魚が動きがおかしくなります。 (回復には6時間ほどかかる)。 よって、急な水温変化をもたらしがちな大雨や季節風などには要注意。 少なくとも魚の活性が通常時に戻るのを待って竿を出すのがベターです。 以上の話をまとめてみると ・エサが豊富な場所では魚が満腹になるまで15分足らずで時合いはすぐに過ぎてしまう。 ・次に食い始めるのは約6時間後。 ・急激な水温変化で活性が落ちた場合も食いが戻るのには約6時間必要。 ということです。 ひとしきり釣れて食いが落ちたようなとき、場所を移動するかどうかの参考になるかと思います。 夜がよく釣れるワケ 一般的に、夜は日中よりも釣りやすくなるといわれます。 特に、釣り人が多い堤防や地磯などでは顕著なようです。 あるとき釣り場で隣り合った方に「夜は大型クロダイなどの警戒心が弱まって 岸近くまで来るっていいますが、どうしてですか?」と質問されました。 その人は「暗くなるから警戒心が解けるのは当然」という考え方に違和感を持っていたそうで、 敵がいっぱいの海の中では昼だろうと夜だろうが常に警戒は怠れないはずというのです。 私はなるほどと思いました。 そう、元々夜は視覚をほとんど使わないですし、警戒心が解けるわけではないのです。 海では、昼と夜とで生物の上下運動があり、簡単に言えば、昼は深く、夜は浅くというものです。 日中、水面下で光合成を頑張っていたプランクトンは、日が落ちると仕事を終えて沈んでいき、 それを食べるために動物性プランクトンが上がってきます。 その動物性プランクトンを食べるために小魚も上昇。 さらにそれを追って大型魚も上ずり、結果として岸辺や浅瀬によってきます。 このようにして夜は独特の食物連鎖が展開されるわけで、 警戒心が薄れるからというよりもエサを食うために岸近くによるというのが正解でしょう。 カケアガリの秘密 クロダイやスズキなどの大型魚が夜に岸辺まで寄ってくるのは、 警戒心が薄れるからというよりも食物連鎖の賜物というわけですが、 釣り人にとっては魚が寄ってくれればどちらでもいいというのが正直なところ(実は私も)。 ところが、その科学チックな説明のせいでさらに質問を受けてしまいました。 「カケアガリが好ポイントってよくいうけど、なぜなんでしょうか」 これも結構鋭い問いです。 そう聞かれると「エサが多いから」となんとなく答える人が多いのではないでしょうか。 それも間違いではありませんが、それだけでは不十分。 同じようなカケアガリでも、魚がいないことが多々あります。 ←カケアガリとヨブ 実は魚は、流れに乗ってフワッと浮いたエサを好んで口にする習性があります。 そのエサをフワッと浮かせる流れを「食い波」といい、カケアガリやヨブでは 食い波が発生しやすいため魚が寄って好ポイントになるわけです。 ちなみに群れからはぐれた小魚の動きも、食い波でフワッと舞ったエサと同じだそうで、 回遊魚も底生魚も大型魚も小型魚も基本的に好みは一緒ということです。 ←一般的好ポイント あまり流れがないと思われがちな海ですが、海面下数mに躍層(やくそう)という分離エリアがあり、 表面と海中では随分と異なる場合も多々あります。 潮の向きや強さ、釣り場やポイントの地形などから今どこに食い波が発生し、 魚はどのようにエサを待っているかをイメージすることが釣果アップに繋がると思います。 大物がいるのはこんな所 魚は食い波によってフワッと舞うエサや捕食するためカケアガリやヨブに身を寄せるわけで、 一般に魚が潜む位置は食い波を発生させる出っ張りの潮下側と考えてよいでしょう。 これがカケアガリやヨブにおける厳密な好ポイントです。 しかし、より大型の魚になると少し異なり、大きな魚体を安定させるために↓図のように 姿勢が安定しやすい出っ張りの前に定位することが多くなります。 ←大物は水流の影響大 水の抵抗は、糸のわずかな号数の差ですら仕掛けのなじみ方が違ってくるほど大きいもの。 魚にとってはエサを食うことと同じぐらい姿勢を保つことも重要なのです。 しかし理論と実際は異なるかもしれません。 水族館などの大型水槽で観測できなくもないですが、あくまで机上の理論。 しかし目に見えるサンプルもあります。 河川に遡上してきたサケ類がそれで、激流の中、大きな岩の前に見事に定位しています。 イメージ的には大岩の後ろにいそうですが、流れに向かって前にいるんですよね。 よって、投げ釣りでクロダイやマダイなどの大型魚を狙う場合は、カケアガリやヨブの中ではなく、 仕掛けを引いて重みが外れた所で待つのも効果ありといえるでしょう。 そんなわずか数10cmか数mの違いで?と思われる方もいるかもしれませんが、 そのほんの少しの違いで釣果は大きく変わってくるものです。 以前、名古屋港の金城埠頭で、テンビン仕掛けでシロギスを狙ったときのこと。 夜釣りということもあり、アナゴが掛かりまくって閉口したことがありました。 最初は嬉しくても連チャンで食ってくるアナゴに次第にウンザリ。 そこで、ナス型オモリに換えて付けエサを底から15~20cmほど浮かせてみたところ、 アナゴはピタッと釣れなくなりました。  カケアガリやユブとはちょっと違いますが、ほんの少しの違いで釣れたり 釣れなかったりする点では同じこと。 魚って、釣りって奥が深いんだなあ、なんて感心しながら、 若い頃の私はこの趣味に傾倒していったのでした。 <今回の一手> 魚にとっても釣り人にとっても辛い冬。 ここは一番、寒さを逆手にとって魚を集めてしまおうという作戦を考えました。 名づけて「ヒーター作戦」。読者の皆さんの???という顔が目に浮かぶようです。 もちろん、市販のヒーターごときで大海原の水温を上げれるわけもなく、 七輪などで石を赤くなるまで熱して投入しても一瞬で海水に熱を奪われるのがオチ。 複数の発電機と10万本のヒーターを集めて稼動させれば可能かもしれませんが、 まぁ夢物語です。 しかし、もし簡単に出来る方法を見つければそこはあなただけのパラダイスになるはず。 水中で熱を発するのはもちろん、一瞬で冷えず時間が経っても熱を発しつづけるという アイテムはないものだろうか……。 あります。それはズバリ、使い捨ての携帯カイロ。 水の流れがなるべくないエリアで、濡れないようビニール袋に 携帯カイロを大量に詰めて沈めてみましょう。 そんなことで水温が上がるわけないって? いえいえ、それでよいのです。相手は「泳ぐ感覚器官」という称号を持つ魚類ゆえ、 大切なのは熱を発し続けるアイテムが沈んでいること。 極端な話、0.001℃の上昇だっていいのです。 0.001℃の上昇じゃ話にならないと思う人はまだまだ青いですな。 温度のあるものが発する線、すなわち赤外線が重要なのです。 連載の第2回(誌上では1回)で詳しくお話したように、魚は上生体によって 赤外線を敏感にキャッチし、多くの場合、魚はそれを好ましい信号と捉えて寄ってきます。 もしこの方法で爆釣すれば、これ以上安くて簡単な必釣法はないでしょう。 笑いのネタとして頭に浮かんだ携帯カイロ利用法ですが、魚の生態に合致していて 結構イケるような気がしてきました。チャレンジャーはぜひ試してみてください。 | 戻る← 表紙 ⇒その9(浮き袋は警戒心と関係が) |