<前白:記事について>

底へ向かって突っ込む魚、走りまくる魚、釣り師の中には掛けて「ああコレはクロダイ」と推測したり。
当たらない場合も時々あるけど、果たして魚種による締め込み差など”暴れ方特徴”はあるのだろうか。
そんな部分を行動学の最終に持ってきました。

ビデオに出る「魚種を前宣言するプロ釣り師」のように当ててみたいなぁ…という読者さまに贈る、
抵抗の仕方”基本”知識。しかし、正直、水圧以外に大きな締め込みを起こさせる理由が見つかりません。
とすると、その釣り場でのテトラ位置などの学習から来ているのでしょうか。考察してみました。

最終回:ハリに掛かってからの行動

今回で最終回となる「サカナの行動学」。File.20ということは20ヶ月の連載でした。
釣りインストラクターの資格も持っていない私が、長い連載ロードを走るなんて感謝でした。
やっぱり資格をとって記事連載をすべきだろうかと思ったりして調べるも、
資格試験が上手い具合に自分のスケジュールと合わない悲しさ。

釣りインストラクターというのは社団法人全日本釣り団体協議会の公認資格だそうで、
年に1回、どこかの大都市で会場を用意されて講義や試験を実施されています。
私の住むエリアは田舎で会場が用意されることもなく、なかなか遠いです。
なんだか名簿に記載され、釣りの啓発行事があれば呼ばれたり、雑誌執筆も依頼されるみたい。
詳しくは実際に資格を持つ人に聞けばいいのでしょうが、何せなかなか出会えません。

そんなことを思い出として懐かしみながら、今回の最終回の内容を考えます。
前回の終了時には「最先端の魚類学」とテーマを決めていました。
しかし、今までの専門をメインに難解な話をするのもいいのですが、
ここで未だ書いてなかったことはないか、最後ぐらい面白い話で終わろうではないかと考え直し、
頭をめぐらせました。お世話になった皆様に、ありがとう!……も込めて。

そして、理系特有の脳内会議も済まし、「これを書いてなかった」と導き出したのがコレ、
「ハリに掛かった後の魚の行動を科学する」です。
今までどうして気付かなかったのだろうか。面白く興味深い内容が構築できるではないか。
こう気がついた時点で、有終の美を飾るに相応しい内容が頭に浮かび始めました。興奮です。

=読者投稿のものを選抜。in北海道

写真Byたけだ氏。ちょっとだけ幸せな感じを御裾分け♪

ハリに掛かってからの魚の行動

よく釣りDVDで技巧派の釣り師が叫びます「ターゲットを捉えた、間違いなく対象魚だ」と。
水面近くまで魚が来なくても、ヒキ方やアタリ具合で魚を特定できる不思議さがあります。

上がってきたら別の魚で「えへへ」というプロ級釣り師のバツの悪そうな顔は可愛いですが、
普通の釣り人なら馴染みの光景、更には「デカイぞ!」と叫んで小さかったりもしょっ中ですよね。
一般的に、区別できるのは深場に突っ込んでいく傾向の魚、沖へ走る傾向の魚ぐらいでしょうか。
同じような大きさの魚だと区別がハッキリと出来ません。

引き具合で分かってしまうのは、見事な職人技として尊敬の眼差しを受けますが、
どうして判別できるのは、一つだけど大きな理由がイメージできます。

貴方は竿などの道具に名前をつけているでしょうか?例えば私の愛竿は”サッチャン3号”です。
このサッチャン、最初はサツキマスから採った名でしたが、今ではコザクラインコの名前の意です。
名前を付けてない人は、未だまだ青いですな。蒙古班が消えてないほどのレベルですぜ。

で、イキナリ筆者ご乱心かと、なんのコッチャと思わないで下さい。つまり関係してきますから。
そうです、名前を付けて愛着を持って使いこなす。そうしてこそ、少しの変化でも分かるようになり、
「おおっと、多分クロダイだな。」と水面に上がってくる前に宣言できるのです。
一つの道具を長く使いこなし慣れてこそ、初めてアタリやヒキでコレだと言えるのでしょう。
竿を変えても分かるようになるには更なる訓練・修行を積まねばならないことは容易に想像できます。

しかし!同じ種類とて、太ったものや痩せたもの、食性や普段の遊泳場所による尾鰭の差があり、
学習によってテトラや磯根に潜ろうとするもの、沖へ突っ走ろうとする個体も様々でしょう。
3段引きで有名なイシダイなんかは、3段引きをしないものも多い。それでも当てられるのでしょうかね?
この点について、誰しも一回は考えた、感じた経験がおありだと思う。

実際、物理学的には、大きさと重量(=筋肉量)が似ていれば魚種は関係ありません。
水中では浮き袋の作用で水圧と吊り合ってるだけの魚は、動いてこそ慣性の法則で重量変化を見せ、
泳いでこそ抵抗力を釣り人へ感じさせます。

圧力変化で移動は上下1m内に収まる時が多い超大物

●上下が苦手=無気管ウキ袋のせい。
1m(一気圧)幅をメインに考えておこう。

●小魚は除外して考えます。
日本記録魚を各自想定して
イメージしてください。

水と吊り合ってるので、魚の重量は0。
動いて初めて慣性の法則が発生。
体重による重量が発生していく。

●慣性の法則とは?
動き出した物体がその状態を
維持しようとする作用。

止める為にはエネルギーが必要。
それが竿の弾性・人の腕のパワー。

水面まではスウっと上がってきても、大型であれば水面を割ろうとした瞬間に凄い重量感が伝わってきます。
その差でガクゼンとした方もいらっしゃることでしょう。
竿がぐにゃっと曲がっていても、魚は弱って腹を見せ、重量ばかりを感じるのが、お約束の光景です。
この時は、水の浮力のおかげで、軽く上がってきたんだねと有難く思わなきゃいけません。

で、どうしてこんな基本をスケッチまで書いて強調したかと言いますと、
1年前、隣で釣ってた人から質問を受けたからです。

フラリと防波堤に入った私。周りには釣り人が一杯です。家族連れを中心に時々ベテラン風の釣り人が交じる。
軽装でイスに座り竿を出す、ポイントを探り移動するのでもなく、決して上手そうに見えない私(と思う)。
しかし、釣れていない周囲をよそに、クロダイを隣の人に上げるほど釣り上げていました。
そうです、秘儀「サツキマス9m竿」でのミャク(ふかせ)釣り。釣り人の探り竿が届く範囲を超えた場所、
そこに餌を送り込むので避難していた黒鯛がバンバンかかります。それでお隣さんへ要ります?と。

私の武勇伝は、延々と語りたいのは山々ですが、この辺で。そんな事があると必ず会話がヒートアップ。
隣の釣り人は、クロダイの重量でグニャっと曲がった竿を見て「ヒキの強さは重量から来るのか」や、
「どうして潮の流れの上に向かって竿を寝かすのか」などを質問してきました。

これは受け答えすると話が長くなりそうだ……。嫌な予感がする私でした。

竿を寝かすのは沖へ走らせないため

特に強い流れのある磯では
竿を寝かせるようにする。

意外とスンナリと取り込める。
流れが強ければ強いほどOK。
その分、糸を細くして対応。

但し、注意点があります。
下へ続きます。

●渓流では普通にやりますよね。

ハリに掛かった後に起こす基本的な魚の行動ですが、流れのあるところと無いところで大きく分かれます。
時間帯によって潮流が発生するかしないか、それを把握するだけで大きな魚が掛かったら対応を変化、
止水時は何でも太い糸でグイグイやればいいのですが、流れがあると糸は細くしますから慎重に。
水抵抗で不自然な状態=餌を引きずった仕掛けを大物は見抜いてるようなので、細糸有利の理屈です。

問題なのが、流れのあるときだけ特徴的な変化が起きます。竿を立てれば沖へ走る傾向が高いです。
今までは底へ突っ込むばかりのクロダイやメジナでも沖へ走るケースが多いです。
沖へ走られると竿が引っ張られラインがプッツンする確率が高いので、竿を寝かすのが有利です。

静岡県浜名湖の今切口。大潮の時は海水が出入りする巨大な川となるエリアです。
地元常連の釣り方も非常に特殊。それは流れを川と見立てて釣っているからですが、
私が初めてチャレンジした時は30センチ前後のメジナやタカノハダイしか釣れませんでした。
大物を掛けてもプチンと切られるし悩みましたが、渓流との共通点を思い出すのに2日と要りませんでした。
釣り人が多かったので竿を寝かす”いなし”が最初から出来なかったのも理由の一つですけどね。

竿を立てると沖へ走られることが多い

流れがある磯では要注意です。

竿を立てると、
力学的にも、
魚の癖でも同様に沖へ走る事。

一瞬竿を立てて戻すを
弱るまで繰り返しますが、
立てる時間だけは短めに。

小魚はスルーでサッサとあげる。

大物に沖へ走られ始めたら、相当な達人でも止めるのは難しいでしょう。竿の弾性が生かせれません。
糸が太く頑丈な竿にトルクのあるリールを装備し、ハリがしっかりとアゴに食い込んでいなければ、
大体がバラしてしまう結果となります。そんな千歳一隅の時を逃してしまうのは大変勿体無い!
ゆえに、常に潮の流れや動き具合をチェックしておくといざという時に差が出ます。

そうそう、小物の場合はご存知のように、潮流を見極めたり竿を寝かすなどの”いなし”テクは不要、
根掛りだったら竿が逝っちゃうよ級のアワセを「オラァァア!!!」と食らわしても大丈夫、
ピチピチと空を飛んで来るだけですからね。その後、「次は親を連れておいで」キランと白い歯でリリース。

ところがどっこい、超大物が掛かった場合、クロダイでもメジナでもイシダイでも、根魚は若干除きますが、
特にヒキが強い魚たちに言えるのが、最初はテンションをかけないこと。
竿の弾性で徐々に上がってくるまで、腕を上げて引き上げないことがゲットできるポイントと考えています。
私個人の主張というわけではなく、どういう意味かと言いますと、理屈がシッカリあります(勿体ぶり)。

テンションをかけずに、やり取りスタートの理屈

水圧変化には即反応する魚、
しかも最大馬力で反発します。
魚種による大きな差は
あまり見当たりません。

竿を立てると
(流れの強い場合のみ)
沖へ走られます。
魚種の差はあまり…なし。

流れの強い時にかぎって、
大物が食いつくのは
経験からでも多くの方が
あると思います。

テンションをかけずに
少し弱るのを待ち
潮流れ方面の
どちらかに竿を寝かす。
効率よく弱らせる方法です。

魚種による差がないので、
プロ釣り人が魚名を当てるのは
かなり凄いことだったりします。
(注:ハッタリ除いて)

アタリがあり竿を立てて合わせた際、大物がヒットしていた場合、往々にして動かずに首を振ります。
竿を上げようとしても、その状態が維持され、小魚が空を飛んでいたのに慣れていれば尚更、
異質の感覚に包まれます。その瞬間に「これはデカイぞ!!!」と叫ぶ我々。
この間、時間にしてなんと0.5秒ほど(半分冗談)。それは正にスローモーションのごとく感動的です。

魚は泳ぐ全身感覚器官ですし、特に嗅覚は警察犬とタメを張るほどの高性能。
そういう過去Fileで書きまくった条件の中で、もっとも関連すると思われるのは水圧のキャッチ。
深海の話で語ったように、この世界は圧力に支配されていると言っても過言ではございません。
水深1メーターで1気圧変わるというお約束は、この敏感な魚にとっては非常に大きなもの。

水槽で魚を飼育して、水換えで水面が低くなったら空かさず反応する魚たちは容易に観察できます。
水面が低くなった程度、家庭の水槽での話ですら反応するのですから、
釣り竿で数~数十メーターの移動を強いられたらどういう反応をするか、想像できますでしょうか。

最初、餌を食ってから「変なものを食っちゃったな」という感じで違和感を吐き出そうとする魚だったが、
次に水面に向かって力が掛かってきて、これは堪らないと最大の力で抵抗し潜ろうとする魚が普通。
人間として想像しやすい光景ですよね。上昇には圧力差もあって非常に抵抗感が起きます。

その理屈が理解できたという条件で、「ウラァァア!!!」と掛けてから強引に上げる人の場合は最大の抵抗、
細糸を使ってる人なら、その最初で最大のパワーを出されてしまったらタマリマセン。
ゆえに、「ウラァ!」レベルを下げ、最初の変なもの食っちゃった段階でしばらく首フリさせておきます。
意外と効果があって、弱る率も高いです。繊細な仕掛けを好む方は必須です。

しかしながら、どんな方法にも欠点があって、私の経験から拾ってみます。
テトラ帯のエリアでは穴に潜る魚の学習があり、首フリをさせている間に即行で入られます。
竿を立てていたら、自分の釣り座のテトラへも向かって来てビックリしたことも(サクラマスかよ!)。
防いでいる間もなく糸切り確実ですから、テトラでは充分にご注意ください。

磯では竿の5倍ほどラインが出ていたらリールを巻くのが先です。いわゆる普通のサバキです。
2~3倍の糸エリアまでなら、ジックリと頭を振らせてやってください。竿の弾力を有効に生かす為に。

アンモニア&亜硝酸系の運動を阻害する物質効果がジンワリと効き、竿の弾力で自然と浮くのも早い。
特に日本記録級の超大型を掛けた場合、これが出来れば、後は普通のやり取りでOK+希望的観測。
これらは理屈は簡単ですが、後は胸のドキドキ、緊張、興奮と…どうやって向き合うか、
そうです!頭首フリの間は同時に平常心にする為の時間稼ぎとも言えます。

実際、このようにテンションを最初はかけない事と教えられた釣り人さんは多いと思います。
先輩の経験から理屈を省いて教えられても、的を得ている経験の場合は特に、
後に科学的裏づけが出来るものですから、今回の解説で心底納得くださればと思う。

魚類学はここまで進んでいる

実名を出すのはヤバイが大企業・釣具メーカーなど裏で苦労する人たちが話したこと。
漁業と釣りで減る魚、美味しいタンパク源を枯渇させないようにするために存在する学問へ。
その為には行動(群れ)を解明するのが第一歩であり、全てであります。
魚類学はどこまで進んでいるのだろう、あまりにも広い世界です。だって生物全体に関わりますからね。

ということで、やり始めたら膨大になり始めた「魚類学の進歩」の話は、
今月の一手のように最先端科学で分かってきたこと、
他の科学を応用して根拠が証明されたものなどを徐々に紹介していきたいと思います。

特に男女の好み差をメーカーさんなどがどうすればいいのか悩んでいたり、
家族ターゲットにせざるを得ないという”本音”をもらした話などを紹介するのは、
興味津々じゃないでしょうか(多分)。

今月の一手:女性が釣りを拒絶する話

男性が圧倒的な趣味としている釣り。女性人口は何故か少ないです。
原始時代から現代まで釣りが発明されてから普遍のお約束でしたが、どうしてでしょう。
通常の説明は、男性は狩猟を担当し、女性はキノコ狩りや潮干狩りで植物&貝類を採集するという、
役割分担から、その端を発していると考古学的にも”事実”として説明されています。

思えば実際、女性は潮干狩りやキノコ狩りを好きな人が多い。そのついでに温泉へ。
男性はといえば、移動する物体や動物に著しい興味を持っていますよね。鉄道オタしかり。
最近は女性が強くなったといわれていても、やはり未だです。

色々な資料を繰ってみますと、男女差の釣り趣味説は大きく二つに分かれると思われます。

人権団体系の認識とする科学的根拠は、目新しい話ではなく右利き文化(=男性文化)ということで、
支配者層が社会的な生活様式から設定して男女差を作り上げたとする説。科学的というより主張系です。
ゆえに根本的に男女差は無く、努力次第で女性も男性の趣味とする世界へ入り込むというもの。
経済界(特に釣り業界)には非常に美味しい話です。上手くやれば女性の釣り人口が男性を超えるかも。
男女平等を謳っているのもこちらのパターンです。

生物学や医学では、男性は外向・攻撃的であるのに、女性は内向的・温和的としてデータ化してます。
肉体的真理上、この差は無視できませんので、社会が作り上げたとする設定にはツライものがあります。
そうすると、女性釣り人口が増えていかないので、釣り業界的にはコッチの説は「避けたい」科学。

さて、人間には思春期というものがあります。何だか早まってるらしいのですが、これに注目しますと、
思春期前は家族で釣りに行ったり楽しめるのですが、15歳前後を境に女の子は釣りを避けて行きます。
正確には「避ける傾向がある」なのですが、まぁ、簡単にして説明してますのでご容赦ください。
こんな男女差を表す事すら誰もが過去の経験でイメージできると思います。よくある出来事です。
ところが、拒絶していたのが中~高齢になると、女性ですら釣りを許容していきます。不思議。

▲「私は若くて可愛いけどさ、釣り好きだわ!!!」とかいうクレームが殺到する可能性アリ。

その原因は、医学系データベースを漁れば女性ホルモンの分泌で説明されています。
どうやら女性ホルモンは移動する物体(動物)殺傷を生理的に嫌悪するらしい刺激を与えるみたい。
殺傷への拒絶反応は、当然の事ながら釣りをも含みます。悲しい(しかし現代社会では…複雑だ)。

その根本原因である女性ホルモン、それは卵胞ホルモン(エストロゲン=E)でした。
貴方は、医学・生物学の提唱している説、右利き文化で男女特製が出てる説のどちらを選びますか?
男女の釣り趣味の性別理屈。医学・生物学と人類学の融合・せめぎ合い話でした。

次回より新コーナーにて連載スタートです!!!「魚にまつわる科学な話」シリーズ。
最初はクジラの年齢の計り方☆(冗談です)…では、皆様、乞うご期待です。



戻る     表紙     次へ海と河川湖沼の行き来に必須の塩類細胞の働き