成熟、倍数体の行動差~バイオの話。あの魚たちは本当は…で最新魚類学・技術の謎として説明。
釣りにどういう風に役立てられているか。3倍体利用などは、養殖の放流にも影響している。クロダイとか。
疾病は底でジッとしたり餌食いを止めるので、魚影が濃い場所でも釣れないのは疑ってかかると好い時が。

成熟、倍数体の行動、そして病気についても(~バイオの話)

さぁ、最先端への旅へ参りましょう!!!

知識ステップ1:釣りに役立つ魚類学って

サカナ君のおかげなのか魚の名前や生態を図鑑などで読んで幅広い知識を得ている人が増えてきました。
以前、千葉県立科学博物館の理学博士、朝倉さんからサカナ君が来るイベントにお誘いを受けた際、
私はイベントの展示についてチェックし、最先端のアレやコレやを考えさせられました。
今回の記事は、その時のメモを掘り起こし、釣りや魚類の行動にあてはめて考えたことを紹介してみたく思います。

魚種の名前・生態を覚える人は本当に多いです。ビックリするほど多くの人が知ってます。
下手すれば私より知ってるのでは、と思う事もしばしば。これは正直、感心することですが、
一方で、解剖学などに一歩入ると、多くの方が興味を失い、上生体やウェーバー器官すら知らないです。

このギャップ、どうやら魚類学の研究者人口が減っていることもあり、悪い面が出てくるかもしれない。
それは釣り業界で言うと、釣具の発展が遅くなってしまう、業界の将来に関わるのじゃないか?
思い起こせば、イギリスのアイザック・ウォルトンが釣りのバイブルであった「コンプリート・アングラー」を
出版したのは1653年であり、今原書が出ればサザビーズ(オークションハウス)で1億円行くかもしれず、
彼は詩人であったものの、博物学者に魚類の生態学、海洋学などの学術協力を仰ぎ書籍化、
王侯貴族などと過ごす新しい交流スポーツとしてフィッシングを紹介していた。日本名は「釣魚大全」だ。

↓前回とは別写真

=昔の釣り本タイトル例。 =例2.ノベ竿かついで磯に歩いていく!!!

古くはカイコの繭(まゆ)から作る絹糸、テグスは繭ではなく幼虫の絹糸腺:クスサンから作り始め、
この切れやすいが透明な糸をキッカケに大きく釣りは変わり、更に遠い場所を狙うための道具である、
世界を驚愕させ完成されたスピニングリール、これは、未だに同じ仕様のままですし、
アユの鼻カンはスルっとはめれるように工夫した人が大金持ちになって、それっきり同じ。

つまり大きな発展をした前世紀の時点から進み具合は急制動し、目立った変化はルアーが海に進出した事、
アオリイカまで対象が広がったぐらいじゃないでしょうか。
他にもありますが、魚類学が細分化されすぎて科学信仰化、発展途上には多く見えるポイント、
工夫する”輪郭”が見え難いのではないでしょうか。知ってそうで知らないとかね、では話を進めましょう。

知識ステップ2:魚の行動を変えたウェーバー器官と上生体、ふたたび

過去Fileで軽く触れましたが、ウェーバー器官という振動を増幅させる器官を持つ魚たちがいます。
微細な餌の動き(=振動)をキャッチし、真夜中の暗い中、小さなイシゴカイの動きにも反応する、
もう、ほとんど超能力と言って好いほどの凄さを誇っています。

閉鎖水域の魚たちが発展進化させたと考えられていますが、海水魚にも持っているのがいるし、
大声を出しても水中には余り影響はないけど(900~1000分の1程度・音波測定機のデータ)、
遠くの足音にも敏感に反応する究極の魚がこのタイプ。

ウェーバー器官(Weberian apparatus)
真骨魚類ネズミギス目と骨ぴょう上目の浮き袋と内耳を関連させる受容増幅器官。
この器官を持つ魚類は聴機能に優れていると推測される。
ウキ袋の横にある脊椎骨の最前部の4個が変形。ウェーバーの小骨とも言ったりする。

←解剖しても浮き袋が目立ち、ウェーバーはスルー。

その魚たちは荒れた海域を嫌い、平穏な水中状態の場所を好んで移動していきます。
同じ釣り場だったとしても即移動、全体が荒れている場所では捕食活動を控える傾向があります。
そして、もうひとつが上生体(epiphysis) という頭の上にあるワケワカラナイ器官。

上生体(epiphysis)=松果体(しょうかたいpineal body
当時、切開中に上生体を潰してしまったのはご愛嬌として許してください。
一昔前の本では「大脳・中脳・小脳」と記述されているが正確には「嗅葉、視葉、小脳」。

=嗅葉、視葉、小脳。上生体は残念ながら見えない。

この上生体を持つのは脊椎動物全般で存在し、実は人間にも有ったりしますからビックリでしょうね。
水中では側線では受けられない水中振動(微弱な短波など)を感知するものだろうと考えられています。
(側線が受けれる水中振動は75ヘルツ前後あたりで短波は無理だとする説・より)。

人間でなら上生体を松果体と呼ぶのが一般的だけど、これなら聞いたことがあると思う。
呼び方が違うだけで同じ器官で、大脳半球ふたつの間にあり、日照時間の生物時計リズムを司り、
メラトニンっていう睡眠に関係するホルモンを分泌する、とされています。
少々、魚類研究側とは違う解釈がされている医学研究側の解説ですが、
どうも両者に足を突っ込んだ私は、そのハザマで苦労したのは言うまでもありません。

で、問題は、この上生体の役割により、魚は電線下・鉄塔の傍に集うと云う事です。
何の変哲も無い水域では、海でも池川でも見事に偏った分布になりますから、
釣りをするなら要チェックなのは言うまでもありませんよね。

知識ステップ3:成熟で行動が変わる

子供と親の行動が違うことは肌で感じれるものでしょう。人間も同様に親と子では行動が違います。
まぁ中には「あなたって、いつまで経っても子供なのね」と妻からツライ事を言われる旦那もいることでしょうが、
典型的なのは防波堤に集まるイシダイやメジナの稚魚。木っ端何たらとか呼ばれる悲しい群れですが、
大物になれば岩を砕く磯に居付き、1日に何キロもエサ捕食のために泳いでいきます。

成熟すると荒食いするか、絶食するか、魚によってマチマチですが、大物をターゲットにする釣り人なら、
親魚が絶食の状態は非常にツライ時期になります。中には勢い余ってヒッカケに精を出す人も多い。

親が卵の世話をする魚は一般的に絶食状態でソレを行います。
また卵胎生のウミタナゴなんかは、エサを食いたくても子供に消化器官らが圧迫されるので、
そんな時期は、そもそも食うこと自体が困難。特に渓流釣りでは”遡上魚はエサを食わない説”として、
攻撃性でルアーらに食いつくとされて釣り方法が語られているので困ったものです。
サクラマスは体重の25%を占めるイクラで食えないだけで、病気にも弱く白内障にかかりやすい。
街灯に影響され、食いたくても食えない状況なので、それを応用した釣り方をすれば釣れるのに。
あ、「最先端の渓流釣り'08」で解説しますから詳しく知りたい方はそっちで……オホン。

そもそも魚には人間で言うところの「食欲は無い」と以前解説しましたが、それはあくまでも、
潮流が止まる時に一斉に食わなくなる魚の捕食行動から導き出されたからで、
実はエサを食ってる魚がコッソリいたりしないか?人間が気付けていないだけじゃないか?
という可能性は否定できません。食っているエリアが潮止まりでは別の場所に変わるかもしれない。
そんな想像をしたことがありました。

そこで、復習がてら、潮流の止まりでは捕食行動が本当に無くなるの?を考えます。
私たちが潮の流れを把握する手段は、だいたいウキを付けて飛ばし、流れ具合を見るもの、
フカセなら仕掛けの角度を見て把握する人、意識をしているか、していないかに限らず、
とにかく投げれば流れているかどうか見てますよね。

この潮流は、エサの捕食行動に大変大きく影響するのは勿論の事、明暗刺激と比べても遜色なく、
複雑な絡みを持っているので、ひとまず整理してみます。

1,流れがある場合

定位が必要なほど潮流がある場合、フワっとした餌の動きが食い波によって引き起きます。
カケ上がりかカケ下がり両方とも、そういった動きを起こす石や出っ張りが傍にあると最高です。
そのポイントに仕掛けを入れることが出来れば、まず大物は食わせれて、やり取り次第でゲット。

2,流れが無い場合

視覚・嗅覚・触覚をフル回転させる魚類の捕食行動が活発になります。当然、疲れて止める魚も多いです。
餌の姿を見て、匂いで誘われ、小動物の動きの振動をチェックする3連発を駆使して食物を得る魚なので、
食物が取れない貧相な水域では、学習して何もしないという時間帯となります。
これが”潮どまり”といって餌を食わない時間帯として設定され知識として広がったものでしょう。

止水とは匂いが広がらなくなる状態ですから、捕食方法のうち嗅覚を最高にして僅かな香りを追い、
側線や耳石、ウキ袋、持ってる魚はウェーバー器官をフル活動させて動く餌の振動を判別し、
視覚で発光・動きを注意深く見わたします。色彩感覚のある魚は微妙な白の変化をチェック。
そう考えると、かなり大変。手っ取り早く流れがあって、匂いが来る状況の方が都合がいいですねぇ。

3,光が無い場合=夜

ヒトデですら腕の先に”光点”という目を持ってますが、生物全般に必須の器官が目。
目の無い動物ばかりが棲む世界であれば、1つ目の妖怪(←片目って書くと表現上マズイかと思って)
であるならば王になれ簡単に世界を征服できると言います。
まぁその、夜は目じゃなく他の感覚器官が優勢で行動します。ヒネリもなく、そのまんま。

4,そもそも視覚の重要度

スピードの速い魚、障害物を避ける魚、彼らは目を使っていないと推測されていますが、
敏感にレーダーを出すがごとく周囲を検知しているわけで、そもそも水中での目の作用は難解です。
この件で結果として「目を使ってないことにすればいいじゃん」と研究者が考えてしまう所以。

ルアーや仕掛けのカラーを注意深く考える釣り人は、色彩感覚のある魚に対しては好いですが、
色彩感覚のない魚は明暗しか判別しないし、仕掛けの色より、針がラインに当たる振動などで
エサと間違え食らいつくかもしれないと、別の考えをしてみると好いかもしれません。

5,成熟で定位場所を変更

よくノッコミとかいう言葉を使いますが、先に書いた産卵のための荒食い、産卵場所を求める移動、
そんな状態を言いますよね。しかし、産卵そのものの段階には、魚種によって食いが止まります。
卵が体重の25%とか30%にもなる魚だと、消化器への圧迫によりエサを食うことは出来ず、お手上げ。
すなわち、エサを食う定位、カケアガリなどのポイントから身を守れるだけの目的に場所を変更します。

理想的な解説例=メジナ

例えばメジナで図鑑っぽく解説を書いてみれば、こうなります。

平均全長40cm前後のオキナメジナ、50cm前後のメジナ、60cm超のクロメジナの3種が存在。
オキナメジナは翁=オキナというようにソレ顔っぽいのが特徴、単独で居ることが多く、
メジナはクロメジナより冷水系。精巣・卵巣は成熟しても大きくないため常にエサを食う。
尾長”と言って沖磯でメインとなっているのがクロメジナで特に静岡以南に多く、
対してメジナを”口太”と言います。図鑑などに出ているcmは平均全長ですから、
尾長も1mにもなる大物が居ないとも限りません(←誇張過ぎ?)6kgを越すものも多いです。
区別は鰓蓋のフチが黒い事、尾びれの先端が長く伸びているかどうか。

産卵期はメジナ=5月頃、クロメジナ=11月頃。(オキナは釣れないのでスルー)。

メジナ類の食性はオキアミを主にゴカイ類から藻類のアオサやミカンなど雑食性で、
特に小動物が多い夏は冬と違って植物性は食べません。幼魚は流れ藻等に乗って堤防などで群を作る。
食味は白身で弾力性があり、煮て良し焼いて良しフライよし、冬は特に美味いです。
”根”に潜っている習性があり、釣る際は、撒き餌(コマセ)を敷き浮かせてからが順序です。
尾長の日本記録は74cm(1980年長崎県男女群島)←更新されているかもしれません。

似た魚にイスズミ類(関西呼称イズスミ)がいまして、上記3種の亜種レベルではなく、
まったくの別モノでイスズミ科。藻類を多く食しているせいか身に脂が少ない感じ。
大きさも70cmを超えクロメジナに特に似ているので「おお~っ!!!」⇒「ああ……」式の落胆で楽しめマス。

いやぁ、図鑑の解説でも、産卵期だけじゃなく成熟の際の卵巣・精巣の体重に対する割合に加え、
食性が残っているかも示して欲しいなと思っただけでして、メジナ釣り師も多いし解り易いかなと思って。

さて、通常の釣り話で頭も柔らかくなった所で、本格的な成熟の話”倍数体”に進んでまいりましょう。

知識ステップ4:成熟を変化させた画期的なバイオテクノロジー

スーパーウルトラサイズの巨大な果実を見たことが皆さんおありだと思う。巨大ダイコンから超絶スイカまで。
昔、これらが発生するたびに悪魔・魔女がやった…と言われ、いや嘘、言われなかったけど、
土中に含まれる何かの仕業(しわざ)、二酸化炭素が濃かったせい、等と考えられてきました。
そう、遺伝子がメンデルの実験で出てくるまでは。

その超大な果物の遺伝子を調べると、通常の遺伝子束が二組ではなく三組ありました。
なんと、そうだったのか、それを知った植物学者は全員、間違いなく血沸き肉踊りました。
「これで食用事情はクリアー、デカイ果実作りまくろうぜ」と。
ところが、そうは問屋が卸しませんでした。神が怒ったのか、何でもかんでも大きくならなかったのと、
デカイ物同士を掛け合わせても子供(種子苗)が取れなかったのです。

それなら、どんどんDNAの束を増やしてやれば種子が取れる組数が必ずあるはずだ。
そして、呼び方を”倍数体”とし、精子・卵は1倍体、普通のものは2倍体、
作出するDNAが3束のを”3倍体”としました。

2倍体である一粒コムギとクサビコムギを交雑し倍数化して、4倍体である二粒コムギを作り、
これを2倍体タルホコムギと交雑させたのち倍数化して、6倍体であるパンコムギができた。
4組作成、5組作成…、6組作成……、結果、大きなものを作る無駄骨とは言わないけれど、いまいち。

それじゃぁ、種子が出来ないことを逆に考えてみようではあ~りませんかぁ。
そうだ、いちいちタネを取るのが面倒な果実、タネ無しスイカだ。最終バンバン。

しかし、砂浜で寂しく石を投げる植物学者の噂を聞いて、魚類学者が倍数体作成へ参戦してきまして、
一発デカイやつ、マグロ級のメダカでも作ってみようと、これまたオモチャのごとくやり始めました。

3倍体の出来方イラスト。

受精したら、ある一定の時間までに
刺激(温度・圧力・薬品)を与えると、
DNA束3本の3倍体ができる。

一定の時間、温度(=一番無難)の設定を
見つけるまでに試行錯誤があり大変だった。

教えられるのは簡単、温度などを導く努力に、
先人たちの苦労を垣間見て感謝を!!!

植物と違って、魚で行った3倍体の特徴を簡単に説明すれば、雌雄のどちらかに成熟がなくなるだけ。
しかも魚の種類によってオスメスの成熟効果が違い、卵巣が大きくなる魚には有用だったけど、
メスで卵巣が小さかったり、オスだけ変化した場合は「オレたちの時代が来た」生物学者的にイマイチでした。

しかも、雌雄で行動は変わり、当然、偏ってしまう倍数体作成には問題が出てきました。
近年の琵琶湖コアユの大型化の驚愕変化、フナの倍数体、クロダイの雌雄変化の調整、など。
3倍体が成功したのは卵巣が大きくメスだけ成熟しなくなり産卵後死んでしまう魚類だけでした。
その魚類は何でしょう?博識な読者さんならハッと判ったはず。ゆえに放流は禁止。最終バンバン。

ちなみに3倍体の注意点ですが、植物も魚も遺伝子の束が増えただけでDNA自体はいじってないです。
食べても害はありませんので、食材としては気にされずOKです。

何はともあれ、異性がいないと行動がガラっと変わるのは現実に想像が容易いですよね。
そう、貴方が男性ならば、ギャルの参加しないコンパに行くのか、
女性ならば金の無い(オゴリじゃない)男性についていくだろうか。おっと、ヤバイ話にいつのまに。

一般的に習性という表現を使いますが、倍数体(3倍体以上)では非常に目立って行動を変えます。
特に成熟をしないメスの種類の場合は顕著。
オスは成熟しますが、長年の時を重ねると存在すらしなくなることもあります。

淡水魚のフナではメスばかりですが、これは自然に起きた3倍体で、ドジョウ等の精子の刺激で孵ります。
オスはいなくなっちゃったんですねえ。他でオスメスで偏ったものといえば三毛猫がいますけど、
これって正確には倍数体じゃないですけどメスばかり。オレンジを作成する遺伝子の特殊性で起き、
メスの場合にのみ発現し、オスは染色体異常で3万分の1の確率でしか生まれません。
うむ、面白い生物の世界ですね。

知識ステップ5:資源枯渇が進み、釣魚も居なくなっていく!?

山口県周辺の日本海で、熱帯性の海洋生物(クマノミ、マンタ、バショウカジキなど)の
目撃や捕獲が相次ぎ、海洋環境の変化を示す現象が頻発していることが、
萩博物館(山口県萩市)などの研究グループの調査で分かった。海水温の上昇も確認されている。

更に、沖縄以南の熱帯に分布する「リュウキュウキッカサンゴ」が、
本州最南端の和歌山県・潮岬(串本町)沿岸で見つかった……ここから話は展開します。

地球温暖化で魚の分布域や生態に変化が出ているようなニュースが多く聞かれますが、
普段から調査なりをしている研究者からしますと、温暖化よりも人間の人口集中や
生活排水による環境変化、いや、生活廃水より街灯・工場や空港の巨大ライトによる生態変化、
これらの光は日照時間による海からの遡上魚の成熟に大きく関係しているし、
そもそも病気やらの発生の方が魚類資源の増減に大きく影響を与えているのは、
世界的に知られています。

TVで言われる”世界的に注目されているとか、また世界的に有名な”ってのは、
最初から知ってた視聴者は殆どいないでしょうが、そんな野暮なツッコミはさておき、
陰に隠れている枯渇要因を公表すれば、世界中に波紋を投げかけます。
世界中にこの衝撃が波紋を広げてますってのも、何のコッチャとツッコミは不要…。

兎にも角にも、手遅れ状態にならないと発表しない資本主義社会において、
温暖化が、かなりヤバイ状態になっていることは想像できますよね。
夏、北極圏の大氷エリアの氷が大部分溶けてしまい、ヨーロッパとアジアを結ぶ航路において、
2週間も短縮できる”新海航路”まで出来ちゃってるんだから。カナダが所有権を主張中。
温暖化は大工場だけじゃなく核含む爆弾=実験含む=の影響が最も…という事は表に出ないし。
あ、やばいかなコレ。うーむ、どちらにせよ資本主義だよね。ゴホンゴホン。

知識ステップ6:資源枯渇への対策、養殖放流事業での工夫

こんな感じで現況の魚類資源の基本話をしましたが、ささやかながら枯渇に対する手段の”今”を
お話したいと思います。これらは将来を左右するかもしれないものたちです。
人間の知恵の勝利といえるか、研究費の無駄使いといえるか、結果が出ていない段階ですが、
そんな努力を研究者等が陰ながらされているのは知っておいて好いはずです。

まずは水を工夫するケース。理屈はこうです。暖かい地方では海水を冷ませなければならない、
水槽用クーラーだけでも大変なのに、養殖用の水槽では半端でない電気料がかかる。
コストを下げる工夫の第一歩として、涼しい山中でのマグロ等の養殖はできないものだろうか。
問題は浸透圧であり、クリアーできれば、電気料の少ない水温の安定した地下水や渓流の水で
海水魚を養殖できるではないですか。ヒラメなど高価値魚を始めとしたマグロなんかは…

電力会社が余剰の電気を使ってヒラメを養殖して放流していますが、これは知られていないよね。
当コラムを以前から読んでいる人は過去にあったと思い出せるかもしれませんが。
会社のささやかな反省を込めた作業なのか、利益重視のどこかとタイアップしているのかは
知っていても書けないのがツライところですが。

なぜ電力会社の社外秘を知っているかというと、身内が元研究所長でいまして、
過去、就職しないか?と誘われたことがあったからです。当然好い面しかマスコミに流さないけど、
いやはや、内部では結構たいへんな話がありました。身内は現在どこかの団体のトップに天下り…。
東京電力、中部電力…どこの会社でも余剰電力を使った同じような養殖研究を実施だそうで。

現在の流行は淡水と海水の浸透圧差に挑戦している研究者が多くいること。
公的に発表された中では、好適環境水(浸透圧を軽減した海水魚を淡水で養殖できる)、
超微小気泡「ナノバブル」があります。最初聞いたときは信じられないほどのインパクトがありました。
商品化されているのは「ナノバブル」だけで、「好適環境水」は未だみたいですが成果は出てるそう。

化学的酸素要求量COD=Chemical Oxygen Demand、、溶存酸素量DO= Dissolved Oxygenを、
微妙にいじらねばなりませんので、長期飼育や産卵受精はどうなるのか、答えは発表されていません。
超微小気泡「ナノバブル」は好適環境水と同様に海水魚がOK、浸透圧を泡で軽減。理屈が違うだけ。
個人的には、詳しく現地へ行って解説を聞きたいし、私自身が飼育繁殖を実験し効果を確かめたい。
もしも効果的なら、個人サイトでも併せて各人脈のある研究者たちへ紹介したいと思っている程。

ところで、イレギュラーで触れておけば、濡れない水「Sapphire」なんてのもついでにあります。
濡れない水「Sapphire」はフッ素系溶媒で、沸点が49℃。飲めば虫歯が改善する!!!(半分ウソ)

知識ステップ7:魚枯渇…病気は群れ単位で広がる

生物は食用というメインの利用価値だけじゃなく、医学分野などに応用されたりしていますが、
日本では天然記念物に指定されているカブトガニは、海外では普通に見られることもあり、
医薬への利用で研究課題になっています。2億年前から変わっていないという恐るべき姿、
カニというよりクモに近いという想像しにくい図鑑の解説も有名なヤツです。
今は細胞内毒素などを検出するテスターが、カブトガニの血球抽出液を利用して作られています。

日本で世界最大のカブトガニが確認・捕獲された時。
新聞ニュース元である方から私宛に来たメール。

「全長79.5cm・体重5.0kgのカブトガニは
研究者に計測された個体としては世界最大だと思います♪」
(by長崎県自然環境部環境保護課スナメリおじさんより)

一般的に生物の利用価値分野や環境保護のシンボルとしての存在ばかり知られていますが、
彼ら自体が病気になり増減する、つまり、NPOなどのウミガメ保全、環境団体などからあがってくる情報、
個人の釣り人の報告、他、問題は報告が一般から来るのは「静岡の防波堤でラブカ発見」とかいう、
印象の強いもの達ばかりで、本当に重要と考えるのは、何を隠そう疾病の報告が来るかどうかなのです。

コイヘルペスの大流行、アユの冷水病などは典型的な全滅パターンで、当然、大なり小なり海でもある。
釣った魚に腫瘍っぽい肉球があればリリースしていると思うけど、よく調べたいものです。
一匹ごとに違う釣り人がゲットするので「これだけがオカシイ魚」と思いがちだけど報告が欲しい!!!

何故ここで疾病の話なのか、それは自然界で魚が疾病になるのは容易く、溶存酸素が少なく、
水質が悪化すると、非常に大きく広がります。

白点病

転覆病
=魚の疾病が行動に関わるのは100%

軽く白点病になっただけで淀んだ底でジっとし、
エサ食いをストップするのが典型的。

群れ単位でなれば「魚が多いのに食わない」や、
見えてるデカイ魚の傍に仕掛けを投入しても
無視されてしまう時などは、こんなケースが多い。

そんな疾病中の魚でも、フグは餌を食いますが、
多くの魚が沈黙、具合は釣り人からは確認不可。

「ここの魚たちは食い気が無いなぁ。デカイのが見えるほど多くいるのにさ」。
こんな時、その魚特有の習性ではなく、病気が広がっている場合が多い事を知っておこう。
魚影が濃くとも釣れない場所、ひょっとしたら、工場の浄化装置不具合から何かが流出し、
生態系にコッソリと影響を与えているかもしれない。第一発見者は自然に接する人が多いです。
つまり我々釣り人も、です。

  =目の白い腫瘍に注目を。

例=出目金病、目に腫瘍系の肉球が出来たシマダイ(イシダイの子供)。
原因推測=他魚につつかれた、水に窒素が多い、色素材が浮遊、白内障から発展、
目の奥で病原菌に侵されたケースで発生する。
結果=失明するが餌は匂いで採れるので全滅というケースは免れる。
海水の水槽内では銅イオンが効果があります。
市販の銅イオンは高いので、裏技として銅で出来ている10円玉が効きます。

=見てのとおり、10円玉を放り込んであります。
超安上がり”銅イオン治療法”。
効果は薬と比べても全然遜色ないです。

よく効きます。

そうそう、注意点としてお金コインと言っても1円玉は効果ないよ。念の為。アルミ製だから。
(薬品メーカー、銅イオン薬が売れなくなるため激怒!!!抹殺指令が間違いなし♪)

<大被害を起こす疾病>

例=体に傷が広がる降海魚。
原因推測=水綿、水カビが体にくっつき生え広がる。
結果=浸透圧調整に支障が起き、体液流出も加わって死亡する。群れ単位で広がるので危険です。
治療をしないかぎり死亡するのは、抵抗力が魚に備わっていないためと推測されています。
普通に病原菌は水の中に存在し漂っているので、弱まったりキズを持つ魚に病気が発生します。
病巣が大きくなれば、菌類もウイルスも増えますので、群れ単位に広がっていきます。大被害を起こします。

下は真っ赤だった傷口が治りかけ、黒い皮膚層(皮下組織)が出来ている写真です。
水の色が違うだけで、レンズ・フィルターを使って黒くしているわけではありません。

 ⇒治療⇒   

この治療法や生態は「最先端の渓流釣り'08」にて公開するつもりです(あくまで予定)。
おおっと、また書いちまったか。ところで「最先端の渓流釣り'08」を知らない読者さんが居るって?
なんと、君ィ~、逆さ貼り付けです!!!海悠出版ですぞ。…宣伝ネタ失礼。

<最も深刻な疾病>

エラ病=外見からは区別不可。
原因推測=水質汚染、浸透圧の急激な変化、白点病などがエラに発生から来る呼吸障害。
結果=気がふれたように猛スピードで走りまくり、飛びまくり憤死。よくボラが河口で起こす。
他にフナ・コイなどの大量死もコレが多い。酸欠を示すので被害の最中を観察する必要があるが、
TV報道では被害が終わった(死んで浮いた状態)が多いので、途中経過を示すビデオが欲しいもの。

どちらにせよ、水槽内なら薬効はあっても、広い自然界ではどうすればいいのか、
科学技術への挑戦が延々と続いています。
薬のコストを減らせばいいか、狭い閉鎖水域を一時的に作り出すか、全て処分する作業コスト軽減、
疾病発生を無くすには人類がいなくなれば良い…という過激思想も加わって、課題は多いです。

最先端への旅、終わりに

3倍体には行動を大きく変えさせる面もあり、それは成熟と関係しますので、
産卵期直前の荒食いも無くなり、自然界へ放してしまえば非常にシビアな問題をはらみます。
しかし、その3倍体の生態を実験・研究してみると、自然界の成熟前後の行動変化が浮き彫りになり、
時期によって狙う場所を変え、エサを小さくしたり(成熟期は巨大化した卵巣・精巣で消化器を圧迫)、
豪快から繊細へ釣法まで変えれば、もっと効果が出るだろうことまで推測できました。

最初に魚類名や生態を詳しく知っている人は多いと書きました。それは素晴らしい状況です。
知識が有るにこしたことはありません。そして、ご自分で何かを開拓する、そんな工夫まで出来るよう、
魚類学の幅広いネタを集めたのが「サカナの行動学」でした。File.1から読まれていれば”輪郭”が把握でき、
何かを工夫するなら率先して試してください。

魚類学はどこまで進んでいるのだろう、あまりにも広い世界です。だって生物全体に関わりますからね。
取材などで仕入れた最先端のお話を引き続き次回してみたいと思います。乞うご期待。



今月の一手:「さぁ、風の強い時期に突入だ」

アタリが取れない風が強く吹く時期、こんな理想な場所が有ったらと思った人も多いハズ。
台風で誰も竿が出せなくたってバッチリさ。自分用の囲いは如何でしょうか。

=釣り人の誰もが一度は考えたことがある自分用の囲い。
風や高波を防ぎ、竿がちゃんと振れる広さを確保、
大型が掛かって走られても大丈夫なように、
”いなし”などのテクは持っているという厳しい前提が必要。

足元の重石に紐で括りつけるだけでOKという簡易版や、
更に頑丈で”海の釣堀”のような家屋仕様もバラエティ。
トイレや休憩室も装備させれば、もうキミだけの世界だ。

好みの絵柄で飾って、「そこの彼女、一緒に釣ろうぜ」。

ただし、勝手に防波堤へ持って入れない、そもそも法律的に大丈夫か、
風や波の強さに耐えれるか、という根本的問題はありますが、
池では常連ヘラ師が釣り座を勝手に作っても怒られていないので(本来はダメ)、
その場所の漁協に顔が利くか、海岸を占有している企業の幹部や社員で身内的に試してみましょう。
といいますか、やろうと思っても実際にやるまではしないという筆頭がコレでしょうね。最終バンバン。

それにしても風は厄介。私は対策を常に欲しています。
風向きに竿を向ける、短い竿を使用する、糸を細くする、オモリを増やす、着込むというレベル。
何か読者さんで、こんな工夫をしている等のお勧め案がありましたら、是非ご一報ください。
素晴らしい工夫であれば、誌面上で紹介され、後々には主流になるかも。



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