釣りに役立つ魚類行動学その6
魚の学習能力3/対応と対策?

私の親友&釣友がいる。

小さい頃から一緒に川や池、沼で釣り、その次は海の投げ釣りに興じ、
堤防や小磯でのクロダイ等をこなした。
船だけは残念ながら酔いに負けて途中で断念したが、
果ては渓流にはまり、彼はテンカラをもこなす釣りのオーソリティ、
いや、オールラウンドプレーヤーと化しています。

現在ダイビングに長けていて数100ダイブのベテランになっている。
ウミタナゴは胎生であることやクロダイは大きくなるまで雌雄同体など、
ウツボ、ウミヘビ、ゴンズイなど害魚の注意点、ウミガメ等を使って自然環境の尊さを語っている。

一般的に云う「お魚博士、釣り博士、自然博士」を体現しているレベルといえよう。
「こういう場所に魚は集まるんだよ」などと話せば大体の人が彼の言葉に耳を傾けるし、
生物を扱えば上級者のスキルを確実に備えている。
しかし釣果だけは別、知識ジャンルが魚類学・解剖学・生化学等に踏み込んでいないからです。

ちなみに私が彼の釣りの師匠ですが(汗)

議論・潮止まりに食わなくなる理由って?

ある時、私と彼の問答がありました。テーマは「魚は空腹を感じるのか?の理由」。
潮止まりは一斉に食いが止まるのは半ば常識とされていますが、よく考えてみれば何故でしょうね?
私達は下記の3点に焦点を絞って議論しました。

・食わなくなる時(潮止まり)とはいえ、エサにあぶれていた腹の空いている魚も居るはず。
・ただ単に潮の流れが止まるだけの現象で空腹感が無くなってしまうのは不自然。
・我々(釣り人、マスコミ含め)の錯覚で、実は潮止まりでも食っているのが真相かも!?


私の魚類研究では一応の見解があります。

水槽内では潮の流れ(水流)関係無しでエサを食うこと、つまり腹一杯以外は常に食い気がある、
餌付けすれば見事なまで貪欲で悪食になり、たった5-10分で腹一杯のエサを食い尽くすこと、
潮の流れで空腹感が無くなるのではなく、魚自体に空腹という感覚が無いこと。

また、人間のように血中糖分の濃度によって満腹中枢を刺激返されることはなく、
痛覚が無いことと同じような感じでしょうか。満腹感もなさそうです。
何が満腹・空腹の指令を出しているのか、実は現代科学をもってしても、
よく解っていないのが現状でして、これからの研究成果を待っている所です。

側線や耳石の聴覚、嗅覚、視覚を超える未知の臓器「上生体」の成せるワザかもしれません。

過去に何匹か異常に痩せた魚を釣ったことがあります。読者さんもありませんか?
こういう魚は3-4ヶ月エサを食っていなかったのでは?などと思ったこともありますが、
釣れてしまった以上、正確には1日ホンの少しのエサで満腹のような、潮止まりのような、
人間で云う所のホルモン異常の生体と判断できます。可哀想なぐらい痩せ細ってる…。

魚というのは人間の様に規則正しく食事を摂らなくても良く、絶食も軽く1-2ヶ月いけます。
2-3週間ぐらいの絶食なら、どんな魚でも楽勝で元気です。
人間は水分を摂らなければ1~2週間、絶食では1ヶ月ほどしか命がもたないらしいですから、
魚は生命体として相当強い能力を持っていると言えます。

こんな感じで日々お互いが切磋琢磨しあいながら成長しているわけであ~ります。

人気釣り場は大物の学習度合いが大変高い

海を始めてからのこと、有名な釣り場からスタートしたのは言うまでもありませんが、
有名な釣り場というのは綺麗なトイレがあり、自動販売機も設置、広大なエリアです。

下はその頃によく通っていた知多提海釣り公園という以前の高潮防波堤を改造した、
先端まで1330メートルという防波堤(付根から歩くと片道20分ぐらい)、
有料駐車場があり一回500円です。
しかし広大ゆえ先端でトイレに行きたくなろうものなら生地獄は必至。特に大なんか。
なにげない顔をしながら元にあるトイレ塔へ向かう釣り人たちの顔が思い浮かびます。
今はトイレが各所に出来て安全性の高い柵や緊急時用の投げ輪まであります。
かなりクレームを受けたんでしょうね。用をしたくなってから20分だから(笑)



▲広大な1330メートルの堤防。右は管理塔でトイレや自動販売機、空調完備です。



▲取材時も人が一杯でした。先端まで満遍なく釣り人が居る人気釣り場とはココのこと。
管理棟には釣り人自慢の魚拓が飾られ、訪れた釣り人に「よし、私も」という気にさせます。

しかしながら、実はそんなに釣れまくるというほど大物は釣れません。
ベテランでもボウズはしょっちゅう、ファミリーではメバルやカサゴの小型ばかり。
そう、人気釣り場なだけに大きな魚達は食いの良いのは釣られきり、賢いのは学習し、
全体的にも常に攻められつづけられている為、広大な場所ゆえ魚影は濃くとも釣果は少ないです。

=こういうポイントは誰もが必ず狙っちゃうよね?

▲釣れそうな好ポイントも学習されると小魚ばかりが残ってしまうので注意。

管理組合もクロダイの稚魚放流や漁礁を沖合いに沈めるなどの努力をしているそうですが、
こういう場所こそ「あの釣り方」です。

キッカケはたまたま投げ竿と磯竿が壊れていて渓流竿を取り出したという情けない理由でした。
伏線で「空腹の何故?」から既存の方法をとらず、自分たちで編出してやろうじゃないかという気概
「人類は全てを知っているわけではない」そんな勢いもあった状況でした。
全てにおいてキッカケはささやかなものです(遠い目)。

前号で詳しく紹介しましたが、8-9mの長竿(サツキマス・サクラマス用)で行う、
1.5号通しの毛糸の目印、オモリ一個つけのフカセ(ミャク)釣り。

←前回の流用タックル・イラストです。

←細かく探れる理屈図デス。

私は常にコレでやりますが、9mというのはどれぐらいの長竿なのか、
普通の人が2-3mの投げ竿、5m前後、長い人で6mでしょうから、9mは半端でありませんですぞ。
解りやすいように写真でトライしてみます。スケールのでかさに感動を!!!



写真でも分かるように目印としてクーラーボックスに赤いハンカチを竿先に括り付けました。
これで遠くから撮影しても「コレです」と示すことが出来ることでしょう。
ふふふ、頑張る執筆者にエールを贈ってください。

ところが……

←スケールの大きさが全然分かりませんでした…

し、失礼しました。

一人でサクっと写真撮影に挑戦してみたので、比較できるものなどを入れるのが難しく、
自分で竿を持ってハイポーズも出来ませんでした。
他の釣り人の皆さんは一生懸命釣りをされていらっしゃったので頼まなかったのが失敗です。

とまぁ8m~9mの長竿(写真は9m)を使って、一般の釣り人が攻めている場所よりも遠い所、
投げ釣りでは探りきれない場所、大物が学習して遠目に居るのを探るわけです。
これはかなりの効果と実績がありますから、まだクロダイを釣ったことの無い方は是非お試しあれ。
隣の釣り人にあげてしまうほど釣れる場合も多々ありましたからね!!!

最初に彼にしたアドバイスは堤防の選び方でした

そういえば防波堤って、どこの場所でも同じように見えますよね。
根本的に作りは規格があって同じようにならざるを得ませんし。

そこで彼が採った選択方法は「とりあえず竿を出してみる」というものでした。
これは多くの釣り人のみなさんが採用されている選択方法ですよね。
糸を垂らして初めて知る~トレジャーハンティング(宝捜し)的なものであり、
釣りの紹介記事も堤防の先端が良いなどのマクロ的解説がメイン。

では見た目で判る堤防の(釣りにとっての)良し悪しはあるのでしょうか?
一応、以前に親潮などがぶつかる場所が良いと基本を話したことがありますが、
そんなことは知らない、調べない、見た目でいこうぜ!!!な方には朗報です。

まずは下の2枚を見てください。
取材のため、場所移動に1時間ほど掛かってますが、ほぼ同じ時間帯(同日)です。



まぁ写真の出し方で何となく分かってしまいそうですが、左の防波堤の方が良いです。
左は右側の水面が波立ち、左側は納まって静まっています。
外洋に面しているのですが、こういう違いが明らかに出る方が潮流などのぶつかり具合が
(風もありますが)適度にあって釣りきれても新しい魚・超大物が供給されます。

一方、同じような地区にある右側の防波堤ですが、内側と外側の波の差が余りありません。
大物達は外へ出て行ってしまうので、小魚たちのオアシスとなりやすいです。
小魚や根魚を狙うならこういう場所でノンビリするのが良いでしょう。
というよりノンビリせざるをえない状況になるでしょうから、ご覚悟を。

両方とも釣り人が全然居ませんが、最初に紹介した知多提海釣り公園も同日です。
あっちでは人が一杯だったんですけどね。

人が居ない穴場でも右と左では雲泥の差です。

過去、実際に試した私達は、上の左側の場所=海水浴場でファミリーが多々釣り糸を垂らす
(知多半島の内海海水浴場)で25cmヒラメと45cmマゴチを釣り上げました。
周りは15cm前後のメゴチ、カレイ、ゴンズイ、キス、ヒイラギ、木っ端メジナばかりで、
「こんなのがいるのか!!!」と驚嘆な声が響きましたネ。

右側ではヒイラギ、メゴチ、カサゴ(小型)ばかりなり…でした。



左側の防波堤の左右の壁部をアップしました。クドイですが同じ防波堤です!!!
全然様子が違うよね。それがポイントなのです。

波が穏やかな左は水が透き通り、小魚の群れが泳いでいて生物相は豊富。
大物が供給され易い波の荒い潮表(右側)はテトラの切れる所から先端周りで狙えば最高です。
多少、釣り人も入っているでしょうから8~9mの長竿で攻めると良い釣果になります。

絶好ポイントなのに釣れない場所に注意せよ!!!

ここで突然ですがベテラン・上級者でも釣れない理由の一つ、貧酸素塊を説明します。
多少、先に紹介した”右側の静まった防波堤”に似ています。
この広大な母なる海にも酸素の無い部分があります。そう、底は死の世界になっています。

「赤潮」というものなのですが、これは親潮や黒潮という
本来の潮流とは全く違いまして、
たんに異常にたくさんのプランクトンが発生して色が変わったものです。
紛らわしいですよね。

プランクトンたちが死んで海の底に沈み、それを分解するために
バクテリアなどが一生懸命働きます。
働けば働くほど酸素が無くなって行きまして、結果、
酸素の少ない貧酸素塊(飽和酸素量の40%以下と定義)というエリアになります。

酸素が無ければ生物は殆ど住めませんから、死の世界になります。
時々貝が死滅!!!とかヘドロ化!!!というのは酸素が無い場合に起きます。
赤潮が発生⇒プランクトンの分解⇒酸素が無くなる⇒貝などの底の生物が死滅…というわけです。
尚、ヘドロというのは酸素が少なくなり水が悪くなると出来るドロドロのものです。

水が汚れる⇒酸素が無くなる⇒ヘドロを作ってしまう生き物(バクテリア)が頑張る。
ヘドロが出来るのは硫化水素のせいなのですが、硫化水素を作るのがバクテリア君。
広大な海でも、ちゃんと潮が流れなくて淀んでしまったりすると
釣りにならないぐらい魚が住めません。

魚はまだしも、アオリイカなどの軟体動物、エビなどの節足動物は水質の変化に敏感で、
慣れたりする前に死滅してしまいます。
都市部などで妙に釣れない場合、これも疑ってみた方が良いでしょう。

攻められていない防波堤を探してみると!!!

一方、下はガラ空きである別の海釣り公園。
一昔前は釣り人も多く、サンバソウ(イシダイの幼魚)やクロダイ、セイゴはじめ、
多種な魚が釣れて人気だった場所です。

今はセントレア空港が出来た為、一旦埋めたてられて形だけ残っている新しい状態です。
こうも見事に釣り人たちが居無くなろうとは想像すらされなかったことでしょう。
次章で述べる魚介類の回復(三宅島の)を例にすれば、今釣り糸を垂らせば爆釣かもしれません。



同じように見える広大な防波堤、しかし、どんな場所でも所々に変化があるのは皆さんもご存知の通り。
防波堤ブロックの繋ぎ目とか、捨石、障害物周り。
特に上の左にある排水溝では謎の魚が潜んでそう(釣り人が増えないよう祈る?)。

このような場所は気がつかないだけで沢山あると思いマス。

現代は繊細な釣りを強いられる

現代の釣りでは仕掛けを含めて繊細なテクニックになっているのは
誰も否定出来ないものと思う。

竿の質も上がり、ラインの良い伸び具合、弾性、ウキの高度な浮沈バランス力、
どれを取ってもハイテクを駆使した高給素材で出来ていて文句のつけようがありません。
上級者に至っては探り釣りをする際、オモリを付ける所に
ラインを保護するペーパー(テッシュ)を巻いて、
それを挟むようにカットされたオモリを使用しています。

コマセなどの寄せエサですら、ハチミツを混入したりしてあるものが出現、
昔の釣り人ならヨダレを垂らして羨ましがることでしょうね。

高度な繊細な釣り…これらは大物をターゲットにした場合において有効であり、
小物釣りの場合は未だに竹竿と太いライン、大きなオモリでも充分釣れます。

大物がそれだけ釣れなくなってしまったのは年々高度化する釣り人のテクに対して
生き抜いた学習能力の賜物であり、魚の数も非常に少なくなっていることが
大きな原因として上げられるでしょう。

三宅島の魚介類の調査ニュースを見た方は思い出せるでしょうけれど、
壊滅状態だった海域が、数年の時を経てサザエは超大型に、
魚も種類が豊富で大型化した現実があります。

以前に比べて繊細な釣りを強いられる私達は、どうすれば抜け出して釣れるのか?
それが今回のシリーズの目的であり、続けて読まれている方は何がしらの吸収をされて
テクニックに結び付けられていることと思います。
釣果に効果があれば、書いている私も実に嬉しいことですね。

そういえば以前、釣り場の選択をしていた時です。
地図上で”ここぞ”とばかりに選んで釣行、現場に辿りついた所で、
釣り道具やエサ袋のゴミがあればガッカリ、その場所は避け時にはゴミ掃除だけして帰ったことも。
何人もの釣り人が攻めているのを見かけると釣り荒れたスレっからかしの魚が多い場所と判断し、
車の中で地図を広げて別の場所を物色します。

しかし現在釣り天国といわれる中部地方に住む私は、何処へ行っても釣り人、釣り人。
親潮などが近くに蛇行する場所などなく、静岡方面まで行ってやっとこさです。

次回にも応用と対策編は続きます♪友人のカズオ君も活躍?乞うご期待。


今月の一手:少々長いですが…
スーパーでエサを探せ!!!(冷蔵庫の中にエサを入れても怒られない)

連載記事のテーマでもある「観察⇒推測⇒応用」は釣りに非常に役立ちます。
今回は特に竿の長さの写真撮影に失敗しましたが、失敗にめげずに頑張るのがお約束。
巷では、お笑いコーナーと誉れの高い「今月の一手」いってみよう!!!

前回、エサの工夫を投げかけてみましたが答えをあげてみましょう。
全て実績がありますから、先月号で興味があった方々はお土産として知識をドウゾ。
メジナのササミのオキアミ漬け、シオカラでタイ類、カワハギはアサリに味の素、
ポップコーンやオキアミ+ブランデーでクロダイ、サヨリはハンペン、
ソーセージのオキアミ漬けでアイナメ。
変わった生餌としてハゼにはミミズ、ヒラメは小鮒、スズキは金魚がいけます。

せっかくですから、第2弾としてスーパーで買った材料で試してみるのは如何でしょうか。
何といっても安い。イクラなんか分量といい、鮮度といい文句の付け所がありませんよね。
(強調するとエサ屋さんからクレームが来るかもしれません)

実績があるのは、シラウオ(メバル・タイ類)、アサリ(カワハギ・アナゴ)、魚のエラ(根魚類)、
冷凍アワビ(イシダイ)、干しイワシ(魚食魚)、レバー(メジナ)、イカ(タイ類)。
アユの友釣りでフナを使用するのはメジャーですし(知っていても「知らなかったと言う人」多数)、
金魚やフナ、コイを生餌にしてスズキやヒラメなどの魚食魚狙いは普通にあるでしょう。

冷蔵庫の中にイソメ類やゴカイ類を入れて怒られる事がない正当食材でチャレンジ。
さぁスーパーで物色してみましょう。

オマケヒント(既に実績有り):カステラ、スパゲッティ、サシミ(当たり前ですが)、
レバーは牛・ブタ・トリいずれもOK、タラコの練り、ゆでタマゴ(白身)、
ドジョウ(当たり前ですが)、ヨーカン、大根の葉/ホウレンソウ、
イカワタ漬け、ホタルイカ、イカの切れ身、シラスなどなど。

▲大根の葉やホウレンソウは冬のブダイか…と分かってしまいそうですが、
どれがどういう対象魚に有効なのかは書籍化レベルですので、
読者さんも自分で試し失敗しながら苦労して探す努力が必要ということから(失礼)、この辺で。



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