マンハッタンカレッジのロバート・ジェラーチ教授(宗教学)によると、ロボットは最終的には単なる機械以上の存在になる可能性があるという。「一つの可能性はテクノロジーの発展と共に宗教が根本から再構築されること」で、もう一つ可能性は超人間主義(トランスヒューマニズム)などテクノロジーを歓迎する運動が従来の宗教と競い合うことだという。ロボットが意識を持つようになれば、自ら複数の教義を結び付けるかもしれず、宗教上のアイデンティティーに一石を投じることになるかもしれない。
トロバト氏は昨年2月にローマの宗教芸術展で、同年5月にはドイツ・ドルトムントの高齢者ケアに関する会議でSanTO(Sanctified Theomorphic Operator=神の姿をした神聖なオペレーター)を披露した。現在はペルーの首都リマで改良と試験を行っている。日本では、だるまをヒントに製作した「DarumaTO」のデモンストレーションを介護施設で行い、感想を求めた。イスラム教の指導者と相談してイスラム教徒向けのロボットの開発にも取り組んでいる。
経典の解釈には踏み込まず
ロボット工学の登場で宗教団体の倫理が問われている。対話型ロボットがさらに高度化し、主流になったとなればなおさらだ。ロボットは既に宗教に関する情報を提供したり、祈りの言葉を「唱え」たりすることができるが、これまでこうした役割は宗教指導者や信者が担っていた。
トロバト氏が宗教団体の高官に相談したところ、ロボットは経典の解釈に踏み込むべきではないとの忠告を受けたという。「(解釈には)人間的な要素があり、それは信仰を伝える上で非常に重要だと言われた」。同氏が開発したロボットは唱える内容をプログラムされているが、「適切な経典、聖書の中の適切な箇所を選ぶことさえ簡単にできることではない」という。同氏によると、科学者の中には宗教を役に立たないもの、あるいはタブーとみなす人もいて、否定的な意見は科学者から寄せられることが多いという。
宗教とロボットの一体化に取り組む人は他にもいる。テクノロジーを積極的に活用することで知られる北京の仏教寺院、龍泉寺は高さ60センチほどのロボット僧侶「Xian’er(シェンナー)」を配置した。モデルは同名の太った漫画キャラクターだ。シェンナーはお経を唱え、信仰に関する基本的な質問にも答える。インターネット上の動画やソーシャルメディアへの投稿を見ると、そのかわいらしい姿と、遊び心がありながらも思慮深い答えに引かれて好奇心旺盛な人々が寺院を訪れていることが分かる。