世界各国の言論の自由を監視する「国境なき記者団(RSF)」は22日、韓国与党・共に民主党が米ブルームバーグ通信の記者を実名で非難したことについて「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が公の場で共に民主党の論評を批判すべきだ」とする声明を発表した。この問題で沈黙を守っている文大統領に対し、言論の自由を守るために直接の行動を促した形だ。
これに先立ち名指しで批判されたブルームバーグ通信の記者は「文在寅大統領は金正恩(キム・ジョンウン)委員長の首席報道官」という内容の記事を書き、保守系野党・自由韓国党のナ・ギョンウォン院内代表が国会での演説でこれに触れた。すると共に民主党の李海植(イ・ヘシク)スポークスマンは13日「米国通信社の衣を着ながら国家元首を冒とくした『売国』に近い内容」などと非難した。また李スポークスマンは14日にも米ニューヨーク・タイムズ紙の駐在員に対し「黒い頭の外信記者」と呼んだ。これに対してソウル外信記者クラブ、アジア系米国人ジャーナリスト協会(AAJA)、国際新聞編集者協会(IPI)などが相次いで抗議の声明を発表していた。
国境なき記者団は22日(米国時間)に声明を発表し「政権与党に所属する李スポークスマンはブルームバーグ通信の記者を非難し、その次の日にも別の記者を攻撃した」とした上で「今回の問題は過去数十年にわたり繰り返されてきた言論弾圧から回復しつつある韓国でまた新たな大きな騒ぎを起こしたものだ」と指摘した。国境なき記者団はさらに「李スポークスマンは後に謝罪し記者の実名を削除したが、共に民主党の議長に相当する文大統領はこの問題でのコメントを拒否している」と批判した。
国境なき記者団は「かつての言論迫害の歴史から、韓国は文大統領の当選によって重要な転機を迎え、世界言論の自由指数も63位から43位に上がった」「かつて人権弁護士だった文大統領は『任期が終わるまでに韓国における言論の自由指数を30位まで高める』と約束していた」などとも指摘した。文大統領は昨年9月の「放送の日」における祝辞の中で、国境なき記者団が発表した言論の自由指数に言及し「放送の公正性と公益性を揺らぐことなく確立していきたい」と発言していた。
国境なき記者団はさらに「ところが文在寅政権は自分たちの過ちから何の影響も受けないようだ」とした上で、国境なき記者団アジア支部で支部長を務めるセドリック・アルビアニ氏が文大統領に対し、共に民主党の論評について公に批判し、言論の自由を完全に尊重するよう求めたことを明らかにした。また昨年、韓国統一部(省に相当)がかつて脱北者だった朝鮮日報のキム・ミョンソン記者に板門店での取材をさせなかった問題にも言及した。