提督の憂鬱 作:sognathus
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*終始男だけの会話です。
*BLじゃないよ!
中将『儂だ』
大佐「中将殿、お久しぶりです」
中将『おお!? その声、若造か!』
大佐「ええ、そうです。相変わらずその呼び方ですか」
中将『うははは! 儂とお前の仲だろ? お前も儂のことは昔の様に親父と呼んでくれ』
大佐「それは流石に......親父殿、では?」
中将『相変わらず堅苦しい奴だな。まぁいいよ、それで。で、何か頼み事か?』
大佐「お見通しですか。実は恥を忍んでお願いしたい事が――」
中将『なるほどな。夕雲はそっちに居たのか』
大佐「ええ、できましたら」
中将『ああ、いいぞ』
大佐「え?」
中将『夕雲の奴をお前の所に所属させたいんだろ? 識別番号とかの書き換えとかは全部こっちでやっておいてやる』
中将『勿論、調査報告書も解体処分に改ざんしておくから心配するな』
大佐「......話が早くて助かりますが、その......」
中将『調子が良すぎて逆に不安か? ははははは! まぁそうだろうな。』
大佐「何か理由が?」
中将『おう。その件だがな。投降してきた艦娘達から事情聴取をしてみりゃ、その殺された馬鹿野郎の、まぁ下衆なことよ!』
中将『証言だけだとちょい厳しかったとこだが、あいつら物証も自分自身を使ってまで証明しおったのよ』
大佐「では、もしかして結果報告の解体処分というのは......」
中将『嘘だ。情状酌量の余地十分に足るって元帥殿まで口添えしてくれてな! まぁ、報告書に関しては海軍としての体裁もあるからな』
大佐「では、解体されてないんですね」
中将『そうだ。皆こっちで面倒見ることになった』
大佐「そうですか。では、実際に処分されたのは現地で抵抗した艦娘だけだったんですね」
中将『いや、そいつらも生きてるぞ』
大佐「え?」
中将『うははははは! 柄にもなく間抜けな声を出しおるわ! そんなに驚いたか?』
大佐「それはもう......。では、その艦娘達はどうしたのですか?」
中将『儂が説得した』
大佐「は?」
中将『あのガキども、半人前の癖に儂ら鎮圧部隊を前にしてもいっちょまえに自分達の主張を一歩も譲らなくてな』
中将『怖くて震えてる癖に目に涙を貯めて逆に儂らを睨み返してきやがったのよ! その様に感心して儂は――』
大佐「説得を呼びかけた、と?」
中将『いや、直接説得しに行った』
大佐「......冗談ではないんでしょうね。丸腰で、ですか?」
中将『当たり前だろ! あそこで行かなければずっと後悔していたわ!』
大佐「興奮状態の艦娘相手によく丸腰で行きましたね」
中将『絶対に説き伏せる事ができると確信していたからな!』
大佐「......ふぅ。流石としか言えません」
中将『ははははは! そう褒めるな! 照れる!』
大佐「しかし安心しました。夕雲の奴は自分だけ生き残ったと思ってるので、自分だけ処分を免れる事にまだ抵抗を示していましたから」
中将『そうか。あいつらが言ってた通りに、真面目な奴だったんだな』
大佐「同僚たちはなんと?」
中将『皆口を揃えて夕雲だけは最後まで話し合いか本部へ直接訴えるべきだと皆に反論していた、と言っていたな』
大佐「そうですか」(夕雲が言っていた事は本当だったんだな)
中将『そういうわけだから、仲間の事は気にするなと言っておいてくれ』
大佐「分かりました。こちらの無理をお聞き届け頂き心から感謝致します」
中将『よせよせ! 気にするな、大した事はしてないわ!』
中将『じゃあ、もう用がないなら切るぞ。今度は電話じゃなくて手土産でも持って来い。久しぶりに酒を飲もうじゃないか!』
大佐「ええ。その時は是非」
中将『おう。それじゃあな!』
大佐「ええ、何れまた。親父殿もお達者で」
ガチャ
大佐(ふぅ......。親父殿には頭があがらないな。返せてない恩がまた増えてしまった)
提督「だが、あまりにも理想的な結果だ。夕雲の奴、喜ぶだろうな」
後にこの事を知った夕雲は大泣きして喜んだそうです。←それを書けよ!