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【暮らし】「働き方」関連法が施行 真の「年休5日取得」を長時間労働の規制を柱とする「働き方」関連法がきょう一日、施行された。目玉の一つが、年次有給休暇(年休)の消化だ。雇用主は年十日以上の年休が与えられている働き手に、最低五日は取らせることが義務付けられた。年休をいつ取るかは本来、働き手の希望によるが、会社独自の夏休みなどを年休に振り替え、消化させようとする企業も。職場の都合で日程を決められないよう、注意が必要だ。 (出口有紀) 「え? 国は五日間、休みを増やすと言っているのに、休みの日数が変わらない」。東海地方の社会福祉施設に勤める女性(34)は一月、全職員への説明会で施設長の話を聞き、驚いた。施設長は「夏の特別有給休暇を年休に振り替えさせてほしい」などと話した。 施設長が言う特別有給休暇とは、雇用主が働き手との雇用契約に基づいて設けている「法定外休暇」の一つ。企業によって休暇の名称や内容は異なる。女性の施設では毎年七月から八月、法定外休暇に当たる特別有給休暇を使い、職員が順に休みを取っている。 一方、年休は、労働基準法(労基法)で定められた「法定休暇」の一つ。入社後六カ月間で八割以上勤務すると年十日、働き続けると最大で二十日間、非正社員でも所定の労働日数に応じて与えられる。仕事を休んでも、給与が払われるのが特徴だ。原則、従業員が希望する日に取れ、会社側に理由を伝える必要もない。 関連法の施行で、最低で年五日の年休を取らせなければ、労基法違反として、経営者には働き手一人当たり、最大三十万円の罰金が科される可能性がある。こうした厳しい姿勢の背景にあるのは、海外と比べて低い日本企業の年休取得率だ。年休取得率は、与えられた日数のうち、従業員がどれだけの日数を取得したかを指し、厚生労働省の調査では二〇一七年度で約五割にとどまっている。 「既に休みだった日を年休に振り替えるのでは、休みを増やすことを目指す法の趣旨に合わない」。そう話すのは、労働問題に詳しく、ブラックバイト対策弁護団あいち事務局長も務める久野由詠(よしえ)弁護士(34)だ。こうしたやり方によって、労働者が権利として持っている年休の日数が減ることも問題。「仮に年休が十日あるとして、五日を会社側に指定されれば自由に使える休みが減る」と話す。 もう一つ、久野弁護士によると、これまで就業規則で休日としていた祝日などを労働日に変え、働き手に年休を使わせる方法もあるという。「これも休みは増えず、望ましくない」 知らぬ間に休みを消化したことにならないよう、働く側は勤務表や給料明細をしっかり見て、年休の残り日数を把握することが大事だ。自分の会社にはどんな休みがあるのか就業規則を確認することも役に立つ。その上で「労働者側が積極的に年休を取得すれば、会社側が『どうやって消化させようか』と頭を悩ませなくてもいい。一年の後半ほど希望者が集中し、思い通りに取れなくなる可能性もある」と説明。「早いうちから休みの計画を立ててはどうか」と提案する。 一方、中小を中心に企業の人手不足は深刻で、法の施行と合わせ、国として働き手が休みを取りやすい仕組みづくりを進めることも不可欠だ。特に福祉の現場は慢性的に人が足りない。女性が働く福祉施設の職員たちも「年休を、今ある休日に振り替えたいという経営者の考え方は分からなくもない」とした上で、「国には利用者数に対する職員の配置基準を見直してほしい」と話す。久野弁護士は「年休消化の実現には、大企業と中小企業で差が出るのでは」と懸念している。
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