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1979年、みんなが見ていた「あのテレビ番組」のすごさを語ろう

あの頃、テレビは王様だった

日本でテレビ放送が開始されて66年が経った。映像技術は進歩したが、現在の番組と40年前の番組、どちらが視聴者を熱狂させていたかと言えば、後者に軍配が上がる。それはもう、圧倒的に。

紅白にはひばりとサザン

1979年はテレビ番組がもっとも輝いていた年だと言える。

'79年のゴールデンタイムの総世帯視聴率(テレビをつけていた世帯の割合)は、77.8%だった。これは史上最高の数字である('17年は60.5%で史上最低を記録)。

「カラーテレビがほぼ100%普及していた一方で、家庭用のビデオテープレコーダーが広く普及するのは'80年代半ばから。そのため、'79年はみんながテレビの前に集まり、同じ番組をリアルタイムで見ていた特別な時期でした」(メディア史に詳しい関西大学社会学部教授の小川博司氏)

レンタルビデオもカラオケボックスもない時代。テレビは娯楽の王様であり、当時を振り返れば、青春の思い出はテレビ番組とともにあった。

最終ページの各視聴率ランキングを見てほしい。超人気番組がズラリと並ぶうえ、現在では考えられない視聴率の高さに驚いてしまう。'79年に放送された全番組のなかでトップは、『NHK紅白歌合戦』。視聴率はなんと77.0%だ。

テレビ番組の歴史を研究する社会学者の太田省一氏が解説する。

「この年の紅白は、ちょうど30回目の節目にあたり、美空ひばりと藤山一郎が特別出演で復帰しました。7年ぶりの出場となったひばりが披露した『ひばりのマドロスさん』『リンゴ追分』『人生一路』のメドレーが何といっても最大の見せ場でしたね。

ひばりにとって、これが最後の紅白となります。『しなやかに歌って』を歌った山口百恵も翌年11月に三浦友和と結婚して芸能界を引退しますので、'79年が最後の紅白出演です。

一方、前年にデビューしたサザンオールスターズが『いとしのエリー』で初出場しています。昭和を代表する新旧のアーティストが共演した特別な紅白歌合戦でした」

 

レコ大の秀樹に感激!

『輝く!日本レコード大賞』は、桑江知子が『私のハートはストップモーション』で最優秀新人賞、ジュディ・オングが『魅せられて』で大賞を獲得した。

視聴率は43.3%('18年は16.7%)。このとき大本命と言われながら、大賞を逃した西城秀樹が、号泣するジュディをエスコートして壇上にあがる姿を覚えている人は多いことだろう。

'79年7月にはソニーから「ウォークマン」が発売され、流行歌はより身近になった。そんななかで、音楽ランキング番組『ザ・ベストテン』が若者たちの心を掴んだ。

「同じ歌手が何週も連続して出演するわけですが、毎回趣向を変えた演出で歌う。次はどんな格好で出てくるのか、こちらはテレビの前で正座して待ったもの。音楽をテーマにした報道番組だったんですよね。ありのままを伝えた。

ランクインしてもレコーディング中だから出られないなど、歌手が番組に出ない理由も正直に放送する。だから番組が信頼されたし、支持を得ました」(小川氏)