yumeshima2711

 11月4日の大阪府議会において、『「2025日本万国博覧会」の大阪誘致に対する決議』が賛成多数で可決された。後に決議文を添付しておくが、大阪府民にとっては未だピンとこない2025年の大阪万博という夢物語についての思いが詰まった内容になっているのではないかと推察する。
私自身もこの決議に対して賛同する立場であるということを先ず表明させて頂きつつ、現状と課題について何点かおさえておきたい。

 まず、決議文の表題に「2025日本万国博覧会」と記させてあることからも分かるように、今回、大阪が誘致を進める万博は、国(政府)が主体的に動く必要があるものである。ウィキペデイアを見てみると、「国際博覧会条約に基づく博覧会を行うには開催を希望する政府が博覧会国際事務局(BIE)に申請(立候補)し、総会で承認される必要がある。」という事である。万博には様々な種類があるが、21世紀に入り5年ごとに開催される登録博(日本においては、2005年における愛・地球博)を今回目指すことになる。

 正直、今の大阪に万博なるものが必要なのか?という率直な問いかけに対しては、NOではないかと考える。国や経済界も巻き込んで膨大な費用がかかるのに対して、どれだけの経済効果や社会的効果があるのか?数字で一定示されるものはあるものの、ストンと落ちるものではない。「やってみないと分からない」が「やってみる価値はある」という論法で進めるものではない。
 しかしながら、「2025年日本万国博覧会」基本構想(素案)に示されているテーマとして設定された「人類の健康・長寿への挑戦」は非常に尊いテーマであると考える。これまでの万博からイメージされるものから一方未来志向の新しい提案ができるのであれば、それは大阪・日本にとってはもとより、世界にとって有意義である。大阪府民によって選ばれた首長が万博誘致を目指す意思を示され、そして経済界も概ね同意をし、政府も推進する方向であるとするならば、国・自治体・経済界の連携によって、あるべき方向性を模索する価値はあるという結論に達する。

 一番の問題は費用である。国も大阪府も、そして開催地とされる夢洲のある大阪市においても財政的に豊かな状況ではない。嘗ての大阪万博の時の様な、右肩上がりの高度経済成長期ではないし、セントレアの開業など勢いをもった愛・地球博の愛知県の状況とは大きく異なる。

 開催地としての夢洲の選定についても、不透明な感は払拭できていない。先の大阪市会における一般質問によって有本議員から質問があった部分でもあるが、今現在、「多くの人が行き来する状況が無い場所」「将来的な街づくりば未定である場所」に万博を誘致する事には、本来は大きなリスクがあるはずである。
 夢洲については、IR(統合型リゾート)の誘致も松井知事・前橋下市長が標榜してきただけに、大阪市の財政負担に黒い影が見えるような気がする。これまでIR誘致にあたっては、夢洲までの交通アクセスなどインフラをIR事業者に負担させる旨を明言してきた前橋下市長であるが、万博誘致にあたって地下鉄中央線を夢洲に延伸することが盛り込まれ、これは行政負担となる。話が変わってきている。
 また、IRについては、当初90haを予定していたものが70haに減らされている。万博用地として100haを確保する事によるものだそうだ。そもそも夢洲は、埋め立て地であり、埋め立て会計では埋め立て費用は用地を分譲することによって回収するスキームとなっている。万博誘致が決まれば、本来、浚渫(海を掘り返した)土砂や廃棄物で埋め立てるところを別途の土を用意して計画前倒しで埋め立てることとなる。埋めて整地する準備にも、開催後の土地活用においても新たな費用がかかることが想定される。
 万博用地の跡地は、嘗ての大阪万博で想像される様に、公園などとして利用される事が少なくない。しかしながら、当初民間に分譲することを予定していた土地を公園にしたのでは財を生むことはない。一方、IR事業者にとっては、本来90haの中にリゾート地として公園などの緑地帯を整備することを考えているであろうから、20ha面積が減ったとしても、公共において隣接地において緑地帯が整備されるとすれば、費用負担維持管理購入費用が減じられるという事になる。

・・・ただ、これらもコレからの議論。~のハズである。もしも、事前にIRを想定してIR事業者の負担軽減のための大阪万博誘致なのであるとすれば、論点は全く別の所に移る事になる。

 先日、介護ロボットの展示会に行った。西欧諸国に比較して、日本では後れをとってる旨を聞かせて頂いた。日本も超高齢化、人口減少時代を迎えている。その上で、如何に健康で年月を重ねることができるのかという課題は非常に重要で、健康寿命を延ばしていく取組みは、民間でも行政でも更に力を入れていかなければならない。
 万博という手法については、先述の疑問があるものの、新たな手法によって大阪初で日本の技術力をもって如何に長寿社会を作り上げていけるのかという発信ができるのであれば、そこには光を見出すことができるのではないかと考える。

 2025年の万博については、パリも開催意思を示しており、有力であるという話もある。大阪の案を受けて、今度は政府が費用負担なども含めて、国としての取り組みを明確にしていかなければならない。


 


「2025日本万国博覧会」の大阪誘致に対する決議

 大阪・関西は、ライフサイエンス分野において、世界をリードする大学、企業、研究機関が集積しているとともに、ヘルスケア、スポーツ、食、笑い、エンターテイメント、さらには世界に通用するものづくり技術に至るまで、様々な産業が集積しており、人類の健康に大きく貢献する技術と成果を生み出してきた。
 これらの強みを有する大阪において、「健康・長寿」をテーマとする国際博覧会を開催することは、世界中のあらゆる年齢のすべての人々が、健康に係る様々な課題を克服し、より良い生活を送るための方策を大阪から世界に向けて発信できるまたとない機会である。
 また、新たな観光や産業のイノベーションが期待できるなど、大きな経済効果をもたらすとともに、全世界に向けて大阪、関西の存在感を示す絶好の機会にもなり、府民の健康増進や府域全体の地域振興にも寄与するなど、都市の活性化、府民生活の向上も期待できる。
 国際博覧会は、人類が抱える地球的規模の課題に対し、世界からの知恵を一同に集めることで、解決方策を提言する場であり、新しい時代を生きる知恵を広く発信することにより、世界と日本の平和的発展に大きく寄与することが期待されており、古くから、人々の叡智により新たな技術を生み出し、文化・産業の両面から国内外をリードしてきた大阪から、世界中の人々の健康に係る様々な課題を克服し、人類の未来に向けてより良い生活を送ることができる新しいモデルを提案し、広く世界に発信することは、大変意義があることである。
 2025(平成37)年が「元気な都市の世界モデル」のスタートとなるべく、現在、大阪府において、「いのち」や「より良く生きる」という人類の根源的な問題を考え、次世代につなげていく万博の開催を目指し、「人類の健康・長寿への挑戦」をテーマとした基本構想を取りまとめたところであるが、人類社会の発展に貢献する「新たな国際博覧会」のあり方を示すためにも適正な開催経費の下に実施することが大切である。
 あわせて、国際博覧会の理念とその成果が次世代への明るいメッセージとなり、大阪・関西ひいては日本のさらなる発展につなげていくためには、言うまでもなく、国、経済界、地元自治体の役割を明確にし、効率的に準備を進めていくことも重要である。
 ここに、大阪府議会は、2025(平成37)年の国際博覧会の大阪誘致の実現に向け、全力で取り組むとともに、政府に対し、博覧会国際事務局(BIE)の開催申請に向けた必要な調査を早急に実施し、閣議了解を行うよう強く求めるものである。

 以上、決議する。

平成28年11月4日