エピローグ:回復術士は微笑む
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目が覚めたのは見知らぬ部屋だった。
豪華な部屋で清潔なベッドに横たわっている。
「ここはどこだ」
頭痛がひどい。
その痛みに耐えながら記憶を呼び起こす。
たしか、俺はブレットを倒すために、限界を超えた【
時間回帰の力。
それは対象を世界ではなく個人に狭めたとしても、人の手には余る代物だ。
その反動で倒れた。
物音がする。
そちらに目を向けるとセツナがタオルと水を張った桶を持ってきてくれていた。
「ケアルガ様、起きた。良かった!」
セツナが手に持ったものを放り投げて抱きついてくる。
狼尻尾がぶるんぶるんと揺れていて可愛らしい。
「……ここはどこだ。あれからどうなった?」
「ここはグランツバッハのお城。あのあと、黒い化物がめちゃくちゃに暴れだした。それでみんなでお城に籠城した。精鋭部隊のみんなもみんなお城にいる」
「なるほど。黒い化物を制御できるのはブレットだけで指揮官を失って暴走したか」
あの少年天使たちも指揮権を持っていたのだろうが、そっちは先に皆殺しにしている。
ブレットを倒した瞬間、城中から黒い力が消えていくのを感じたが、おそらくは奴が化物を制御するためのバイパスみたいなものが貫かれていたのだったのか。
「ん、共食いとかも始めてる。お城の奥のほうにいたら、こっちまでほとんどこない。食料も倉庫にいっぱいあって、今の所困ってない」
事情はわかった。
ブレットが倒れても、綺麗さっぱりすべての黒い化物が消えるわけじゃなかったようだ。
それも当然か、俺が巻き戻したのはブレットだけ。
都合よく、他の連中までが巻き戻されるわけじゃない。
「その割にはだいぶ静かだな。数を減らしたのか」
「んっ、みんなで交代しながら戦って数を減らしてる。もうすぐお城の敷地にいる奴らは全滅する。もう黒い化物は増えなくなってるから、殺しただけ減る」
「そうか」
理性を失って暴れるだけなら、そうなるのだろう。
この戦争はこれで終わりだ。
「俺はどれぐらい眠っていた」
「五日。ずっと起きなくて心配していた。セツナもみんなも。もう少ししたらケアルガ様が起きたこと、みんなに伝えにいく」
五日もか。
その割には身体は清潔で、腹も減ってない。
セツナが甲斐甲斐しく世話をしてくれたのだろう。筋力だけは落ちているので、【
「少ししたら? すぐに行かなくていいのか」
「一番最初に気づいた役得。ちょっとだけケアルガ様を独り占め」
かわいいことを言ってくれる。
俺はセツナを抱き寄せ口づけをする。
そうしながら、服を脱がしていく。
「んっ、ケアルガ様ぁ、いきなり」
「嫌か?」
「ううん、嬉しい。でも、起きたばっかりで心配」
「大丈夫なところを見せてやる」
下腹部が熱い。
五日も眠っていたのだから、五日分溜まっているのは当たり前か。
なら、さきにスッキリさせてもらおうか。
◇
セツナを可愛がった。
その後、少し休憩してからセツナがみんなを呼びに行く。
俺の前には、俺の女たちが全員無事で揃っている。
「おはよう御座います。やっと起きてくれたんですね」
「心配していたのよ。命に別状はないことはわかっていたけど、魔術の反作用だから」
「でも、起きてくれて何よりだね。これで、帰れるよ」
それぞれに俺のことを心配してくれていて嬉しい。
彼女も無事で安心した。
「ジオラル王国の情報は掴んでいるか?」
「ええ、ケアルガが倒れてすぐに勝利したことと、こちらの状況を伝えるために、飛行機で私とフレイアでジオラル王国へ行ってきたわ。王都は陥落したわ。王城は跡形もなくなっていたわね」
「そうか……予定通りだな」
「ええ、エレンの策通りよ。城に可能な限り敵を呼び込んで爆破。それを目くらましにして無事脱出。エレンは別に用意していた第二本部で、後始末をしてくれているところよ」
ジオラル王国が襲われるのは想定済だった。
なにせ、戦力のほとんどを吐き出す。そこをブレットが見逃してくれるはずがない。
だから、城そのものを囮にする策と、王都が陥落してもジオラル王国の機能を停止しない策を用意していたのだ。
あまりにもエレンの予想通りにことが運び、改めてエレンの能力の高さに驚く。
「安心したよ。俺の女が全員無事でな。誰一人欠けてほしくなかった」
俺がそう言うと、みんなの様子がおかしくなった。
ほんのり頬を染めて、どこかぼうっとしている。
「どうかしたか?」
「ん。今の笑顔、優しくて驚いた」
「はい、いつものお顔も素敵でしたが、でも、今までと全然違って」
「そうね。つきものが落ちたというか、すごく自然で、温かい感じがするの」
「うん、その笑顔はとっても素敵だよ。これを見られなかったなんて、エレンが可愛そうだね」
優しい、暖かい、自然。
今の笑顔はそう見えるのか。
それはきっと、やっと素の自分に戻れたからだろう。
今の俺は、本音がそのまま出ている。
繕いも、飾りもしない。
そんな俺だ。
「なら、俺はずっと、こんな俺でいよう。もう、これ以上無理する必要もないしな」
強い自分を演じる必要はない。復讐相手はすべて倒したから。
無理に好かれようとする必要はない。俺の女たちが、そのままの俺を好きだと言ってくれるから。
俺はこれからは、ただのケアルガとして振る舞おう。
◇
それから、俺が眠っている間のことを改めて色々と聞いた。
黒い化物のその後、周辺諸国の状況、ジオラル王国のこと、エレンのこと。
ブレットを討ち取り捕虜にしたことは、全世界に徐々に広まっているらしい。
ただ、黒い化物は統制がなくなり脅威は減ったものの、依然として各地で暴れている。
これらは全世界が協力して駆逐していかなければならない。
また、国によってはグランツバッハ帝国に賠償金を要求すると息巻いているが、現実的ではない。
なにせ、ブレット以外はすでに死んでいるか化物になっているか、逃げている。
一応、黒い化物を駆逐し終われば、いろいろと彼らの置き忘れをかっぱらえるだろうが、それがせいぜいだ。
「肝心なことを聞き忘れていた。ブレットはどうした?」
「安心してください。四肢をケアルガ様でもなければ治せないように壊して、グレンちゃんに黒い力を拒絶する印をたくさん肉に刻んでもらいました。その上で牢獄にいれてます。ジオラル王国、魔族領域、それぞれの中でもトップクラスの戦士が常に見張ってます」
「なかなかの念のいれようだ」
「……それだけやってもまだ怖いです。ケアルガ様の望みがなければ殺していました」
「ああ、良い判断だ。よくやってくれた」
ブレットの相手をする場合、いくら念を入れても入れたりない。
殺すのが一番いいというのは賛成するが、俺の復讐が終わってからだ。
「とにかく、一度エレンのところへ行こう。エレンを可愛がってやりたい。今回の件で一番の功労者だしな」
みんな、それに反論はしない。
エレンの軍略がなければ、そうそうに終わっていただろう。
「まっ、待つの、グレンが、一番がんばってるの……ばたっ」
ドアの隙間から子ぎつねが入ってきて、よろよろ歩きで部屋の中央へ、そしてわざとらしくバタッと言って倒れた。
「ああ、お花畑が見えるの……働きすぎて倒れたグレンを、天使が迎えにきたの……ブラック職場なの、使い魔虐待なの、過労死なの……可哀想なグレンなの」
そして、目をつぶる。
しばらく放っておくと、ちらちらと薄目でこちらを見てくる。
この茶番に付き合わないといけないのか。
「ケアルガ様。グレンはこの五日、すごく頑張ってくれた」
意外にも助け船を出したのはセツナだ。
「クレハとフレイアがジオラル王国へ行ってた間、籠城できたのはグレンが頑張ってくれたから」
「そうなの! いたわるの! ここ数日、モブたちの剣に浄化の炎を注ぎつづけたの。朝から晩までずっとなの!」
ただ暴れるだけとなった今でも黒い化物は脅威だ。
そんな中、クレハとフレイアという主力を欠いて、持ちこたえられたのはグレンの頑張りによるところが非常に大きいのだろう。
「お疲れ様、戻ったら、一番いい肉をおまえが限界って言うまで食わせてやる」
子ぎつねが飛び起き、膝に乗ってくる。
それから、顔をすりすり。ういやつめ。
「約束なの。それからグレンを可愛がるの。あの気持ちいいの、久しぶりにしたいの」
それもいいだろう。
セツナを抱いたが、まだまだ俺のは収まっていない。
「ああ、いいな。そっちは今から可愛がってやる」
「やー♪ グレン、気持ちいいの好きなの」
膝の上に乗ったまま子ぎつねが美少女形態になり、抱きついて、いろんなものを擦り付けてくる。
グレンは発情期なのかもしれない。
「ああ、ずるいです。私もずっと我慢してたのに」
「そうね、私も我慢の限界だったわ」
「恋人より先になんてだめだよ!」
「セツナはさっきしてもらったけど、おかわり」
俺の女たちがベッドの上に飛び乗り、服を脱ぐ。
なかなかの絶景だ。
病み上がりだが、体力は十分。
存分に楽しもう。
帰還するのはその後だ。復讐のフィナーレも。
エレンのことだ。ブレットを痛めつけるために依頼していた下準備は終わっているだろう。
今はただ、女たちと楽しむ。
……そして、帰還して復讐が終われば、しばらく平和というものを楽しもう。
愛しい女たちと自由気ままに過ごす。
そんな、甘くて優しい日々も悪くない。
復讐のあとにも人生は続く。復讐は楽しかった。だからこそ、次の楽しさと幸せを見つけて、俺はこの世界を満喫するのだ。
本日で八章が終了です! ここまで読んで「面白い」「続きが気になる」と思っていただければ画面下部から評価していただけると幸いです!
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