この連載では、「世の中」の諸地域の猫事情をご紹介! 猫や動物が大好きな方、猫と暮らしている方はぜひご覧ください。
筆者と愛猫ミルテのオランダねこ暮らしも毎月お届けします♪
2007年のある日、ロンドンに住むストリートミュージシャンのジェームスさんは、
アパートの踊り場で茶トラの雄猫に出会いました。
猫はどうやら野良猫か捨て猫で、しかも、けがをしているようでした。
当時のジェームスさんは、薬物に溺れる生活からようやく脱し、更正への道を歩み出したところでした。
ほんとうは自分の生活だけで精一杯だったジェームスさんでしたが、傷ついた茶トラ猫をどうにも放っておくことができず、結局獣医に連れて行き世話をしました。
けがが治るまでと思っていた茶トラ猫とジェームスさんとの生活は、結局その後も続いていくことになります。
ボブと名づけられた茶トラ猫は、毎日ジェームスさんと一緒にバスに乗って「出勤」し、
ロンドンのかの有名な広場、コヴェントガーデンで日銭を稼ぎながら過ごすようになりました。
そのようすはしだいに通行人の間で話題となり、ボブは人気者になりました。
とある文芸エージェントのすすめにより、
ジェームスさんは、自分の生い立ちやドラッグ中毒者だったこと、
ボブとの出会いとその後の生活を本に著わしました。
それがロンドンで出版されたのは2012年の初めです。
同年秋にはオランダ語翻訳バージョンが出ており、
オランダ語翻訳者の私はそちらを先に読みました。
おそらく日本語でもいずれ出版されることと思いますが、
原書にご興味のある方は、以下の英国のアマゾンのページにて
本文の一部を読むことができます。
http://www.amazon.co.uk/dp/1444737112
(「立ち読み」部分を表示するには、表紙をクリックし矢印をフォロー)
Youtubeでは、英国のモーニングショーに出演したジェームスさんとボブを見ることができます。
途中何度か(たとえば1分19秒あたり) 、ジェームスさんの映し出されたその画面の下に「元ホームレス、ヘロイン中毒者」というキャプションが入るところがなんともオープンな感じがしますが、実際ジェームスさんは、自分やボブのこと、そしてこのボブという猫が自分の人生に劇的な変化をもたらしたことを率直に語っています。
たった一匹の猫が大のおとなの人生を一転させることもある、
その生き証人がロンドンにも確実に1人存在しているというわけですね。
それでも、と私は思います。
ジェームスさんご自身に人生を見つめなおす気持ちがなければ、また、傷ついた猫を見てもなにも感じないような人物ならば、このような展開にはならなかったのではないでしょうか。
物語を紡ぐもの、それは、さまざまな思い、そしてめぐり合わせの織りなす業(わざ)なのかもしれません。
はじめまして。よろしくね♪
國森由美子のブログ「オランダなんでもメモ」
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