私が入りたかったのはホグワーツなんだけど   作:栄照(Red Purge)
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ざつです。課題やります。


3話

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目の前の般若の形相(というより兵藤会長)の女性から目を外し、改めて『乙川呉服店』の店内を見渡す。

屋根瓦はそこら中に落ちているが私の布団の周辺だけ何も落ちていない。瓦礫を退かしたような跡が見える。

向こうに見えるミシンは素人目でも壊れているとわかる。

ん〜?

 

「えぇっと、すみません…」

 

「如何されました?」

 

「アナタのお名前は」

 

私の言葉に、『あ 』と声をあげる女性。名乗ったら名乗り返すのが普通だろ!(イキリ)

 

「そういえば名乗っていませんでしたね…」

 

そう言って女性は私が寝ていた掛け布団を吹っ飛ばした。綺麗に畳みながら彼女は名乗り上げる。

 

「私は ちょうば せいら …蝶の羽と、清いと良くするで蝶羽 清良です。ここの店の居候です」

 

和服に割烹着(?)を着た彼女がこちらを向いた。

 

穴が空いた天井から光が漏れて彼女の顔がはっきりと見える。顔立ちが整っている。琥珀色の透き通った瞳は(先程の彼女の表情からは想像できないが)とても綺麗だ。黒髪を肩につくまで伸ばした彼女は例えるなら、彫刻というよりも日本画から出てきたような美しさだ。

 

こんな綺麗な女の人… 私はなんとなしに先程の言葉を思い出す。『アナタが払うまでずっと』…これがもし私が男であったら今頃小躍りしてたと思う。

 

…え?年上の友達かお姉さんみたいな女性がついてきてくれるんでしょう?…碌な友達居なかったんです。悪いですか?

 

「…ちょっと蓬乃さん」

 

「何か?」

 

「何か、私の顔に付いてますか?そんなにジロジロ見て」

 

迷惑そうに眉を寄せる彼女に『瞳が綺麗だったので』と言ってみた。

 

「き、綺麗⁉︎」

 

清良さんは日本人としては白い肌を赤く染めた。照れているようだ。分かりやすいし、身振り手振りが大げさだ。

 

「す、すみませんっ、少しお待ちくださいっ!」

 

そう言って、清良さんは(壊れていない)店の奥へ入っていった。

…やることがない。どうしようか…お金、40万、ねえ。少しでも値引き。いやでも、壊してしまったのは確かだし。

出会って最初に請求された40万を自分的にはどうにか誤魔化したいところ。ん〜。

 

「取り敢えず、魔法で本当に治らないか確かめてみようかな」

 

私の知っている範囲では、日本の魔法で3つ、英国式の魔法で『レバロ』…いや『レパロ』が有ったはず。

彼女の言っていた『粉々になって元に戻らない』はなんの魔法を掛けたときのものだろうか。いろんな魔法があるからできないことはないはずだ。

日本の魔法では物の力を借りて魔法を使うことがある。

その一つ『んンなぼし』は物の、力が加わっていた、状態が保たれていた時を魔法で調べてくっつけていく。欠点は時間が経ったら使えないこと。逆に時間が許す範囲ならマシンガンでも核攻撃を受けても直せる。

 

もう一つ『しゅぶくじだなえ』なら少し過去の時間でも出来るが、具体的な形を思い出さないといけない。建物ならねじの位置から玄関の扉の木目まで思い出さないと悲惨なことになる。

 

最後の一つ「継ぎ目で治す魔法」。これは名前が無い…多分名前をつけるまでも無い魔法だ。はっきり言って真毫(マグル)でもできるかも…私は三歳の時から使えた(隙自語)魔法だ。ただ、欠点もある。

例えば一回の衝撃で割れた花瓶は直せるが、その後に踏んでしまったりしたら直らないのだ。

 

色々考えたが、『粉々になって直らない』だったら最後の魔法だろうか。

 

「色々考えたけど、レパロでいいんじゃ無いかな」

 

レパロは英国式魔法の代表格だけど日本では全く馴染みが無い。けれど、私はこの魔法は結構好きだ。発音もなんかカッコいいし。欠点も『液体は戻らない』くらいだし。

 

「まあ、試してみよう。私の荷物は…」

 

布団から起き上がって荷物を探す。

 

「あ」

 

瓦礫の一番上に教科書が散乱している…。と言うことは…。

 

「つ、杖は無事でしょうか」

 

杖…杖、あ。

 

「あった。良し『レパロ』!」

 

私が、指揮棒の様に杖を振り上げると店のものが一斉に動き出す。この魔法は掛けた時に麦、や作物の畑に風が吹く様な音が聞こえる。

 

…やがて、魔法の効果が終わり店はすっかり元に戻った。

 

「よかった、これで40万は払わなくて良さそうですね」

 

「お待たせしました。…え、な、直ってる⁉︎」

 

戻ってきた清良さんが驚きの声をあげる。…ん?なんか様子が…

 

「しょ、食費が…」

 

「え、食費?」

 

「直っちゃった!40万あったら3年はたべれると思ったのに!」

 

座り込んで頭を抱え泣き始める大人の女性を見て、『貴重なシーンだな』と思ってしまった私は多分末期。

 

我にかえって清良さんをなぐさめる。

 

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「つまり、貴方はお金を請求してこっそり自分で直そうとしていたんですか?」

 

「はい…」

 

話をまとめていうならば、諸々の修理費を誤魔化して食費を得ようとしていたようだった。

 

「…怒ってます?」

 

と、上目遣いで聞いてくる彼女は完全に策士。通報でもしようかと考えていたが、やめておこう…と思わせる様なかわいさがある。

 

「怒ってません」

 

しょんぼりしている彼女をみてなんかこっちが悪いことしている気がしてきた。可愛い、美しいっていうのはずるい。胸がジクジクする。

なんか、笑わせたくなってきた。

 

「えいえい、おこった?(cv えばら まさし)」

 

「何ですかそれ」

 

…通じない。悲しみ。うーん、他の手段。どうにか彼女にお腹いっぱいのご飯を…。

 

 

「…(可哀想だし)いくつか服をここで買いたいのですが、良いですか?」

 

「お買い物…、ショクヒ?…はい、何か?」

 

「ここ、衣類の店ですよね。修練科用の服、1型と2型それぞれ下さい」

 

「1型…ちょっとお待ちください」

 

暫くして、彼女の腕には1型、2型それぞれ2着ずつが

 

「蓬乃さん。一応目視でサイズ測っておきました。試着して下さい」

 

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「目視」

 

「はい、目視です」

 

「ぴったりなんだけど」

 

「プロですから」

 

胸をはる彼女、二つの大きなものが跳ねる…何とは言わないよ?

 

1型、学校での礼服であるホグワーツ風制服とローブを着た私は戦慄した。と、いうのも私が着ていたのは体の線が出にくい和服。全くない(ないとは言っていない)胸をサラシで巻いていたにも関わらず、だ。

 

「まさか…寝ている間に私を丸裸に…」

 

「してません」

 

そして、もう一つの2型、日本の行事用の和服一式もちょうど良いものだった。おまけに私が見たことない様な綺麗な生地だ。お金が無いって本当かな?

 

「有り難う。取り敢えず。お会計をお願いしようかな」

 

「1と2の合計で…70000賤です」

 

「…え?」

 

「70000賤です」

 

安い。安すぎる。

 

「150000賤」

 

「え?」

 

「150000賤払いますから、美味しいものいっぱい食べてください」

 

私が払えるギリギリの金額。けれど、これでも市場の価格より安い。大体1型は90000賤。2型の最安値は大体70000賤…。なぜ合計で70000賤なんかで売っているんだ?

 

「…こんなにもらって良いのですか?」

 

「むしろこれでも適正価格より安いくらいですけど」

 

「え、そうなの?」

 

「」

 

どうやら、知らなかった様だ。…なんで今まで生きてこれたんだろう?

 

 

 

 

 

 

あれから何度も色々な商品の適正価格を教えたりして『ありがとうございます』なんて言われて私はなんか良いことした気分になっていた。が、気がつけばもう夜だ。

真っ暗になった 通りに出て、別れの挨拶をする。

 

「夜も遅いですし、命の恩人さんには私の魔法具をあげます」

 

「これは?」

 

「ベトナムの魔法具、です。見た目はノンラーって言う帽子を模していて被ると好きなとこに行けます」

 

「いや、だけど私、転移魔法使えま…」

 

「人 の 家 に 突 っ 込 ま な い 様 に 、です」

 

「アッハイ」

 

ノンラーとか言う帽子を被り、私の家を思い浮かべた。

帽子が音を立てて振動を始める。

清良さんが最後に、とあることを言った。

 

「では蓬乃…いいえ、蓬ちゃん。また今度」

 

「え?また今度って?ふぁ!」

 

清良さんの笑みを見たところで視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応ここら辺でこの作品の予定を書いておきます。
この作品は6章に分かれておりまして、現在1章『少女と羸弱な鬼』でございます。1章だけは死んでも描き切りたい。
2章〜6章も一応構想はあります。
(そこまで続くかは知りませんが…)

あ、あと感想ください。(乾燥乞食)


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