私が入りたかったのはホグワーツなんだけど 作:栄照(Red Purge)
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書店で赤い唐傘を借りた私は雨の街を歩いている。この雨のせいで人はほどんど何処かの店に入るか、魔法を使い家へ帰るかしたのだろう。ほとんど人はいない。私が今歩いている直線の大通りも人影はない。
「…ん、重い…」
多くの教科書類はギリギリまで詰めてリュックサックに入れたが、ひょっとしたら水が染みているかもしれない。魔法を掛ければ折れ曲がった教科書本体はどうにかなるが滲んだ文字はそのままになってしまう。
しかし、濡れないよう急ぐにしても下は川のようになっていて早足で歩けない。
(転移魔法を使っちゃおうよ。)
と、悪魔(≠デビルマン)の声が囁く。法令だと公共の場での未成年の魔法の利用は教育機関か、保護者同伴で可能であるが、はっきりいってチェック機能がまともに働いていない。けれども、誰かに見られたら一発アウト、終了 DA。
「しかし、せにはらはかえられません」
着込んでいるとは言え着物は寒い。それに…と下を恐る恐る見てみる。
「…うわぁ」
泥が袴の裾についていた。色が色なので結構目立つ。人は居ないが、自分的には凄く嫌だ。早いとこ家に帰ってクリーニングに出したい。どっかで隠れてパーっと出来ないか…。
「あ」
なんてことない家と家の間の隙間。不意に左を向いて、私の視線はそこに吸い寄せられた。
大人が入れないが子供はギリギリ体を横にして入れる。苔が生えていて、人が通った跡が見られない。
傘を閉じて隙間へ入って行く。先程までぬかるんでいた足元は苔のおかげであっさりと進める。
「ここら辺は、まだ大通りから見えますね…」
正面の建物と顔の距離は消しゴム一個分くらい。外装のトタンに息がかかる。結構進んだと思ったがまだ見えそうだ。
どんどん奥へ進むにつれ大通りから光が届かなくなっていく。もういいだろう、と立ち止まりリュックの水筒ホルダーに入れておいた杖を取り出そうとする。しかし、狭いところでの作業に手間取って思うようにいかない。リュックを下ろせないが、腕も回らず、届きそうになっても杖は逃げてしまう。
「んー、うっ…」
あとすこし…
「っ!やった!」
ようやく掴み取って思わず顔が弛む。そしてそのままの勢いで呪文を唱える。
「わえをぐしゆきたまへ!」
少し季節外れの若草の匂いがして目の前が真っ暗になる。
決まった。これで家の玄関の前にいるはずだ。
頭と背中が一緒になるようなこの魔法独特の感覚を感じた後、目を開ける。
「…え?」
目を開けると何処までも広がる青空に真夏のような太陽が
私の足は、体は宙を浮き。
体は自由に動かず宙は遠ざかって風の音…
「…ん?」
「大丈夫ですか?」
「え?何が…ったぁ!」
痛い。
頭のテッペンが押し込まれるような痛み。
腕を重機で押しつぶされるような痛覚。
心臓は焼かれたように熱い。
思わず目を瞑る。
「あ゛、い゛た゛ぁ゛ぁっぁ!!」
「あっ、少し待って!」
遠くからこえがきじょえたがなにをいっているkあ゛
「い゛ぐぁ゛……ごえ゛んな゛さい…ごえ゛んな゛ざび…痛い゛!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い桶い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い彝い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいぬいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいいたいたいいたいたいいたい
「〜〜〜まえ!」
「いたい!っはぁ…」
体から痛みが逃げていく。目を開くと背の高い女性が心配そうに私を見ている。
徐々に周りの景色が見えてきた。
「え?ココドコ?廃屋?」
廃屋 という言葉に女性の柔らかな笑みが固まった。
「は、はいおく…どちら様ですか?」
「へっ?」
「お名前は…」
「蓬乃 あん です」
「ご職業は…」
「学生です」
「上から順に大きさを…」
「なんでやねん」
「住所は…」
「いや…ココドコですか?」
目の前の女性は、大きく目を見開くと はぁ と大きく溜息をついた。
「ここは私のお店、乙川呉服店ですよ不法侵入者さん?」
へ?ハイオクジャナイノ?
「その様子だと、わざとでは無さそうですが…壊れた分は払ってもらいますよ」
「えっ」
「貴女は爆弾のようにこの家の屋根に落ちて戸棚4つと土間1つ、ミシン十数基と屋根を粉々に破壊しました。す べ て 魔法では再生不可でした。請求額は59万6930賤…ですが、まけて40万でいいでしょう」
「えっ」
「見たところ、お召し物もいい素材でできています。名のある名家ですかねー」
「えっ」
「あ!逃げようとしてもムダですよ?貴女が払ってくれるまで…私は貴女について回りますから…何処まででも」
エェ…
いぬいどんどんすきになる