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【茨城】守谷市、図書館を再公営化 利用者増も職員の専門性に批判
守谷市は四月から、民間に委託していた市立図書館の運営について、三年ぶりに公営に戻す。民間委託で、開館日数の増加などで利用者は増えた一方、職員の相次ぐ退職や、利用者から批判があったことなどから「図書館は民間委託になじまない」と判断した。 (宮本隆康) 市は二〇一六年度から、守谷中央図書館と分室四カ所の運営について、図書館流通センター(TRC、東京都文京区)などの共同企業体に委託した。指定管理者制度に基づき、期間は一八年度までの三年間。年間委託料は一億一千万~一億二千万円だった。 市教委などによると、委託後、開館時間は一時間半長くなり、開館日数も年間で約五十日増えた。年間利用者数は委託前の一五年度の二十一万人から、一七年度は三十万人へ大幅に増加した。 しかし、最初の三カ月で館長と、委託前から勤めていた職員五人が相次いで退職。市教委は常勤職員の六割以上を専門職の司書にするよう求めていたが、二年間は達成できなかった。 窓口、事務、資料調査など職員の担当業務は、固定せず二時間ごとに交代させる方式にした。そのため専門性が低くなったとして、要望に応じ資料を探し出すレファレンスサービスで利用者から苦情もあった。 これらを受け、市教委は一昨年十一月、有識者や市民らの「市図書館協議会」に運営方式を諮問。昨年二月の答申では「営利企業が多くの利益を出すには、人件費の削減傾向が強まり、スタッフの質の向上が難しい。見た目に効果が表れるサービスを重視する半面、教育機関、生涯学習の拠点としての取り組みが弱い」と公営に戻すよう求めた。 松丸修久市長は昨年五月、再公営化を表明。再公営化後も、開館時間の延長や開館日数の増加、サービスはすべて継続する方針だ。 一方、別の有識者らでつくる「市行政改革推進委員会」は昨年十二月の報告書で「直営に戻す合理的理由として、過去と比較されていない。一部の会議録が非公開で、透明性も不十分」と決定の経過を批判した。 TRCの谷一文子会長は「市議会に委託継続を求める陳情も出され、今回の決定が市民の総意とは考えていない。きちんと運営したと思うし、納得いかない部分もあるが、受け止めるしかない」と話している。 日本図書館協会によると一七年度時点で、全国の市区町村立図書館三千二百十五館のうち、五百五十一館が運営を民間委託している。過去に守谷市のように民間委託から公営に戻した例は、十六館であった。
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