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中日ビル、また会いましょう 53年の歴史に幕

閉館日を迎えた中日ビルの屋上で手を振る大勢の来館者=31日午後、名古屋・栄で、本社ヘリ「まなづる」から(川上智世撮影)

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 名古屋・栄の中日ビルは三十一日夜、建て替えのため閉館した。大勢の市民が最後の別れに訪れ、往時を思い起こさせるかのようなにぎわいとともに、惜しまれながら五十三年の歴史に幕を下ろした。

 館内の見学会が始まる午前十時前から、約百七十人が列を作り、開場すると次々にエレベーターに乗り込んでいった。九階の中日劇場前の窓から栄の景色を眺めていた名古屋市東区の久保賢俊さん(79)と容子さん(72)夫妻は「昔は遠方の知人が訪ねて来ると、必ずここに連れて来る自慢のビルだった」と懐かしみ、「家族の思い出がたくさんある。新しいビルにもまたみんなで来られたら」と話した。

 午後二時には中日新聞社のヘリコプターが空撮。屋上に詰め掛けた約五百人が手を振った。そのうちの一人、名古屋市出身で、大津市の団体職員池あさみさん(55)は、ビル内にあった滋賀県の観光情報センターで二十六年間働き、屋上で弁当を食べるのが日課だった。当時を思い出し、ビルに「楽しく働かせてもらった。ありがとう」と告げた。

 一階では栄中日文化センターの受講者らによるコンサートがあった後、午後六時すぎ、中日ビル社の金森昭夫社長が玄関前に立った。「今日は現在の中日ビルのゴールと同時に新しい中日ビルへのスタートの日。新ビルでまた会いましょう」とあいさつし、職員らが玄関前で頭を下げた後、シャッターが下りた。

 「五十三年間ありがとうございました」と書いた白い幕が引かれ、詰め掛けた人から拍手とともに「ご苦労さま」などと声が飛んだ。

 名古屋市名東区の主婦末永知佳さん(47)は「寂しいけれど、一時代の思い出として心に刻みます。化粧直しして、新しい時代も文化を発信し続けてほしい」と涙をぬぐった。

 中日ビルは一九六六(昭和四十一)年に開業。解体は四月に始まり、新ビルは二〇二四年度に完成予定。

 (井本拓志、水越直哉)

シャッターが下りる中、来館者にあいさつする中日ビルの関係者=31日夕(川柳晶寛撮影)

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