1.はじめに
一昔前まで主流だったロゴマーク作成の手段といえば、著名なデザイナーやデザイン制作会社に依頼するか、知り合いのデザイナーに頼み込んで作成してもらうかの2通りでした。しかし、クラウドソーシングやロゴマーク販売サイトの台頭から、以前よりも手軽に、かつ低価格でロゴマークを手に入れることができるようになりました(「超基本、最も分かりやすいロゴマーク作成3つの方法)。
以前は「高ければいいロゴマークだ」というイメージが発注者にはありました。しかし、ロゴマークの価格破壊的な状況が起こる中、クオリティと料金の関係性について疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ロゴマークのクオリティと料金の関係性について考えてみます。
Point:ロゴマークの価格破壊が起きる中での、クオリティと料金の関係性について考える
2.ロゴマークの料金とクオリティは比例するのか?
両者の関係について、発注者側の皆さんが最も気になる部分は、やはり「ロゴマークの料金はクオリティに比例するのか」という点ですよね。
結論から言えば、おそらくほとんどのデザイナーが「No」と回答するでしょう。
その理由として、ロゴマーク作成の流れにおいて、簡略化できるところが少ないという点が挙げられます。
例えばものづくりの場合、全く一から商品を作り出すためには、まずアイデアを出す必要があります。
どんな商品を作るのか、コンセプトはどうするのか、ターゲットとする消費者層をどこに定めるか、販売価格はいくらを想定するか…この段階で決めるべきことはたくさんありますよね。製造計画などもこの部分に入ります。
アイデアを出し終え、企業としてGOが出れば、次に金型製造に入ります。金型投資はお金のかかるものですが、一度作ってしまえば老朽化するか、商品自体に問題がない限りは使用することができます。他の商品と併用することもありますよね。こうした過程があって、初めて販売までこぎつけます。
この流れの中で、料金設定を安くするためには、金型代を安くしたり、金型を別の商品と併用したり、物流や梱包形態を見直すというのが一般的ですよね。
この流れをロゴマーク作成に当てはめると、アイデア出しと金型作りに、ほとんどの工程が集中します。しかもロゴマークの場合、金型を使いまわすことはあまりできません。なぜなら、企業や商品ごとに、コンセプトが異なりますし、そもそもオリジナリティがなくなってしまうからです。
つまりデザイナーにとって、価格を抑えるためにはアイデア出しを簡略化するか、修正を少なくするかのいずれかしか方法はないのです。
しかし、アイデア出しの部分を簡略化すると、商品を作る意味自体がなくなってしまうこともありますし、デザイナー自体の評価の低下につながることもありますから、簡単に簡略化することはできません。
つまり、ロゴマーク作成というのは料金の高い低いで、その手順を大幅に簡略化することが難しいのです。
Point:ロゴマークのクオリティを価格に合わせるのは難しい
ただし、料金によって差が生まれる部分も確かにあると、筆者は感じています。
それは、多少費用がかかってでも、良いロゴマークを作りたいと考えている方の多くは、話し合いの際のブラッシュアップに時間を掛けたり、妥協を許さないことが多いため、結果として良いロゴマークが作られることが多いからだと感じています。
しっかりブラッシュアップを行うためには時間が必要です。その時間に見合った価格を発注者側が支払うと、どうしても価格を抑えられないため、結果として価格が高くなるということはあると感じます。
ただ、NIKEのロゴマーク事例にもある通り、必ずしも高いロゴマークだから良いロゴマークだとも言えません(NIKEは制作当初35ドルでロゴマークを購入しています)。
つまるところ、ロゴマークの価値やクオリティを決めるのは、発注者側の想いであって、必ずしも価格とは比例しないというのが、一応の結論ではないでしょうか。
Point:ロゴマークの価値やクオリティを決めるのは発注者の想い
では、良いロゴマークとは何なのか?
この点については、また別のコラムで考えていきます。
3.まとめ
■ロゴマークのクオリティと料金は必ずしも比例しない ■ロゴマーク作成において、価格を下げるための努力というのは難しい ■ロゴマークの価値やクオリティを決めるのは発注者の想いである |