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【社説】

ゴラン高原 弱肉強食を許すのか

 武力による領土拡張を容認すれば、ルールに依拠する国際秩序は崩壊する。トランプ米大統領がゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めた。世界を弱肉強食の時代に逆戻りさせてはならない。

 イスラエルは一九六七年の第三次中東戦争で、戦略拠点のゴラン高原をシリアから奪い、占領を続けている。

 国連安保理はイスラエルに撤退と返還を要求し、八一年にイスラエルが併合を宣言した時も、無効決議を採択した。イスラエルの横紙破りを許さない国際社会の足並みは米国も含めてそろっていた。

 それをトランプ氏は乱した。ネタニヤフ・イスラエル首相も同席する中で二十五日、イスラエルの主権を認める宣言に署名した。

 トランプ氏は昨年、エルサレムをイスラエルの首都と認めて在イスラエル大使館を移転させた。これに続くイスラエルへの一方的な肩入れである。再選を目指す来年の大統領選をにらんで、親イスラエルのキリスト教福音派の支持を取り付ける狙いがあるのだろう。

 加えて、蜜月関係にあるネタニヤフ氏への側面支援でもある。ネタニヤフ氏は四月に総選挙を控えるが、汚職容疑がかかる苦しい立場だ。

 一方、アラブ世界はイスラエル主権の承認に反発している。両者の間の摩擦が高まり、中東を一段と不安定化させかねない。

 選挙対策が外交政策を乗っ取ることで生じるひずみは、深い禍根を残す。

 九四年の中間選挙に大敗し、大統領再選に危機感を抱いたクリントン氏は、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を進めた。ポーランド系をはじめ東欧系移民の支持狙いだった。

 こじれにこじれた今の米ロ関係の根底には、東方拡大がある。

 北朝鮮制裁決議の順守を他国に求める一方で、都合の悪い安保理決議は無視する。こんな身勝手な米国を誰が信用するだろうか。

 ロシアのクリミア併合を認めない従来の立場との整合性もとれない。

 米ロが一方的に現状変更に踏み切ったり、容認したりすることは、法の支配をないがしろにするものだ。まねする動きも出てくるだろう。そのつけはいずれ米国にも回ってくる。

 目先の利益にとらわれるトランプ流は、米国にもプラスにならないことを米国民は理解してほしいし、世界は決して認めないだろう。

 

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