白くまラプソディ8~永遠の大地


分厚い氷に覆われた大地
波頭さえ凍りついた海
ここにシステムはない
従うか 抗うか
生か死か
二者択一の世界
神々の冷気を
空ごと胸に吸い込む
キーンと沁み込むこの感じ
帰ってきたのだ

痺れた後ろ足を
ひきずるように踏み出した、刹那
右目の奥で赤い閃光が炸裂した
空が、海が、大地が
まわった



砂袋を引きずるような頭の奥で
軽やかなステップをキメる俺がいる
背中で不器用に回るおまえがいる
笑い声が跳ね回る

薄い光が見える
容赦ない雪嵐
寒い
ほんとうに寒い
このまま朽ち果てるのか

ホワイトアウト
一瞬の凪
横になった視界に
幻覚だろうか
おまえがいる

幻覚でもいい
やっと
やっと逢えた
待っていたのか
待っていてくれたのか
大きな黒い瞳が濡れている
また少し丸くなりやがったな
来いよ

なぜだ
なぜ来ない

うずくまるおまえの
下腹が僅かに動いた
そこから這い出したのは
真っ白いかたまり
2匹!

目を見開いた
濡れた黒い瞳は哀しみをたたえ
やはり動かない
まだ恐れを知らない無垢な天使
その片方が風に押され
滑りながら、回りながら
鼻先で止まった

なっちゃいねぇ
おまえと一緒だ

目を閉じる
流すものはなにもない
いつだって一直線だった
そう
いつだって

天使のキスが鼻を塞ぐ
あいつの匂い
熱い
潰れた右目から
想いがあふれる

行こう
あの場所へ
さぁ、背中に乗れ
そう、みんなでだ
とっておきの
スポットが
ある、ん、だ


キュウッ
――――――――――!!


永遠の大地に木霊する
おまえの声
確かに聞いたぜ
生きろ
生きてくれ
まっすぐ








                             「白くまラプソディ」 完


初稿  2005.11~2006.01
第二稿  2007.09