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【社会】

虐待、世代超え連鎖 加害親の7割が幼少期に被害

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 子どもを虐待したとして有罪判決を受け、服役した親ら二十五人のうち、72%に当たる十八人が自身の子ども時代に虐待を受けていたことが三十日、理化学研究所の調査で分かった。本人が精神的問題を抱えるケースや、子どもに健康や発達の問題があり、子育てが難しい環境に置かれていた例も目立った。

 調査チームは、子どもへの適切な接し方が分からなかったり、過大なストレスがあったりしたために虐待につながった可能性があるとみている。

 子どもの虐待事件の加害側を数十人規模で調査するのは異例という。こうした経験や環境が虐待に直結するわけではないが、理研のチームリーダーで精神科医の黒田公美(くみ)さんは「防止のために問題を抱えた親たちの背景を理解し、有効な支援策を検討する必要がある」と訴えている。

 チームは二〇一六年から調査を開始。子どもが死亡するなどした虐待事件に関わったとして実名報道され、調査当時服役していた親や同居の大人百二十四人に協力を依頼した。承諾した人に幼少期の家庭環境など計四百問以上にわたる質問を送り、郵送で回答してもらった。

 昨年秋までに回答があった二十五人を分析すると、子ども時代に身体的虐待や心理的虐待、育児放棄を受けるなど過酷な体験をした人が十八人いた。研究協力が得られた一般の男女七十四人への調査では、そのような経験をした人の割合は、親の不在を含めて18%(十三人)だった。

 また44%(十一人)は、うつやアルコール依存などの精神的な問題を抱え、適切な養育ができない恐れがある状態だった。68%(十七人)は、被害を受けた子どもが健康や発達の問題を抱えていたり、三人以上の乳幼児を同時に育てていたりして、子育てが難しい環境に置かれていた。

 虐待経験、精神的問題、子育てが困難な環境という三要因のうち、少なくとも一つを抱えていた人は88%(二十二人)に上った。

 

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