謎の魔力反応、そして
あれから俺達は何の問題も無く除魔草を採取し、俺の魔法で森の入り口まで戻ってくることが出来た。当たり前だが一番乗りだ。
強いて言うならテーネとの距離感が何だか異常に近かった気がする。腕に抱き着かれて歩きにくかったが、離れるように言うと「うーん、アランくんに泣かされちゃったから一人じゃ歩けないなぁ。なんてね、えへへ」とか言われて無理に引き剥がせなかった。可愛いかよ。てか、こんな可愛い子に抱き着かれるとか普通に役得だったしなぁ……。
「いやー、楽しかったねアランくん!」
「そうだな。テーネの新たな一面も見れて良かった」
「あはは……。あの醜態については忘れてくれるとありがたいんだけど……」
「それは無理だ。だが、恥ずべき事は無かっただろう」
「一応、女の子的には気になる男の子にあんな姿は見せたくなかったんだけどなぁ」
「ふむ。そういうものなのか。俺の目には愛らしく映ったが」
「愛らしっ……!?」
「可愛かったぞ」
「かわっ!?」
少しからかっただけで顔を真っ赤にして「かわわわわわわ……」と羞恥に震えるテーネは、それはもう大層可愛かった。先に気になる男だとからかってきたのは向こうの方なのに、責められた途端に弱くなるところが愛らしい。現世に舞い降りた天使かな? いや、人類を恐怖のどん底に叩き落とした闇の原初の精霊様だったわ。
そんな可愛い闇の原初の精霊様と二人でくだらない話をしていたのだが――――その時急に森の方から高純度の魔力を感知した。しかも、どうやら綺麗に隠蔽までされているようだ。
弾かれたかのようにバッと顔を上げると、テーネも同じようにしているのが見えた。流石は原初の精霊、やはり気付くか。
「アランくんっ、これって」
「あぁ。かなり巧妙に隠蔽されているが、莫大な魔力だ。恐らく、かなり高位の魔物か何かだろう」
「でも、おかしいよ。『悪夢の迷い森』が立ち入り禁止ダンジョンに指定されているのは幻惑魔法や地形変化魔法がかかっていて一度入ると中々脱出出来ないからで、そんなここまで綺麗に魔力を隠蔽できるほど強力な魔物は生息していないはずだよね?」
「考えるのは後にしよう。それよりも今は皆の安全が最優先だ」
「そうだね。ここまで綺麗に隠蔽されているとなるとフレア先生も気付いてないかもしれないし……急ごうか」
魔物とは基本的に知性を持たない獣のような存在である。が、しかし例外もあるのだ。上位の魔物には知性があり、リッチーやヴァンパイアロードといった最上位の魔物ならば自らの魔力を隠蔽することだって不可能ではないだろう。今回のこの魔力の持ち主が最上位の魔物だったとすれば、フレアさん達教師陣ですら勝てないだろう。
だが、幸いなことにこの場には闇の原初の精霊様がいるからな。俺とテーネならば最上位の魔物だろうが戦える。
「アランくん、どう思う?」
「……分からん。だが、さっきまでは居なかった。もしもずっと居たなら俺達が二人とも存在に気付かなかったなんて事は有り得ない」
「そうだね。私達が森の中を歩いてた時にはそんな気配感じなかった。となると、私達にも感知出来ない程急に現れたって訳なんだけど……」
「十中八九、転移魔法だろうな」
「本日三回目の転移魔法なんだけど……」
念のためにもう一度言っておくと、転移魔法とは人類から失われた
「もしもほんとに転移魔法を使えるような魔物がなら、結構絞られるよね」
「いや、若しかするとこれは魔物とは限らないかもしれない」
「え? それってどういう――――」
疑問符を浮かべて首を傾げるテーネだったが、最後まで話す前に焦ったような表情になった。
慌てるテーネに対して、俺はむしろ安堵していた。
「まずいよアランくんっ! グレンくんがその謎の魔力の持ち主の近くにいる!」
「ああ。そうみたいだな」
「そんな落ち着いてる場合じゃないよ! 急いで私達も行かないと!」
「いや、まずは他の皆の安全を優先しよう」
「なんで!? 今一番危ないのはグレンくんでしょ!? アランくんはグレンくんが心配じゃないっていうの!?」
テーネが俺に詰め寄ってくる。確かに、テーネの言うことは間違いないのかもしれない。だが――――
「ああ。心配などしていない」
「家族が危ない目にあってるっていうのに、そんな――――」
「あいつの事は信頼しているからな」
だが、グレン君は俺の弟であり、この物語の主人公だ。
さっきまでの剣幕も忘れてぽかんとしているテーネに俺は言葉を続ける。
「あいつが動いているなら安心だ。取り敢えず、この場で俺達がするべき事とは他の皆の安全の確保だ。皆に何かあったらグレン君も困るだろうさ」
「で、でも、私達が助太刀すればグレンくんの助けにだってなるんじゃ……」
「あまりあいつを見縊るな」
心配性なテーネと目を合わせ、言い聞かせるように俺は続けた。
「あいつはここで倒れるような器じゃない。あいつなら絶対に大丈夫。だからこそ、俺達は俺達にしか出来ない事をするべきだ」
あいつは主人公で英雄なのだから。
ならば一流の踏み台転生者を志す俺はどうすればいいのか。決まっている。あいつが戦っているのなら、あいつが守ろうとしている皆が巻き込まれてしまわないように全霊を注ぐ。
それが兄としての、そして踏み台としての俺の理想の在り方だ。
俺の真っ直ぐな想いが届いたのか、テーネは渋々といった感じで納得の姿勢を見せてくれた。
「もう……、仕方ないなぁ……。アランくんがそこまで言うんなら、信じるしかないじゃんか」
「ありがとう、テーネ」
「ただし! もしもグレンくんが危なそうだったら助けに行くんだからね? 二人で!」
「ああ。勿論そのつもりだ」
「全く、なんなんだよぅこの兄弟……。どういう信頼関係なのさ……」
ぶつくさと文句を言いながらではあるが、テーネもどうやら協力してくれるようだ。
流石は闇の原初の精霊というだけあって、テーネの魔力感知はとても正確だ。それにもしも多少の危険があっても彼女ならばどうにでも出来るはずだし、テーネの協力があればすぐにみんなを安全なところまで避難させられるだろう。
「早速だが、二手に別れようか。テーネはユリアとリーナのペアとフレアさんや他の教員を頼む。俺はエルナとクリスティーナのペアとグレンくんと別行動してるアイラと合流する」
「おっけー。そしたら合流してアランくんの転移魔法で入り口まで帰ればいいんだよね?」
「ああ。テーネなら大丈夫だとは思うが、くれぐれも注意して欲しい」
「分かってるよ。心配性だなぁ、アランくんは。そっちこそしっかりね」
お互いに言葉を交わすと、それぞれの方向へと別れて駆け出す。
テーネはこういう時に頼りになるな。闇の原初の精霊様が味方とかすげぇ心強い。
と、今は考え事なんてしてる場合じゃなかったな。俺がやるべきことはみんなの安全を確保すること。一流の踏み台転生者を目指しているのならこんなところで躓くなどありえない。
俺の魔力感知が謎の魔力の持ち主とグレン君がぶつかり合っているという事実を報せる。始まったか。あいつが頑張っているんだ。俺も失敗しましたなんかじゃ済まされない。
踏み台の役目は、主人公を下から支えることなのだから。
それが出来ないのならば、一流の踏み台転生者なんぞ夢のまた夢だ。
「さて、物語はもう既に始まっている。俺は俺に定められた
今話も読了して頂き、誠にありがとうございます。
次回も是非読んでいって下さいませ。因みに次回以降は我らが主人公、アランの戦闘シーンも予定しております。とはいえ、本格的な戦闘はまだ先になりそうですが。どうかお楽しみに。
P.S.今話は大変難産でした。具体的には普段の五倍以上の時間が掛かりました。
清水彩葉
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