創業者の指示なら誰も逆らえなかっただろう。賃貸アパート大手レオパレス21の施工不良問題で外部調査委員会が元社長の関与を指摘した。被害者救済はもちろん企業体質を根幹から直すべきだ。
弁護士三人で構成する調査委は国土交通省に中間報告書を出した。その中で創業者である深山祐助氏が社長時代、建築基準法の基準を満たさない可能性がある建材使用を指示していたと指摘した。
深山氏は一九七三年から資金の私的流用問題で辞任する二〇〇六年まで、三十年以上経営トップに君臨した。極めて強い権力を持つ人物からの指示は絶対的だったはずだ。
レオパレス側も深山氏の関与について「コメントを控えたい」などと歯切れが悪い。依然として社内に創業者への遠慮があることをうかがわせる姿勢だ。
報告書は、物件への入居者を増やすため工期短縮を図ったことが問題の背景にあると指摘する。利益を最優先した揚げ句に設計図とは異なる建材を使用した形で、安全や法令を軽視する企業体質が浮き彫りになった。
レオパレスはアパートの建築を家主から請け負った上で一括して借り上げ入居者も募集。利益を家主と分け合うモデルで成長した。このため今回、家主と入居者という二重の被害者が出ている。
現在、耐火性を満たさない天井がある物件の入居者約七千八百人が引っ越しを促されている。だが多くは実行できていない。
物件自体の改修も必要だ。家主は賃貸料収入などをめぐり不安定な状態に置かれる可能性もある。
報告書はレオパレスに法的問題を扱う部署がなかった点も問題視する。不動産関連事業では必須の部門で、組織のあり方にも欠陥があったといえる。
日産自動車、SUBARU(スバル)、神戸製鋼所など一昨年以降、幅広い業種で不正が見つかった。いずれも製品の検査に関わる不正だった。今回は施工段階から問題があり、より根が深い。
レオパレスの利用者は学生など若い世代も多い。入学や入社、就職活動などで今回の事態が影響していることが心配だ。人生設計の変更を余儀なくされる家主も出てくるだろう。
経営陣には解体的な出直しを視野に、企業体質の改善に向けた深い反省が必要だ。同時に監督官庁である国交省には、被害者の救済を意識しつつ、早急で厳密な調査を求めたい。
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