※ これはネットに上げられた岩倉玲音の診断記録である。
最初は当然米良柊子が記述していたのだが・・・・・・・。
いつの頃からか何者かにより、改竄されている点に注目。
果たして、これは一体、誰の疾病の記録なのだろうか・・・???
提出用診断履歴: 記録者 ・米良柊子
クライアント・岩倉玲音
1
既往歴に関して言えば、クライアントの家庭環境は、
両親とクライアントのみの核家族であり、両親にも家庭的にも
経済的にも目恵まれた環境であると言える。
両親の関係も非常によく、精神衛生上特に問題となる要因は
特に見受けられない。発端者の血族の病歴に関しては、
両親からの情報からも、当研究所のデータベースにおいても、
神経症、精神病、自殺者、血族結婚等の親類もなく、
遺伝素因による発病の可能性は低い。
2
出生時以後の児童期においても、特別な事は無く、
現時点での習癖も無く、不登校などの問題も無い。
既往疾患に関しても、同様に調査した結果、
問題になるような点は見受けられない。無論、当研究所の
付属病院に関しては、これを除外する。
カウンセリングを行った時点で、直接本人から病名を聞きたかったが、
人見知りな性格であり、非常にセンシティブな少女であるため、
今回のカウンセリングでは、クライアントの心を開くべく一般的な話に終始した。
3
現状で、母親からの話では、頻繁に怖い夢を見るとのことである。
ただし、通常の夢ということでなく、現実感が強く、どちらかといえば
幻覚に近い訴えを聞かされ病院に足を運んだとのことである。
問題の夢だが、あまり内容に関しては語らないそうだが、
突然意味不明な声が聞こえたり、いきなり目を開けられてビデオを
見せられたとか、庭で遊んでいたら、いきなり一人になっておびえたりとか、
児童期特有の恐怖に対する産物と思われる。
これらの症状は、今後自我が確立されるとともに回復にむかうという考え方は、
いささか楽観的ではあるが、小児の臨床事例からも、可能性の高いことである。
また、基本的にそれが治らなくても、生活に支障がないと思われるほど、
クライアントの受け答えは明瞭活知的であり、ただし、母親の話の中で気になった
のは、幻覚とともに、幻触を感じるということである。
この点は通常の児童期の精神症状としては、かなり特異であると言わざるを得ない。
彼女の中に、そうした妄想なり幻覚を抱かされるだけの恐怖のモデルがあったか
どうかが重要な点ではあるが、これは今後のカウンセリングによって
明らかにいくつもりである。
4
身体所見。体型は小柄で痩せ型、少々発育不全なところもあるが、
この年代の少女としては特に問題ないレベルである。
服装外見での問題点は、髪型の一点のみ。
片側のもみあげだけを伸ばしており、髪を束ねている。
よもや、学校で流行っているとは思えないが、彼女なりのファッションに
なっているようだ。母親の話では本人が好きでやっているとのでことなので、
彼女を理解する上で、何らかの指針となるだろう。今後調査したい。
おとなしい印象で、肌も綺麗であり、その他の特記事項はない。
5
問診。表情はやや暗いものの、笑った顔のあどけなさは全くの健康な児童である。
話し方に関しては、基本的に無口になる傾向があるが、全くコミュニケーションが
取れなくなるほどのものではなく、控えめでおとなしい印象である。
質問等に対する理解力も十分にあり、その答えも明快で問題ない。
注意力、集中力、見当式、感情の面にもおおむね問題がないが、
病状に対する質問には疎通性に支障をきたす。
6
現段階ではいたずらに症状のことを聞くのは得策ではないので、
病状に関係する事項については確認出来なかったが、総じてクレバーな
おとなしい印象の少女と見受けられた。
母親から学校で描いた絵を見せてもらったが、非常によく描けており、
美術センスはおそらく高い。これといって精神分析に役立ちそうな特異な点は
見受けられない。現段階では、幻覚妄想状態ということになるのだが、
おそらくは全くの正常人である可能性が高い。病院側の身体症状の報告に関して、
気になったのは一点、視力が極端に良いことと、対光反射が極端に低いこと。
ただし、こういうタイプの児童に見受けられがちな貧血や皮膚症状の異常は
見受けられない。
7
今後の臨床上の特記事項始めに、私はケースに関しては、精神科医という
立場ではなく、カウンセラーとしてクランケに接することにする。
したがって、今後クランケこと、岩倉玲音をクライアントとする。
その理由は、一つはクライアントがまだ12歳であり、感受性の強い児童期で
あるため、彼女の中に自身病気であるという認識を持たせたくない為。
実際、今後の臨床の結果によるが本日の面接において、彼女の病状は単なる
子供の悪夢による精神的なダメージを引き摺っているものであり、面接中に
おいても多少、内向的な性格は認められるものの、受け答えには問題点が
見られない為である。彼女を病気と判断したことに、今さら意義を唱える
必要はないが、私の判断では、彼女は病気ではないとさせていただきたい。
もう一つ。私が精神科医であるのと同時にカウンセラーであるため、
患者にとって、最適な立場を選択できることである。今後カウンセリング過程に
おいて、何かしら神経症、及び精神障害の兆候が見られた場合、
カウンセラーとして、精神科医に判断をゆだねられるということである。
もちろん私自身がそのまま継続して、彼女の治療に当たることも
十分可能性があるが、研究の客観性を重視するなら、第三者に臨床をしてもらい、
私は引き続き研究対象として彼女と関わるのが望ましいと考える。
当研究所では異例なことと思いますが、精神医療の現場の向上の為の
研究ということで、了承していただければと思います。
8
クライアントは非常に協力的であり、全く問題はない。
ただし、彼女の中で、まだ私への警戒心があり、全ての問題を話し合うのは
難しい状態である。比較的時間があったので、遊戯療法ではないが、
簡単なゲームを提案するが、12歳ということもあって、あえなく拒否され、
セッションに入った。観察者である私への個人的な興味を持っているが、
これは私への警戒心の現れと思われる。自宅での人形遊びが、クライアントの
主だった日常行動であり、人形にたいする仮想人格を認め、
そのことに対するコンプレックスを抱いていた。
同年代の友人の少ない児童に見られる典型的な孤独からの逃避だと思われる。
9
クライアントの受け答えに言語感覚の特異点が認められる。
しかし、これはいわゆる病状ではなく、むしろクライアントは言語の
高度な使用ができるということである。
体育と運動の違いは、授業であるかどうかの違いであり、集団行動、
更に学校という舞台では顕著に比較されることである。
「運動が嫌い」なのではなく「体育が嫌い」なのは、自身への自信の
欠如から来ているものと思われる。
10
特記事項。クライアントの瞳孔が気になる。
病院でのレポート対光反射の欠如傾向もあり、アディ症候群に近い傾向がある。
あわせて、活発な幻聴や、被害妄想が見られることから、若年進行麻痺である
可能性があるが、ハッチンソンの症状は無いのできわめて可能性は低い。
11
憶測での診断はタブーだが、万が一のことを考え、すぐにでも髄液所見を
すべきだろうか。ご指導よろしくおねがいします。
12
付属病院での診断がクライアントに影響を与えている。
ロールシャッハテストで検査されていたという事実が、彼女の心を既に
傷付けてしまっている。マインドレイプとまではいかないものの、
今日のセッションで彼女を傷付けてしまった。
安易な病名予想による診断は慎まなければならないと実感させられた。
カウンセリングの意義と目的を彼女に説明し、一応の理解は得られた。
今後、彼女の中でもカウンセリングに対して目的意識が芽生えて
くれれば良いと思う。
13
母親への警戒心があるようだ。幻覚は彼女にとって現実である。
その現実を否定した母親への不信感のあらわれかもしれない。
現時点ではクライアントの見る現象が知覚の以上による錯覚なのか、
いまだに判断が付きづらいもある。クライアントが体験した、
空中に写るビジョンは、天井の染みが怪物に見えるといったパレイドリア的な
ものよりも、さらに創作じみたきらいがある。
対象無き知覚に対して、逆に対象を見出しているのではなかろうか?
髄液所見の取り下げをお願いします。
14
クライアント自身が自己の病名を気にして、自力で調べている点から
しても、彼女自身の病気に対する恐怖は相当のものである。
精神病というレッテルを貼られることは、社会的に隔離されるという
ステレオタイプの一般的概念が、クライアントにも当然ある。
精神病の一般社会における問題点を改めて考えさせられた。
今回のセッションは、クライアントの病気であることの不安を取り除く
ための説明に終始した。その結果、クライアントとの信頼関係が築けたと思う。
15
主に言語幻聴に関する話をした。電線から声が聞こえるといった
俗に言う電波系と呼ばれるものだが、聞こえる話の内容が本人と関連がない点で、
被害妄想とは異なる。物理的影響妄想と分類されるべき内容だが、
妄想と呼べるほどの混乱した症状はない。電話線や無線電波が具体的な声として
変換されて聞こえるという、子供らしい理屈付けをすることで成立している
幻聴であり、頭がよく、感受性の強い小児に見られる創作の幻覚と言えるだろう。
しかし、幻覚症状が日中に起こる現象に関しては、極めて特異である。
特にクライアントが嘘をついてるとは思えないが、小児の場合、
友人と話している最中に幻覚状態になるというケースは極めて稀であると言える。
おそらくは、時間や状況の記憶が本人の中で曖昧になり、
別な体験と混同しているか、もしくは友人と話していた夢を見ていたのかもしれない。
16
クライアントとの信頼関係が崩壊した。
原因は私の配慮不足である。彼女の現実的恐怖を、私の主観的判断で
仮想的な空想として一方的に表現してしまった為である。
さらに、不安を除くため、意図的に軽い調子で言ったのが一層深くクライアントを
傷付ける結果となった。両親への経過報告と、クライアントへの謝罪の為、
保護者同伴にて来症を要望する。
17
何とかクライアントの心を繋ぎ止めることが出来た。
症状が特に悪化しているわけでもないので、焦らずゆっくりと
信頼関係を築いていくことに注力する。
18
視力の問題に関して本人に伝えた。
目が良すぎたり、耳が良すぎたりすることから、周囲の人間との
比較で自分が普通ではなく、特異な存在であることに対するコンプレックス
混じりな不安が彼女の大きな結実因子である可能性が高い。
同時に、単純な知覚過敏というよりも、神経症患者に出現する既視感にも
似た症状が平行して見られる。詳細は省くが、その時点で知覚されるものに
現実感が乏しく、知覚が阻隔されることがあるらしい。
時間間隔に関しては、クライアントの言葉を信じるなら大きな異常は見られない。
実際問題彼女が捉えている景色が本当にそう見えているのかわからないが、
それが身体的異常であろうと、知覚の異常であろうと、自己の過小評価に起因する、
彼女の自己の阻隔が治らなくては根本的な解決にはならない。
離人神経症とはただちにはいえないが、以前の幻覚に対する曖昧な認識を
合わせて考えると離人症状に近い症状に思われる。
19
自己の過小評価を無くすために、クライアントに自信をもたすように
話を進めた。いまだに表情の動きは乏しく、冷たく硬い表情を示しがちだが、
あくまでパーソナリティの範囲であると理解できる。
知的なクライアントであるため。神経を使うが、理解力が高いため、
効果が期待できそうである。
20
クライアントの興味は、私よりも私の職業に向いている。
医学知識を学びたいというクライアントの理由は自身の病気への
不安に対する探究心の延長だが、このことが、彼女にとって自己を考える
いいリハビリになると可能性もあり、承諾した。
当然そうした知識から、自己の病気への不安を助長してしまう可能性も
否定できないが、現在のクライアントとの関係上それを避けうることは
十分可能と考えられる。
21
兼ねてから気にかかっていたクライアントの髪型に関して聞くことが出来た。
幻聴をふせぐ、おまじないのようなものだった。
おそらく、既にあの髪型のままでも幻聴は聞こえてしまったことだろうと思うが、
あの髪型をやめることは、更に激しい幻聴を引き起こすと
潜在的に思っているのだろう。
我々の交通安全のお守りと何ら変わらない。お守りを過信することに
危険性がないとは言えないが、現時点でクライアントに髪型を変更させる
つもりはない。
22
相変わらず、クライアントの興味は精神病理にしかなく、
他の話題に関しては無関心とまではいかないほども興味を示さない。
質問攻めにはやや疲れたが、何かしら得意な分野を持つことで、
自我が強化されたり、自己の過小評価が無くなる可能性は非常に高い。
また、こういう症状をもつ第三者と比較することで客観的に自己を確立
できるはずである。
23
全体的にリラックスしたムードの会話が出来るようになった。
記憶に関してはおそらく何らかの理由があるだろうと想定したが、
過去の自分の記憶が、自己の経験として認識できないことから、
同一性の障害、もしくは単一性の障害かどちらかの障害の可能性がある。
ただし、発展途上の自我での問題であって、今後自我が強化をしていく上で、
自然と解決していく程度の問題なのかもしれない。
24
クライアントとのコミュニケーションは良好である。
前回のセッションで多少質問攻めに苛立ち、からかい半分な会話にはなったが、
かえってそいのことでクライアントとの距離は確実に縮まった。
今後もクライアントの自我の成長、確立への援助を中心とした
カウンセリングを行っていく予定。
25
大分、表情に明るさが出てきた。
ここ数ヶ月で仲良くなった友人の影響と思われる。
それにともなる生活環境の変化による環境因子の改善がなされた為だろう。
同年代の気の合う友人を見つけられたことで、おそらくは私よりも
親密な関係を築いていくことであろう。質問が増えたのは、私に対して
何を話していいかわからなくなってしまった為ではないだろうか。
今後数ヶ月の様子を見て、診察をしたい。
26
質問攻めは治らない。
この件に関して言えば、単なるクライアントの性格の問題であるのかも
しれない。以前幻覚時に現実感消失を感じたことに対して、
未だに不安があるらしく、その質問に終始した。
当時の症状はおそらく過度の自分への過小評価から、
別な自分への憧れが具体化し、その新しい自分と、以前の自分が
すっかり違ってしまったため、離人症状のような状態を自ら作り出して
いたのではなかろうか。しかし、今となってはもうそれが起こる可能性は
極めて低いと予想される。
27
問題ない会話に終始した。肌も健康的で印象が強くなってきた。
全く普通の中学生でしかない。もはや、ここに来る必要は無いと言える。
高島教授、秋の論文に提出する為の別のクライアントを申請します。
28
特になし。高島教授、先月お願い致しました別のクライアントの件ですが、
どうなっているのでしょう?
よろしければ、外来の担当の方を紹介してくれれば自分で手配します。
29
特になし。
高島教授へ、今回のクライアントの最終レポートをまとめます。
ある程度見当をつけてから既往歴をとったほうが良いと思っていましたが、
まるで問題が無いため、ここまでとれませんでした。
最終レポート用に既往歴の残りの部分も来月にはまとめます。
秋の学会まで時間がありません。
何とかお願いできないでしょうか?
これでは間に合いません。これは、私への嫌がらせなんですか?
30
特になし。
管理事務局長様。後任の室長が決まるまで、
この報告書は誰に出せばいいのでしょうか?
31
特になし。
管理事務局長様、新しいクライアント、ありがとうございます。
現在のクライアントの状態は報告の通りです。
最終レポートをまとめしだい、お送りしますので問題無ければ
カウンセリングを終了したいと思います。
32
管理事務局長様、既往歴の確認のため、クライアントの同級生に
調査をしたところ、問題点が見つかりました。
大変申し訳ありませんが、改めてカウンセリングを開始したいと思います。
33
恐れていた通り、クライアントは自分の中で架空の友人を作り出しており、
私の意見に対しても、反抗的な意見で対応してしまった。
言動に理論性と客観性が著しく欠けており、まるで精神分裂病の患者のようである。
もちろんただちに診断することは出来ないが、以前に現実感消失や、
離人症状のあらわれから、年齢、性別を考慮すると、離人神経症の恐れがある。
また、人格障害が極めて軽いことと、幻覚のことを考慮するなら、
妄想型の精神分裂の棒型であるパラフレニーである可能性が高い。
34
今後は出来うる限り、中立的に第三者としての立場彼女に接するつもりだが、
これまでの経緯の中で、彼女と密接にコミュニケーションを築いてしまった為、
第三者的に接するのは難しい。担当を替えるべきか、次回のセッションで決定したい。
管理事務局長様、わがままを申し上げてすみません。
現状に、他の仕事の方も間違いなくやり遂げます。このまま進めさせてください。
35
クライアントとの関係の修復に全力を費やしたが、
残念ながら効果はなかった。どうやら架空の友人を否定されたことで、
完全に自分の世界の殻に閉じこもってしまったようだ。
完全な自閉状態であるといえる。
何とか会話は続けられるものの、あまりにも距離が近しい患者となって
しまった為、容易に距離を置こうとするとパニックを起こす可能性も十分にある。
しばらく様子を見るしかないとは思うが、このまま精神療法を行うことで、
場合によっては、私が被害妄想の対象に組み込まれる危険性がある。
36
管理事務局長様。
今後の対応について。患者自身が疾患にかかっているという自覚が無い
ので治療は極めて難しい状態ですが、担当を替えるということで、
患者の環境を変えるということが先決であると考えられます。
ただ、現状で担当変更という対応が出来ないのならば、抗精神薬を少量、
コントミンまたはネオペリドールの投与を提案します。
沈静作用があるので試みる価値はあると思います。
倫理審査委員会への書類提出は必要でしょうか?
37
クライアントは終始穏やかな表情であり、緊急に何かをする必要は
無かったのかもしれない。クライアントの私に対する考えは以前と違いがなく、
何気ない会話では、架空の友人との会話を避けていれば問題は無い。
ただ、気になるのは私の個人的な部分での質問である。
意図的に私の感情を煽っているようにさえ思える。
ただ、それは私自身の焦りからの錯覚かもしれない。何とか以前のような
親密な印象を持たせつつ、徐々に客観性を持って指導したい。
これからもう一度初めからやりなおすつもりだ。
38
クライアントが別な印象を受けるほど、何か違う印象をうけた。
私の主観的部分がそうさせているのか、それとも症状の経過によって
何かが変わってしまったのか。
会話中、やはり理解に苦しむ発言や、私を煽る発言があった。
カウンセリング中に私はヒステリーを起こしてしまい、自身を見失ってしまった。
もう私の手にはおえない。もう私にはどうすることもできない。
担当を担当を変えてください。
39
全体的に若々しさが無く、年齢よりも老けた印象。
落ち着いた話をしていても視線が定まらない。
会話中も手首を微妙に動かしつづけて、不安な心境を露呈している。
おそらくは本人も身体感覚に気づいているものの、自身のプライドの高さから
病状を認めず、疲労と睡眠不足のためとし、努めて元気を出そうと意図的に
振舞っているのがうかがえる。
40
会話の中で幸せな自分が想像できないと、将来に対する希望も持てず、
自信が喪失し、やや厭世的な心理状態に陥っている。
クライアントは几帳面で勤勉であり、円満な対人関係を維持する為に
気遣いをする典型的なメランコリー親和型の人間であると言える。
今後は、あの心理的負担を軽減しつつ、精神指導を行うものとする。
41
カウンセリング中に、偶然熱いお湯をこぼしたクライアントは、
すでに痛覚を失認識しており、何事も無かったように片付けをした。
また、自己の身体部位のイメージがずれている可能性がある。
器質的脳疾患、または内分泌疾患から脳障害が離患している可能性がある。
確認のため、シンチレーションスキャニング、またはポジトロンCTによる
後頭葉の検査を要する。
42
なかなかクライアントが心を開かない。多少の荒療治が必要。
意図的に感情を逆撫ですると、漠然とした将来への不安感に反発するように
攻撃的な面が現れてくる。アンビバレンツが歪んで現れている。
今後、能率低下、記憶力減退、注意力減退の自覚とともに、
劣等感や自責傾向が強まっていくのだろう。
その結果、衝動的な行動が目立ち、知覚の喪失ないし、離人症が見られ、
現実感の消失に悩む可能性が高い。
突発的な自殺との可能性もあるので、トフラニールを投与する。
43
人格水準の持続的低下が見られる。
感情が麻痺しており、無関心で、作業意欲が低下している。目も虚ろで、
女性らしい気遣いも格段に減った。これまで来客の際にお茶を出さなかった
ことは無かったが、それすらにも気が回らない状態である。
自身の想像している自己と、現実の能力差が自分自身を責め立てている。
既に自我の単一性が失われ、クライアントの自我は崩壊し始めている。
私の前でも自信の無さを露呈し、自分が病気になったような心気感を覚えている。
時々、私のことがわからない。
44
私の問いかけに関しても反応が鈍くなった。
自信の無さが自己評価のバランスを欠いている。知識の不備が見れる。
正確な判断がなされていない。自分の立場を既に見失っている。
45
メランコリー型性格の患者には、発病との感情を自覚させるような
精神療法が有効であるため、クライアント自身の自立を促す方向で対処する。
神経症の症状に加え、鬱病と精神分裂病の症状も見られることから、
否定型精神病の可能性もあり、脳波の徐波の傾向が無いか
付属病院に脳波の検査を含む精密検査を依頼。
46
クライアントの場合、恋愛にまつわるトラブルは間接的な原因に過ぎない。
継続的なアプローチによっておそらく彼女の自我は取り戻せると確信する。
薬物療法を中止し、精神療法と環境療法を合わせて治療していく。
47
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
48
クライアントは自己と社会との関係を見出し、自我障害を完全に克服した。
BBRSでもHMDでの臨床評価も全く問題はない。私の初めての治療は立証した。
ありがとう、私の大切なクライアント。。。柊子さん
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