リック・ディアス系MS

 MSA-099リック・ディアスはAE社が通算五番目、Z計画においては一番目に開発したガンダム・タイプMSである。新素材ガンダリウムγ合金を装甲材に使用し、量産型MSとしては初めてムーバブル・フレームを導入した本格的な第二世代MSとして完成した。0087年当時のMSの水準では高性能を誇り、以降、第二世代MSの技術は量産型MSにおけるスタンダードとなった。
 同機はギリシャ文字が与えられるアナハイム・ガンダム・タイプだが、開発陣に多くの旧ジオン系技師が参加していたため、そのフォルムはかつての旧ジオン軍の重MSを彷彿とさせる。

 リック・ディアスはエゥーゴ初の量産型MSとして制式採用され、後に続くZ計画MSにおける先鞭をつけた機体となった。


 機種一覧

 MSA-098プロトタイプガンマ・ガンダム
 MSA-099Aリック・ディアス
 MSA-099Bシュツルム・ディアス
 MSA-099Cリック・ディアス陸戦仕様
 MSA-099Kキャノン・ディアス
 MSA-099Rリック・ディアス改
 MSA-099-2リック・ディアスII
 MSK-008ディジェ
 MSZ-007Zレイピア


 MSA-098プロトタイプガンマ・ガンダム
 

 MSA-099リック・ディアスのプロトタイプ。ガンダリウムγ合金製装甲とムーバブル・フレーム、新型ジェネレーターの稼動テストや機体バランス調整のために開発された先行試作機である。開発チームからはプロトγと呼ばれていた。

 外見のほとんどは後の正式生産機となるリック・ディアスとほとんど変わりはないが、胸部に廃熱ダクトが設置されている。頭部のバルカン・ファランクスは装備されておらず、左右に二本の通信用アンテナが装着された。これはデータ送受信用に仮設された装備の一つである。

 グリプス抗争勃発の前年、0086年冬に6機が製作され、月面やスウィート・ウォーター宙域において、兵装や耐弾性調査などの各種テストが行われた。

 そのうち一機は無人で大気圏再突入試験に供された。これはガンダリウムγ合金の耐久テストも兼ねており、スカンジナヴィア半島に落下した機体は地球上のAE社スタッフによって極秘裏に回収された。このテストで得られたデータはフライング・アーマーにフィードバックされている。

 MSA-098で得られた各種データを元に設計のシェイプアップが行われ、一部装甲の形状変更などのリテイクが図られた。こうした改良を経て、正式生産型のMSA-099がロールアウトしたのである。

 プロトγは連邦軍の目を欺くためにRX-098というナンバーも設定されていた。ちなみにリック・ディアスの名前が決定する以前のロールアウトであるため、正式名称はプロトタイプガンマ・ガンダムである。


 
MSA-099Aリック・ディアス
 

 MSA-099リック・ディアスは、反地球連邦組織「エゥーゴ」が開発した第一号モビルスーツである。エゥーゴのMS開発計画であるZ計画におけるごく初期に開発された機体の一つで、グリプス抗争時に開発されたアナハイム製ガンダム・タイプMSの先鞭となった機体である。

 Z計画においては、リック・ディアスは「γガンダム」というコードネームで開発が進められた。これは、外装に当時の新技術、ガンダリウムγ合金を本格的に採用したことと、ムーバブル・フレーム(内骨格)を内蔵していることからちなんで名づけられたものである。
 そのため、ずんぐりとした外見からは想像もつかないほどの機動力を持つ。ムーバブル・フレームの採用によって機動力と堅牢性が向上し、ガンダリウムγ合金を使用した装甲は、強度を保ったまま軽量化が実現できた。

 背部バックパックには可動式のバインダーを二基装備し、これをAMBAC肢とすることで機動力の強化を図っている。このバインダーは内部の余剰スペースを推進剤タンクとすることで行動範囲を大幅に拡大させている。グリプス抗争当時のエゥーゴ製MSの多くがこういった四肢以外の可動肢を持っており、外見上の大きな特徴となっていた。
 推進剤タンクとスラスターを内装し
たバインダーは、0083年にロールアウトしていたRX-78GP01FbフルバーニアンのブーストポッドやRX-78GP02Aサイサリスの肩部大型スラスター・バインダーと共通したシステムであり、リック・ディアスのバインダーはこれらのガンダム開発計画MSから得られたデータがフィードバックされていることが分かる。

 外見は旧ジオン公国軍のMS-09Rリック・ドムや、MS-14ゲルググなどの重MSを継承したフォルムを持つ。これは開発に旧ジオン系の技術者が多く携わったためである。リック・ディアスはジオン系の技術に加え、連邦系の技術も導入されており、この機体をもって連邦とジオン双方の技術融合に成功した。
 リック・ディアスがガンダム系の系譜を受け継ぎながら、旧ジオン系MSの外見を持つもう一つの理由として連邦軍によって計画が凍結されていた先年のガンダム開発計画からの関連性を隠蔽するための偽装も兼ねていた。

 リック・ディアスとガンダム開発計画におけるRX-78GP02Aサイサリスとの関連性の指摘はバインダーの採用だけではなく、アビオニクスやMS-09系/MS-14系のスカート式装甲を受け継いだ重装甲など多岐に渡り、リック・ディアスはガンダム開発計画とZ計画の技術の掛け橋的な役割を果たしたMSだと言えるだろう。

 開発には、M・ナガノ技師を中心とするグループが設計の初期段階に関わり、ナガノ技師開発グループ主導で開発されたMSN-00100百式と共通した設計を持っている。このことから分かるように、百式とは兄弟機にあたる。

 MSA-098でのテストを経て、量産機のロールアウト後、名称はガンマ・ガンダムで落ち着く予定だったが、ガンダリウムγ合金の精錬技術をエゥーゴと開発元のアナハイム・エレクトロ二クス社にもたらしたクワトロ・バジーナ連邦軍大尉の要望により、リック・ディアスと名づけられた。
 これは初代のRX-78ガンダムに敬意を表し、同時に戦力が充実しつつあったエゥーゴの活動が折り返しにしていたため、喜望峰の発見者、バルトロメウ・ディアスにちなんで名づけられたという。

 プロトタイプであるMSA-098(RX-098)がロールアウトしたのはグリプス抗争直前の0086年冬で、プロト機でのテスト後、得られたデータを元に細部に修正を加えて、翌年初頭に量産タイプ、MSA-099Aリック・ディアスがAE社のアンマン、グラナダの各工場でロールアウトした。
 
 ムーバブル・フレームは第二世代MSとして欠かせない要素であり、リック・ディアスとそれに続くMSN-00100百式MSA-003ネモにも採用された。リック・ディアスはその中でもごく初期の機体で、ティターンズ(地球連邦軍)が開発していたRX-178ガンダムMkIIよりも高いポテンシャルを持つとも言われている。
 事実上、リック・ディアスが開発された時点で、これ以上の性能を持つ量産型MSは地球連邦軍やティターンズにも配備されていなかったといっても過言ではない。

 リック・ディアスが従来のMSと違い、コックピットが頭部に設置されたのは、腹部スペースが新型ジェネレーターと周辺機器に占領されたためである。宇宙空間や低重力の月面では運用に問題はなかったが、地上部隊での配備にはいささか不便があったようだ。リック・ディアスを運用したカラバでは、パイロットを降ろすための専用のクレーンを用意した。

 頭部センサーはモノアイ式を採用しているが、モノアイ式のカメラを採用しているMSの中でも珍しく、広角式レンズを採用している。頭部にコックピットが移され、通常サイズのカメラを収められなくなったためである。
 広角レンズ式モノアイは視界の端が歪むため、コンピューターで補正して映像を投影する。一見してMS用としては不都合の多いシステムだが可動部分が少ないため、メンテナンスが容易である。
 広角レンズ式モノアイはAE社が開発したもので、このカメラを採用している機体はリック・ディアス系の他にガンダリウムγ合金の技術提携において交流があったアクシズのAMX-003ガザCをはじめとするガザ系MSだけで、後発機にこのシステムが採用されることはなかった。

 リック・ディアスの形式ナンバーは、当初はRMS-099とされていた。これは連邦(ティターンズ)の査察を欺くための機密保持の産物で、RMSナンバーは連邦軍の量産機ナンバーである。開発拠点を示す上二桁の09の番号は連邦軍内に存在しない。エゥーゴの正式活動後は、制式ナンバーであるMSA-099に改められた。
 三桁目が0を与えられる連邦軍MSナンバーは、旧ジオン軍捕獲MSに一時的に与えられるもので、099ナンバーは形式番号不明機を一時的に区分するために設けられていた枠であったという。

 GPMSとの技術的な関連性を隠蔽するためのジオン系MSに酷似した外装、偽装ナンバーRMS-099からも分かるように、エゥーゴ最初のMSは並々ならぬ機密保持や防諜処置が施されていたことが分かる。

 リック・ディアスはロールアウト後、エゥーゴが新造した強襲機動巡洋艦「アーガマ」に三機が先行して配備され、サイド7で発生したグリーン・オアシス事変において初めて実戦投入された。この時、サイド7の防空部隊に配備されていたRMS-179ジムIIやティターンズ所属のRMS-106ハイザックを大きく圧倒した。

 基本的にリック・ディアスは量産型MSだが、高性能故に生産性が悪く、少数生産であった。また、ティターンズとの戦闘が激化するとリック・ディアスの生産だけでは戦力が追いつかなくなり、エゥーゴではリック・ディアスを補佐する形でMSA-003ネモを主力機として採用した。
 リック・ディアスは主に一年戦争やデラーズ紛争を経験した熟練パイロットや、旧ジオン軍での勤務経験のあったパイロットに支給されることが多かった。

 リック・ディアスはグリプス抗争終結と同時に生産を終了したが、ポテンシャルの高さに注目した地球連邦軍首脳部は生産性を向上させ、ジム系MSとのパーツ共用度を高めたMSA-099-2リック・ディアスIIを次期連邦軍主力機として選定にかけた。また、特殊部隊専用機としてMSA-099Bを限定的に採用している。

 MSA-099Bシュツルム・ディアス

 シュツルム・ディアスは、A型(リック・ディアス)を元に強襲作戦や防衛戦、制圧戦に任務を特化したスペシャル仕様である。機体本体の性能はA型とほぼ変更はなく、OSの変更とオプションのキット・パーツだけでA型からB型に換装することも可能で、リック・ディアスの製造ラインにおいて一定の割合で製造された機体である。

 A型との相違点は背部バインダーが大型化され、メガ粒子砲と専用のサブ・ジェネレーターを内蔵したグライ・バインダーにある。
 元々、グライ・バインダーはMSA-001エプシィ・ガンダムが装備していたもので、同機からスピン・オフされた産物である。

 B型が開発された背景にはティターンズとの戦闘が激化する中、エゥーゴの重要な支持基盤であるスペース・コロニーや月面自治都市がティターンズの無差別テロに晒される局面が生じてきたためで、これらのコロニーやエゥーゴの拠点を防衛するべく、シュツルム・ディアスは生まれたのである。

 グライ・バインダーにメガ粒子砲が搭載されたのも、コロニーへ攻撃をかけるティターンズMS部隊や艦船に一撃離脱戦法を仕掛け、中央から粉砕する戦法から成っている。また、奇襲作戦では大型グライ・バインダーの大推力に物を言わせて、密集行動をとる敵MS部隊や艦隊を奇襲する。
 シュツルム・ディアスの運用思想は前大戦末期にジオン公国軍が開発したMS-18Eケンプファー、デラーズ紛争時にAE社が、連邦軍に依頼されて開発したRX-78GP04ガーベラなどの強襲用MSなどの影響を受けているといってもいいだろう。

 大型グライ・バインダーはA型のバインダーよりも推力の増強が計られ、先端にメガ粒子砲と電力供給のための小型ジェネレーターとコンデンサー、サポート用Eパックまでも搭載する多機能なものである。
 そのためか、推進剤の積載量はこれらの装備品追加のためにA型と大差はなく、作戦時間延長のためにプロペラント・タンクを装備する場合もある。これはビームピストル充電スペースを撤去して装着される。
 ちなみにシュツルム・ディアスのメガ粒子砲用サブ・ジェネレーターはMSZ-010ZZガンダム、MSA-0011Sガンダムなどの合体可変を行うTMSの小型ジェネレーターとコンデンサにフィードバックされることになる。

 また、唯一の欠点としてバインダーが大型化したため、可動肢としてはA型のバインダーよりも劣っている部分があり、運動性を犠牲にしているが、B型の主任務は大推力に物を言わせて一撃離脱戦や強襲戦を行うため問題とされなかった。また、護衛機としてA型やMSA-007ネロが随伴するなどの対策も練られていた。

 バインダーは元々、リック・ディアスに装備されていたもので、プロペラント・タンクとバーニアが一体化し、なおかつムーバブル・フレーム接点によってバックパックに接合され、可動肢として機能する。バインダーがAMBAC機動することによって、ずんぐり体型にも関わらず、リック・ディアスは高い機動力を得ることができたのである。四肢以外の可動構造物によるAMBAC機動は、第二世代MSの大きな特徴の一つである。

 シュツルム・ディアスは0087年中頃からAE社のリック・ディアスの製造ラインで製造が開始され、すでに配備されたA型からもB型への変更が可能なように、改修キットが用意された。
 ちなみにシュツルム・ディアスは空間戦オンリーの機体で、大気圏内での運用は考慮されていない。あくまで宇宙空間においてその威力を発揮する。

 シュツルム・ディアスはスウィート・ウォーター駐留の部隊や、補給艦ラビアン・ローズ、エゥーゴの外周艦隊などに配備され、制圧戦や強襲作戦に投入された。エゥーゴが連邦軍の覇権を握ったダカール宣言後は、ティターンズに味方する反エゥーゴ派連邦軍部隊の武力制圧や、殲滅作戦にも投入された。

 0088年初頭に発動したメールシュトローム作戦では、少数のシュツルム・ディアスでコロニーレーザー奪取のために突撃隊を編成、エゥーゴ主力部隊のために血路を開いたことでも知られている。
 また、同年3月のエアーズ市制圧戦ではα任務部隊を裏で支援し、エアーズ市の発電施設を制圧するなど、その任務はかつての英国SASや独GSG9のような特殊コマンドに似ていた。

 また、第一次ネオ・ジオン抗争時にはAE社とネオ・ジオンの裏取り引きによって多数のシュツルム・ディアスがジオン共和国経由で輸出され、共和国軍併合後のネオ・ジオン軍でも使用されていたことが確認されており、ネオ・ジオンではサイド3首都コロニー「コア3」の防衛用MSとして制式採用されていた。

 こうして、シュツルム・ディアスはエゥーゴ(地球連邦軍)とネオ・ジオンの双方で使用されたのである。このことから分かるように、シュツルム・ディアスが防衛戦においては優秀なMSであった証明とも言える。
 第一次ネオ・ジオン抗争終結後はこれらの実績を踏まえ、地球連邦軍の特殊部隊専用の特殊MSとして少数ながらも採用され、先の抗争での戦没分を補うために再生産も行われた。

 
MSA-099Cリック・ディアス陸戦仕様

 MSA-099Aリック・ディアスの大気圏内仕様。主機を熱核ジェット・エンジンに換装し、バインダーからスラスターを撤去し、プロペラント・タンクと冷却用ラジエーターとしている。また、砂漠地域での作戦行動を考慮して、防塵処置を施しているのがC型と呼ばれる陸戦仕様である。

 ジャブロー降下作戦に投入され、作戦終了後、地上の反連邦組織「カラバ」に譲渡された数機のリック・ディアスが大気圏内で使用するために改修された。AE社も大気圏内での活動を想定したキットを用意していたこともあり、改修は容易であった。
 
 エゥーゴ仕様との外見上の違いはほとんどなく、陸戦では不要とされた肩部バーニアが撤去された程度のものである。これらの改修によって陸上での行動範囲が大幅に向上した。カラバでは後にAE社からリック・ディアスの供給を受けており、先行してジャブロー戦後に譲渡された機体と合わせて、合計12機のC型を運用していた。

 エゥーゴから数機が譲渡された当初、カラバはリック・ディアスの運用ノウハウが乏しく、また、頭部にコクピットがあることから運用に手間取っていたが、AE社やエゥーゴからの指導もあって、C型への改修や乗降用クレーンの用意などによって序々に使いこなしていったという。

 C型はカラバに参加していた前大戦時のエースパイロット、アムロ・レイ大尉の戦列復帰後初の愛機として知られており、MSK-008ディジェへ機種転換するまでの短い間であったが、レイ大尉とも因縁の深い赤い彗星カラーに塗られたリック・ディアスに搭乗していた。

 ちなみにカラバ内ではMSK-099ナンバーが与えられ、前線のパイロットからはカラバ・ディアスという愛称で呼ばれていた。

 
MSA-099Kキャノン・ディアス

 MSA-099Aリック・ディアスの中距離砲撃戦仕様。RX-77ガンキャノンの運用思想が反映された機体で、中距離支援用MSを保有していなかったエゥーゴが、グリプス抗争時に急造した砲撃戦型MSである。

 肩に二門の実弾式のキャノン砲を装備し、装甲強化のために腕部と脚部の一部がチョバム・アーマー式に換装された。当初はビームカノンの装備も検討されたが、Bプラン(シュツルム・ディアス)との兼ね合いで、テスト的な意味合いもあって実体弾カノンを装備した。カノン砲は各種弾頭を装填可能で、ミッションに合せて粘着弾や散弾などの特殊弾を装填することが可能である。

 K型は主として月面にあるエゥーゴ拠点などの防空用MSとして配備された。バインダーによるAMBAC機動で、重鈍な砲撃戦用MSというイメージとは裏腹にその機動力は高く、また、ペイロードの高さから多数の弾薬を搭載し、火力は高い。
 ちょうどB型がロールアウトした時期と同期であり、すでに完成して実戦配備されていたA型から、10機がK型に改修され、ごく少数が実戦投入が行われた。

 中距離砲撃型MSという前大戦時の思想が、グリプス抗争時のMSの高性能化によって陳腐化しつつあったかのように思えたが、防空任務やゲリラ戦闘用としてエゥーゴ内では見直されつつあった。
 特に月面やコロニーなどの拠点防衛のためのMSは、それらの場所を支持基盤とするエゥーゴには欠かせない機体だった。

 キャノン・ディアスはメールシュトローム作戦にも多数が投入され、ティターンズやアクシズのMS部隊に多大な損害を与えた。特にリック・ディアスとの連携戦ではその性能をいかんなく発揮したのである。

 
MSA-099Rリック・ディアス改

 MSA-099Aを母体に改修された試作機。グリプス抗争中盤からティターンズはTMSを多数戦線に投入しており、これらの高機動、重火力の敵MSに対応するべくリック・ディアスの高機動型として改修された機体がR型である。

 元々、リック・ディアスは量産型MSとしては申し分のない高い機動力と運動性を持っていたが、ティターンズのTMSに比べると不安が残っていた。それらTMSの大半は試作機であり、配備数は決して多くはなかったが、RX-139ハンブラビなどの生産性を重視したTMSの配備なども伝えられていたことから、エゥーゴ指導部では敵TMSに対抗できる高機動型MSの開発をAE社に依頼した。R型はそうした要求で誕生した。

 改修にはZ計画総合主任を務めるK・フジタ技師が関わっており、元のリック・ディアス開発チームは数人の開発者をフジタ技師のもとに派遣して助言を与えるに留まった。この頃、リック・ディアス開発チームはMSZ-007レイピアの開発に携わっており、リック・ディアスの改良まで手が回らなかったものと思われる。そのため、MSA-099Rの他にフジタ技師開発機であることを示すMSF-099ナンバーも用意されていた。

 アンマンに置かれているリック・ディアス生産ラインから回されたA型をベースに脚部へのバーニアの追加増強、バインダー・バーニアの推力強化を施し、併せてジェネレーター出力も向上した。そのため、胸部装甲は連邦系MSに多く見受けられる廃熱ダクトを装着したモジュールに換装されている。

 また、防御力低下が指摘されていた肩部に増加装甲を装着するなど、全面的に改修が施されているのが特徴と言えよう。そして、関節部の駆動システムを流体パルス式から、連邦で多く採用されているフィールド・モーター式へと変更された。これはフジタ技師が試験的に行ったもので、連邦系技術との互換性をテストしたものと思われる。

 武装は二連装ビームライフルと、新たな武装が用意された。これは後のMSZ-010ZZガンダム用のダブル・ビームライフルの原型となった。

 頭部ユニットはA型と同様、広角式モノアイを採用していたが、試験的ではあるがツイン・アイ、V型アンテナを採用したガンダム型ヘッドも用意されていたという。このガンダム型頭部ユニットは試作4~6号機に装備され、テストされた。これはティターンズとの抗争が激化してエゥーゴの活動が表面化し、ジオン系MSに偽装する必要性が薄れたためでもある。

 0087年秋頃にはA型をベースに改修した試作機が6機完成し、月面においてテストが行われたが、ダカール宣言によるエゥーゴの連邦軍掌握や、その後の大幅な戦略変更に伴いR型の量産化はキャンセルされた。
 すでにエゥーゴではMSZ-006C1Zプラスを量産することを決定していたこともあり、TMSに対抗するための通常型MSの開発意義が失われたのである。

 一旦は開発が中断されたR型であったが、その後、思わぬ形で再開されることになる。エゥーゴ指導下の連邦軍による次期主力MS選定に、リック・ディアスの発展型が提出されることになったからである。
 連邦軍首脳部はグリプス抗争で投入され、高い戦果を挙げていたリック・ディアスの高いポテンシャルに着目しており、旧式化したRGM-79RジムIIRMS-106ハイザックに代わる連邦の新主力機としてリック・ディアスの改良生産型の導入を検討していた。
 そのためには、リック・ディアスの欠点であった低い生産性を改良し、RGM系MSとのパーツ共用度を向上させるなどの改設計を施さなければならなかったが、その開発母体としてR型が選ばれたのである。
 
 R型をベースに、連邦軍規格への再設計を行った機体がMSA-099-2リック・ディアスIIとなる。
 
 MSA-099-2リック・ディアスII

 MSA-099Aリック・ディアスはエゥーゴの開発第一号MSで、初の量産機となった。量産型MSとしては高水準を誇っていたが、生産性が悪いことからエゥーゴはリック・ディアスを補う形でMSA-003ネモを主力MSとした。
 グリプス抗争勃発当初、短期決戦を目指していたエゥーゴではMSの大量生産を行わず、リック・ディアスも長期使用を視野に入れず、量産を考慮した設計ではなかったのである。

 しかし、リック・ディアスの高いポテンシャルに目をつけた地球連邦軍首脳部は、次期主力MSとして生産性を高めた改良型の開発をAE社側に依頼した。
 この時、ダカール宣言によって地球連邦軍はエゥーゴ支持に傾いており、軍上層部はエゥーゴ向けに開発した高性能MSに興味を示していたこともあり、百式やネモ、メタスといった多くのエゥーゴ製MSの改良型が、連邦軍の制式査定にかけられた。

 連邦軍での制式化に際して、AE社では連邦軍の現行機であるRGM系MSとのパーツ共用度を高め、なおかつ生産性と低コスト化を計るべく再設計を施した。それがRGM系とRD系の折衷案MS、MSA-099-2リック・ディアスIIである。開発ベースは高機動型であるMSA-099Rを元にしており、R型と一部設計を共通している。

 最大の改良点はコックピットを腹部に戻したことにある。技術の進歩でジェネレーターの小型化に成功し、腹部にコックピットのスペースが確保できたためである。連邦軍の量産型MSは全て腹部にコックピットを配置しており、運用の繁雑化を避けるための妥当な変更であった。

 そして、生産性を高めるべく各部パーツ、外装甲の工程が大幅に簡素化され、徹底的な量産化改良が施された。それでいて、従来のリック・ディアスのパーツ共用も可能で、エゥーゴのリック・ディアスの生産ラインをそのまま転用し、設備投資の削減を図った。

 腕部ユニットはRGM-88AヌーベルジムIIIと設計を共用し、パーツ調達を容易にした。また、コクピットが腹部に移ったために、頭部ユニットのメイン・センサーが広角式モノアイからRGM系スタンダードのバイザー式に改められ、従来のディアス系MSとは違う印象を与えている。

 これらの改良によって生産性は格段に向上し、生産コスト自体も軽減させることに成功した。RGM系との妥協案というレッテルが張られたものの、何より現行機であるヌーベルジムIIIとのパーツ共用が可能という利点が軍上層部にとっては魅力的であった。
 整備性の良さと条件の悪いゲリラ部隊での運用でも充分に稼動可能なリック・ディアス系MSは、内戦で疲弊した地球連邦軍の台所事情に非常にマッチした機体であったと言えよう。

 しかし、第一次ネオ・ジオン抗争が終結すると疲弊した軍備の再編よりも経済復興が優先され、ティターンズ時代からの反動から軍備が縮小される傾向にあった。
 その中で次期新型MSを採用する予算も限られ、次期主力機選定では低コストで調達可能なRGM-89ジェガンとの査定に敗れ、結局本格採用されることはなかった。

 リック・ディアスIIはジェガンよりも高性能であったが、コスト面でジェガンに大きく水をあけられたことや、上層部が使用実績の長いRGM系MSの信頼性を優先したこともあり、次期連邦軍の主力機の座を得ることができなかったのである。

 リック・ディアスIIは先行量産型が50機ほど生産され、エゥーゴ系の影響が残る月面艦隊に試験的に配備されるに留まった。もし、連邦軍での制式採用が決定した場合、RRD-88という制式ナンバーが新たに与えられる予定であったという。

 MSK-008ディジェ

 地球上での反連邦組織カラバがMSA-099Aリック・ディアスのムーバブル・フレームとジェネレーターを流用し、外装を再設計した機体で、カラバのMS部隊指揮官で前大戦時の連邦軍の英雄、アムロ・レイ大尉専用に調整された言わばレイ大尉専用のMSであり、カラバMS部隊の旗機として開発されたカスタムメイド機である。

 カラバでは先んじて大気圏内仕様のMSK-099リック・ディアスを運用していたが、これを元にカラバ独自のMS開発が進んでいた。月面のAE本社からは開発スタッフがカラバに派遣され、ナガノ技師のファクトリーから供与されたMSN-00100百式を陸戦仕様に改装したテスト機、MSK-001を用いて地上戦でのデータ収集も開始されていた。このテスト機から得られた基礎データを元に、ディジェの設計が行われている。

 ムーバブル・フレームとジェネレーターはリック・ディアスのものを流用しているが、外装は一新され、MS-14ゲルググRX-78ガンダム系列のフォルムを融合させた独特のデザインとなった。これはディジェの外装設計をまとめた技師が旧ジオニック社出身であったことも無関係ではない。

 外装がリック・ディアスから大幅に変更された理由として、大気圏内での運用に合わせて廃熱システムを一新しなければならず、新しいシステムに適応した外装甲の再設計が施されたのである。
 リック・ディアスの廃熱処理は、発生した熱をムーバブル・フレームや外装に流入させ、自然冷却による処理方式を採用していたのだが、空間ではともかく、陸上での運用ではこのシステムは不都合が多かった。
 ほぼA型から変化のない陸戦型リック・ディアスでは背部のAMBACバインダーを空冷式ラジエーターに換装して、苦肉の策を取っていた。

 外装から再設計されたディジェでは連邦式に則り、胸部に廃熱ダクトを増設した。また、ジェネレーター出力強化と稼動時間を延長させるために背部に巨大な放熱フィンを設置して廃熱対策に備えた。

 腕部パーツの一部はMSK-006Zプラスと共通構造となっており、コスト削減に一役買っている。カラバは空軍部隊にZプラスの導入を準備していたため、パーツのテストという意味合いもあった。

 頭部に置かれたコックピットのレイアウトはリック・ディアスと同一で、腹部には欺瞞用の疑似コックピット・ハッチがある。これは敵MSのビームライフルの照準を惑わすために施されたものだが、どれほどの効果を挙げたのかは不明である。
 また、肩部にはムーバブル・フレーム接点が置かれており、アムロ・レイ専用機には右肩にシールド、左肩にウェポン・ラックが装着され、様々な武装を装着することが可能だ。
 主として陸戦を想定しているが、核熱ロケットエンジンへの換装や生命維持装置の増設によって、簡単な改修で空間戦に対応させることも可能となっている。これは主戦場が宇宙へ移った場合を想定した場合のものであった。

 大気圏内用のMSとしては高性能の部類に入り、前大戦のエースでニュータイプと目されるアムロ・レイ大尉専用機として申し分ない性能となった。
 そして、操縦系にはアムロ・レイ大尉のために調整されたバイオ・センサーが組み込まれていたとも言われているが、極秘事項らしく、詳細は不明である。

 0087年中頃にAE社カリフォルニア工場で3機が製造され、そのうち2号機がカラバの空中拠点であるガルダ級輸送機「アウドムラ」に配備された。ディジェはカラバのMS部隊の旗機として、キリマンジャロ攻略作戦やダカール議会制圧作戦、ニューギニア制圧作戦などのカラバの重要な作戦において投入され、パイロットの士気を高揚するのに一役買った。

 後にアムロ・レイ大尉はMSK-006Zプラスに機種転換するが、作戦によっては陸戦主体も多かったため、しばらくの間は作戦によってディジェとZプラスを使い分けていたようである。0087年12月のニューギニア制圧作戦では第一段階ではZプラス、第二段階ではディジェに搭乗して作戦に従事している。

 また、抗争後半には予備機扱いであった3号機も実戦投入され、カラバのエースパイロット、アバルト・クレイマン大尉の愛機として活躍していた。


 
MSZ-007レイピア

 MSZ-006Zガンダムの発展強化型で、MSA-099Aリック・ディアスから発展したZガンダムの第二段階MSである。Zガンダムが、ティターンズから奪取したRX-178ガンダムMkIIのムーバブル・フレームを参考に完成したのに対し、レイピアはMSA-099Aリック・ディアスのアビオ二クスを元にしている、ある意味で好対照な機体と言える。

 エゥーゴとAE社によるZ計画はZガンダムの完成によって終了したかに見えたが、ティターンズに地球圏最大の巨大MS、MRX-010サイコガンダムMkIIが実戦配備された情報が入ると、エゥーゴ側ではサイコガンダムに対抗可能なMSの開発をAE社に依頼した。これは事実上のZ計画の再開と続行を意味していた。
 Zガンダムに次ぐプランとして高い火力を誇る重TMSの開発が開始されていたが、同時にすでにロールアウトしている機種の発展強化案も平行して行われることになった。AE社では重火力TMS、後のθガンダム案の開発に対する一種の保険としてアッパーバージョン案、いわゆるη案を提案したわけである。

 θガンダム案は20mクラスの機体に重火力を盛り込むために、コンデンサーとジェネレーターの小型化とそれらの複数搭載など、技術的にも冒険を行わなければならず、開発にも時間がかかる。場合によっては計画自体が頓挫する可能性すらあった。もし、この案が間に合わない局面を考え、従来機の発展プランも同時に始動させたのだ。

 Zレイピアは後のMSZ-010やMSA-0011の開発が遅れた場合の保険であったのである。Zガンダムの強化型であるにも関わらず、アナハイムガンダムにおける主幹機であることを示すギリシャ文字によるコードネーム、ηガンダムという名称で開発が進められたのはこうした経緯があった。
 
 Zレイピアの基本設計やウェーブライダー形態は先発機であるZガンダムとほぼ同一だが、背部フライング・アーマーが大型化され、固定武装として大腿部にビーム・カノンをそれぞれ一本づつ、計二本を装着した。これは同時期にカラバ主導で開発が進められていたMSK-006Zプラスの設計を参考にしている。
 
 また、ミッションに合せて空間戦用の高機動バインダーや可変形態のみに運用を限定したブースター・ユニット、ビーム・カノン装備のバックパックなど、いくつかの増加ユニットが用意された。これらのユニットをミッション毎に換装するすることによって、まったく違う機動兵器として運用することが可能となった。

 0088年初頭、AE社のアンマン工場において一機がロールアウトし、評価試験を兼ねてエゥーゴに実戦配備が行われた。この頃はすでに内戦も山場を迎えており、エゥーゴ側も多くのガンダム・タイプ試作機を実戦投入していた。Zレイピアもそのうちの一機であったと思われる。

 Zレイピアはテストでも良好な結果を残したが、一方でエゥーゴと連邦軍ではMSZ-006C1Zプラスの制式採用を決定した他、MSZ-010ZZガンダムの開発もグリプス抗争には間に合わなかったものの、ネオ・ジオンとの武力衝突には充分に間に合い、プロトタイプが実戦配備されたことからZレイピアを始めとするアッパーバージョン案はことごとく開発中止の決定が下されてしまう。

 大気圏内専用機から再設計されたZプラスC型はZレイピアほどの突出した性能を持たなかったが、生産コストが他のTMSよりも安価であったことから注目を浴び、限定的ながらも量産化され、一方でコンセプトが重なるZレイピアは開発意義を失い、予算の関係から準生産されることはなかったのである。
 

 

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