ネモ系MS
一年戦争終結後、地球連邦軍が主力機として配備していたRGM-79RジムIIの発展強化型としてAE社で開発されたMS。ジム系MSでは初めてムーバブル・フレーム構造を採用し、後のRGM-88ヌーベルジムIIIやRGM-89ジェガンなどの連邦軍量産型MSの基本となった機体である。
火力は若干貧弱の感はあるものの機体バランスがよく、酷評とは裏腹に用兵側からの評判は高い。グリプス抗争時にはエゥーゴが主力機として同機を多数配備しており、その後もコロニー駐留部隊や月面自治都市の警備部隊などで使用された。
機種一覧
MSA-003Aネモ
MSA-003Bネモ後期生産型
MSA-003Bネモ(リーア軍仕様)
MSA-003C陸戦型ネモ(MSK-003)
MSA-003Nネモ・ハイマニューバー
MSA-003Tネモ・トレーナー
MSA-004ネモII
MSA-004KネモIII
MRS-003ノパディ
MSA-003Aネモ
RGM-79RジムIIの発展強化型としてAE社が独自に開発を進めていたMSで、ジム系MSでは初めて本格的にムーバブル・フレーム構造を採用した機体。
AE社は0083年のガンダム開発計画で主導権を握り、連邦軍承認の元でMS開発を続けていたが、デラーズ紛争時における不祥事や地球至上主義を掲げたティターンズの台頭によって、MS開発の主流からは外された形となった。また、軍内部で勢力を強めつつあったティターンズが地球企業や軍直轄の兵器開発局を優遇して意図的なAE社外しを行い、新型機開発は連邦軍の兵器開発局やNT研究所が主流になりつつあった。
AE社はそうした軍工廠主導の新型機開発計画にコミットするか、軍工廠へ納入する兵器用の電子機器やジェネレーターの委託生産、あるいは在来MSの性能向上を伴う改修工事を請け負うことで軍内部へのシェアを保っていた
一方で、軍上層部はAE社のMS工場を単なる「生産拠点」の一つとしか見なしておらず、高い技術力を提供していたAE社は連邦軍に対して不満を抱きつつあった。
AE社は自社の高い技術力を生かすべく、軍の予算や承認下での開発によらない独力でのMS開発を続けた。AE社には吸収合併したジオニック社が持っていた技術と、ガンダム開発計画で蓄積されたノウハウもあり、独自に研究を続けることが可能な環境下にあった。
後にこの企業努力はエゥーゴとの共同プロジェクト「Z計画」に統合され、ムーバブル・フレーム技術の進歩と、アクシズからもたらされた新素材ガンダリウムγ合金によって、その技術力はガンダム開発計画時よりも高いものへと昇華することになる。
ネモは「Z計画」の初期における標準量産機開発計画に沿って開発が行われたもので、エゥーゴ内では当初、コロニーや月面都市の警備用や拠点の迎撃用MSとして計画されていた。
開発当時、ティターンズがRGM-79Q/RMS-174ジム・クゥエルを投入しての行き過ぎた治安活動が問題化していたこともあり、0085年に発生した30バンチ事件などの大量虐殺を未然に防ぐために、コロニーや月面自治都市などの防衛用MSの開発が急務となりつつあった。ネモはそうした背景の中で、安価で迎撃用として使用できる機体として開発されたのである。
量産機としてはムーバブル・フレームを本格的に導入し、第二世代MSとしてティターンズの現行機に対するアドバンテージとした。ネモはハイザックやジム・クゥエルなどの外骨格機に対して基本性能では圧倒しており、機体バランスもよく、迎撃や警備などの軽任務を充分にこなせ、実戦経験の少ない新兵でも簡単に操縦できるMSとなった。
一般にネモはジムIIの発展強化型とされているか、バックパックの設計は大戦時に開発されたRGM-79SPジム・スナイパーIIのものを流用しており、大戦時に開発された複数のジム系バリエーション機を参考に開発が進められたことが伺える。
ネモの初期生産型は0087年初頭から生産が開始された。また、エゥーゴが画策していたジャブロー降下作戦への本格的投入も検討されており、装甲材質がガンダリウムα合金で構成されていた。
当時はまだエゥーゴの最高機密であった新素材ガンダリウムγ合金を使用することが躊躇われたため、ルナ・チタニウムのAE社での登録商標であるガンダリウムα合金を使用していた。投入が予定されていたジャブロー戦などでネモなどの機体がティターンズ側に渡り、γ合金の精錬データが漏洩することを恐れての処置であった。
しかし、AE社はエゥーゴの主力機用として開発を進めていたMSA-002ドミンゴを土壇場で供給先をティターンズに変更し、RMS-108マラサイと名称変更した上で初期ロット分を無償供給するに至った。ドミンゴにはガンダリウムγ合金を装甲材に使用していたため、ネモへの偽装工作は無為に終わってしまう。内紛でティターンズが勝利した場合を考えたドミンゴの譲渡であったが、Z計画を推進していたAE社の各工場へのティターンズの強制捜査を牽制する狙いもあったようだ。
ネモが後世、エゥーゴにとってコストに見合わない機体であったとの評価が下される理由の一つとして、ドミンゴを主力機として配備出来なかったことが挙げられるが、他にもガンダリウムγよりも生産コストの高い高級素材、ガンダリウムα合金を使用し、ネモの一機あたりの生産コストが高騰したことも一因として挙げられる。
しかし、伝説のRX-75/77/78の各機に使用されていた素材だけあって防御力は高く、コストの高騰化が意外にも高い生残性へと繋がったことは見逃せないだろう。
結局、当初は迎撃用MSとして計画されていたネモはドミンゴの不採用によって、一転してエゥーゴの主力MSとして採用されることが決まり、グリプス抗争において大量投入されることになった。
多く指摘されるネモの火力不足の原因は、元々は迎撃用MSとして高い攻撃力や火力よりも汎用性や整備性を重視し、練度の低いパイロットであっても最大限の性能が引き出せるように設計されたためであり、ネモ自体の性能が低いわけではなく、あくまで用兵側の使用目的にズレがあったからに過ぎない。
もし、当初の目的の通り、エゥーゴが主力機としてドミンゴを使用し、主力機の支援や拠点、コロニーへの迎撃任務用などの本来の任務にネモを使用していれば火力不足、コストパフォーマンスの低さが露呈することはなかったと思われる。
ガンダリウムα合金を装甲材に使用した初期生産型はA型に分類され、生産された110機のうち、80機余りがジャブロー降下作戦において本格投入され、制圧戦において連邦側の旧式機を圧倒した。
ジャブロー戦に投入された機体は作戦終了後、全機がカラバへ譲渡され、MSK-003ネモとして地球上での作戦に継続投入された。
その後、製造コスト削減のために装甲材質をガンダリウムγ合金製に変更した戦時型(B型)が量産されることになり、エゥーゴの主力MSとして活躍することになる。
火力不足という評価だけが残るネモだが実際には整備性は良好で、操縦も容易いことから現場のパイロットや整備兵からの評価は高く、また、在来機であるRGM-79RジムIIとの互換性も高いことから兵站面でのメリットが高く、大量配備を実現することができた。用兵側からはジム系とハイザック系の良いところを併せ持つ佳作機と評価した。
ジムIIは当時、旧式化しつつあった機体とはいえ地球圏には一万機近くが配備され、パーツ調達がしやすかったことや、エゥーゴでも補助戦力の一環としてジムII多数保有していたことから見ても、ネモを主力機として使用するには決して不都合ではなかった。
また、安定したジェネレーター稼働率を持ち、前線での稼動率も高く、特に補給が少なく、整備環境の良くないゲリラ部隊での運用に適していたことも整備性の高さを証明する一例となっている。
このネモ系の安定したジェネレーターは後のRGM-88BヌーベルジムIII後期生産型や、RGM-89ジェガンにも搭載され、信頼性の高さを示している。
MSA-003Bネモ後期生産型
エゥーゴの主力MS、MSA-003ネモの後期生産分にはB型のバリエーション記号が付く。当初、ジャブロー降下作戦に投入されたネモは装甲材をガンダリウムα合金を使用した初期生産型であった。
ガンダリウムα合金とはルナ・チタニウム合金のAE社での登録商標名である。ルナ・チタニウムは前大戦時に活躍したRX-78ガンダムに使用された装甲材として知られており、戦後、AE社がガンダリウムαとして登録商標したものである。
エゥーゴで当初、迎撃任務やコロニー警備用として採用する予定だったネモには当時、最高機密であったガンダリウムγ合金の技術漏洩を防ぐために従来のガンダリウムα(ルナ・チタニウム)が敢えて使用されていた。
ガンダリウムαは生産コストがγ合金よりも高くつくが、防御力ではγよりも高いことで知られており、RX-78ガンダムもこの材質を装甲材に使用していた。このことから、ガンダリウム合金という登録商標で呼ばれるようになる。
エゥーゴは当初、MSA-099リック・ディアスとMSA-002ドミンゴを主力機として採用する予定であった。これらの機体には生産性が向上したガンダリウムγ合金が装甲材の素材として使用されていたが、リック・ディアスは生産性が悪く、主に熟練パイロットを中心に支給されていた。
一方で、エゥーゴの主力MSとなるはずであったドミンゴはMS-06ザク系の発展型であり生産性が高く、コストパフォーマンスに優れた機体だったものの、AE社上層部の思惑もあり供給先が敵対組織であるティターンズに変更されてしまう。
AE社役員会ではティターンズが抗争に勝利した局面を想定したことや、Z計画が進んでいたグラナダやフォン・ブラウン、アナハイムにあるMS工場のティターンズによる強制捜査や報復爆撃を避けるために、ティターンズへ恩を売る必要があった。
ドミンゴはティターンズが独力での精錬に失敗したガンダリウムγ合金を装甲材に使用していることから、ティターンズに不可侵を結ばせるだけの価値があったのだ。
そして、名称をRMS-108マラサイに変更した上で、ダカール宣言までの短い間であるがティターンズへ供給されることになった。
そのため、ガンダリウムγ合金の精錬技術がマラサイ経由でティターンズ側にも伝わり、ネモに対する技術漏洩対策をあえて行う必要がなくなったのである。ネモは技術漏洩を防ぐために従来のガンダリウムα合金を使用していたため、RGM系列としては生産コストが高く、大量生産の妨げとなっていた。
AE社上層部ではネモのエゥーゴへの配備を迅速に行うべく生産性を高め、コストを下げるために装甲材質をガンダリウムγ合金に改めた後期生産型への修正が行われた。
それがMSA-003Bネモである。外見は初期生産型のA型との差異はなく、若干のジェネレーターの改良が行われた程度である。当然のことながら防御力は多少低下したが、性能の差はほとんどなく、生産コストを下げることに成功している。
カラバで採用されたMSK-003陸戦型ネモの後期量産モデルや、抗争終結後、余剰化したネモを教習用MSとして改修したMSA-003Tネモ・トレーナーなども、ガンダリウムγ合金に変更され、大量生産が行われたB型がベースとなっている。
ジャブロー降下作戦終了後より主力部隊への配備が開始され、エゥーゴの主力機となった。ジャブロー降下作戦後に投入された機体の大半はB型で、このB型から高機動型のN型、全面改装型のMSA-004シリーズへと発展していくのである。
エゥーゴ向けB型の生産は0088年4月には終了したが、低コストだったことから大量生産され、エゥーゴの他に月面自治都市の警備部隊やリーア軍にも供給され、ネモの本来の任務であるコロニーや月面都市の警備用MSとして使用された。
MSA-003Bネモ(リーア軍仕様)
MSA-003ネモのサイド6警備部隊「リーア軍」仕様。サイド6は不可侵の存在である木星船団や月面都市との政治的繋がりが強く、前大戦時から連邦にもジオンにもつかない中立コロニーとして栄えてきた。
そして、中立を維持するために例外的に独自の警備部隊を持つことを認められた。それがリーア軍である。大戦時は連邦軍とジオン軍双方から装備を譲り受け、大戦中期からリーア軍も小規模ながらもMS部隊を持っていた。
当初はジオン公国から輸入した旧式のMS-05Bザクが配備されていたが、戦争が連邦優勢になると今度は連邦軍からRGM-79Gジム・コマンドの供給を受け、MS部隊の質を向上させた。
大戦後もサイド6は永世中立を堅持し、一年戦争中に編成されたリーア軍もそのまま維持された。その後もリーア軍の主力機であるジム・コマンドにリニア・シートなどを組み込み、RGM-79RジムIIと同じ改良を施して使用し続けていた。
しかし、グリプス抗争が勃発した0087年になるとジム・コマンドも性能的に旧式化しつつあった。ジム系MSの中でも高いポテンシャルを持つジム・コマンドだが、さすがにムーバブル・フレームとガンダリウムγ合金製装甲を装備した第二世代MSに性能的に追いつかなくなり、リーア軍首脳部は新型MSの導入を検討していた。
グリプス抗争当時、サイド6は連邦政府内に太いパイプを持っていたものの、いつティターンズの毒ガス攻撃にあうか分からない状況に置かれていた。永世中立という形でスペース・コロニーの自治を実現させているサイド6政庁と地球至上主義を掲げ、スペースノイドの独立を認めないティターンズとは主義的に相容れない間柄であったためである。
ましてや、実戦経験がほとんどないリーア軍は実戦部隊であるティターンズに敵うほどの力量を持っておらず、加えてMSの旧式化、パイロットの技量不足が深刻な問題となっており、サイド6首脳部は危機感を抱いていた。
その危機的状況はエゥーゴが地球連邦軍の主権を握るきっかけとなったダカール宣言において決定的となり、政府や軍の支持を失い、暴走したティターンズがサイド6へ攻撃を仕掛けないという保証はなくなったのである。
表向き中立を表明し、ティターンズにもエゥーゴにも肩入れしないとしながらも、水面下ではAE社などの月面企業を通じて密かにエゥーゴとコンタクトを取りはじめた。
一方のエゥーゴもメールシュトローム作戦を目前に控えサイド6防衛に回せる程の戦力はなく、またダカール宣言までの間、リーア政庁はエゥーゴに対して距離を置き、リーア領海内へのエゥーゴ艦艇や艦載機の通過を認めない中立政策を取ったため、エゥーゴ部内では恩知らずなリーア政庁への軍事支援に難色を示す将軍もいた。
だがリーア内に利権を持つAE社や、非公式ではあるが木星船団の仲裁もあり、エゥーゴは一転してリーア軍への軍事支援を決定。本格的な艦艇やMS部隊の派遣までは実現しなかったものの、エゥーゴで主力作戦機として運用され実績を伸ばしていたMSA-003Bネモをリーア軍へ譲渡することを約束した。
機体カラーリングはエゥーゴのシンボルカラーであるグリーンから、白と濃い藍色のリーア軍カラーへ変更されているが、基本性能はエゥーゴで主力機として配備されている後期生産型と同仕様である
また、コロニー内戦時の内部への被害を押さえるために、武装がビーム兵器から実体弾主体の装備へと変わり、シールド類は従来のジム・コマンド系の曲面シールドを流用している。
リーア軍に配備されたネモは70機で、不足分は地球連邦軍からティターンズ対策として譲渡されたRGM-86RジムIII30機をこれに充てている。ネモの完熟歩行訓練には、エゥーゴから数人のパイロットがリーア軍に派遣され、短期間においてこれを完了している。
これらの機体は0088年3月に発生した、ぺズン事件に連動してサイド6で反乱を起こした連邦軍サイド6駐留軍内の反エゥーゴ派軍人による騒乱事件の時に初出動し、サイド6内にある連邦軍駐留基地に展開した。
この事件は連邦正規軍部隊に投降し、帰順した元ティターンズ将校たちと、地球出身の正規軍将校らがエゥーゴ主権の軍に不満を抱いてサイド6の12バンチに立て篭もった事件で、サイド6政府はリーア軍に出動を命じ、他の駐留部隊に反乱が広がらないように各バンチにある連邦軍基地を包囲したのである。
サイド6は各バンチごとの裁量権が広く認められており、親連邦派のバンチも存在していた。永世中立であるにも関わらず、バンチによって連邦軍が駐留しているのはそのためであり、12バンチ「ウエストファリア」も親連邦派バンチの一つであった。
リーア軍が基地を包囲し、連邦軍将兵を軟禁状態にしたことで内戦の傷も癒えない連邦軍参謀本部はサイド6に抗議したが、先の抗争でティターンズの暴走を食い止められなかった連邦軍をサイド6政府が信用するはずもなく、エゥーゴに解決を委ねた。
エゥーゴはMSA-099Bシュツルム・ディアスで編成された特殊部隊SSS(スペシャル・スペース・サーヴィス)をサイド6へ派遣。反乱部隊を鎮圧し、12バンチを奪回した。余談だがSSSはこの後、月面都市エアーズ市侵攻作戦の支援へ向かい発電施設を破壊するなど、連邦軍のα任務部隊を裏から支援している。
第一次ネオ・ジオン抗争では、サイド6宙域を領宙侵犯するネオ・ジオン軍のMS部隊を追い返すために、リーア軍所属のネモが出撃しているが、ネオ・ジオンのMS部隊とは戦火を交えたことはない。
MSA-003C陸戦型ネモ(MSK-003)
カラバの主力MSで、ジャブロー降下作戦終了後、カラバに譲渡されたMSA-003Aネモをベースにカラバ内で運用すべく、空間戦用の装備を撤去し、純粋な陸戦仕様とした機体である。
グリプス抗争前、カラバはRGM-79RジムIIを始めとする一年戦争時に製造された機体のマイナーチェンジ機しか保有しておらず、決して質の高い兵器を保有していなかった。どれもカラバに協力する連邦正規軍部隊や、二線級の予備戦力として州軍に配備されていた旧型MSであり、カラバはティターンズとの全面衝突に備えてMS部隊の編成やティターンズMS部隊に対抗出来る新型MSの配備を検討していた。
おりしもエゥーゴがジャブロー降下作戦を立案・決行し、作戦に参加したパイロットとエゥーゴ機の回収にカラバが協力を申し出たことで、カラバもエゥーゴからのMS供給を受けることが可能となった。
回収と保護の見返りとして、エゥーゴは作戦に投じたガンダム・タイプの試作機を除いたネモやリック・ディアスなどの量産機をカラバへ譲渡することを提案したことがきっかけとなり、内紛においてエゥーゴとカラバは常に共闘することになったのである。
カラバの空中拠点、ガルダ級輸送艦アウドムラに残されたネモは、当初はIMPCが陸戦用に書き換えられただけの緊急処置を施したのみであったが、整備性や地上での行動範囲を広げるためにエンジンを空間戦用の熱核ロケットから核熱ジェットに変更し、脚部のエンジン・ユニットをホバー・ユニットに換装するなどの本格的な改修が加えられることになった。
空間戦用の装備は一切撤去され、機体の軽量化が施された。重力圏下でのMSの自重は、機動性や関節部への負担も含めて大きな問題であり、少しでも不必要な装備を省略し、自重を軽減し、同時に整備性を高める必要があった。
脛の熱核ロケット・スラスター・ユニットが熱核ジェット・ホバー・ユニットに換装され、地球上では不必要な姿勢制御用の肩部スラスターも撤去、装甲板で塞がれた以外に外見の変更はない。
これによって、陸上でのホバー移動も可能となったがMS-09シリーズに比べるとホバリングでの行動時間は短く、あくまで戦闘時などの緊急事態の場合のみに使用される。
また、関節部や廃熱ダクトにはシーリングが施され、砂漠地帯での配備も考慮されている。
こうして、陸戦主体への装備に変更されたネモは、アウドムラをはじめとするカラバMS部隊に配備されることになった。エゥーゴ内ではC型で区分されていたが、カラバではMSK-003ナンバーを持っていた。
初期に配備された機体はジャブロー戦に投入されたA型がベースとなっているが、後にAE社のカリフォルニア工場においてB型ベースの陸戦モデルの生産が開始され、カラバに納入されている。
パイロットたちからは陸戦型ネモと呼ばれ、カラバのグリプス抗争における大攻勢となったキリマンジャロ攻略作戦において大量投入され、その後のニューギニア制圧作戦にも多数参加した。
その後は、RGM-86RジムIIIが主力機として連邦軍から提供されたこともあり、陸戦型ネモは拠点防衛などの迎撃任務に回され、主力の座を明け渡していった。
第一次ネオ・ジオン抗争時にはヒッコリーやオスロ、ニューホンコンなどのカラバの拠点となっていた都市や基地の警備任務につき、地球侵攻作戦を進め、各地に出現していたネオ・ジオン軍を警戒した。
MSA-003Nネモ・ハイマニューバー
エゥーゴの主力機、MSA-003ネモの高機動型がN型と呼ばれる機体である。バックパックをMSN-00100百式の同タイプの物に換装しており、OSやIMPCもそれに準じた改良がなされている機体である。百式のバックパックとフレキジブル・バインダーを装備したことによって、百式の簡易量産機と言えるまでの高機動を誇るに至った。
元々、N型は異機種間での装備の互換性をテストするために改造された試験機であり、月面のエゥーゴ艦隊所属のMS部隊にてテストが行われていた。
AE社製MSのバックパックやバインダー、武装の互換性は高く、その中でもMSA-099、MSN-00100、MSA-003の三機種は共通した規格を持ち合わせており、母艦や基地のハンガーで簡単な改装で換装が可能なように設計されていた。
テストに供された機体は通常のネモ(A型)であり、百式のバックパックの他にリック・ディアスのバインダーやティターンズから奪取し、AE社で解析が行われていたRX-178ガンダムMkIIのバックパックなども装備され、テストが行われていた。
そして、テストが良好だったことから、エースパイロット用にごく少数がN型が生産されることが決定し、20機ほどが生産、あるいはすでに配備されていたA/B型からのキット改修によって配備された。本来、熟練パイロットやエースパイロットに優先して配備されていたMSA-099リック・ディアスが生産性の悪さから前線への配備が遅れており、その補充分としてネモ・ハイマニューバーが充てられることがあったという。
操縦性ではリック・ディアスよりも上であったことから、パイロットの評判も上々であった。
そのうち、N型は百式と同仕様のバックパックとバインダーを装備しているタイプを指し、操縦は百式に比べると容易で新米パイロットでも比較的簡単に高機動を行うことができたという。
武装はジムIIが装備する連邦軍MSの標準型ビームライフルから、百式系が装備する速射型ビームライフル、リック・ディアスが補助火力として装備するビームピストルなども装備することが可能である。
シールドは0083年のGPで開発されたGP01専用と同タイプの物が用意され、大半の機体はそのシールドを装備していたが、部隊によっては別のタイプのシールドを装備していることも多かった。
その後、N型は更なる改良が加えられ、MSF-007ガンダムMkIIIの設計を取り入れたMSA-004ネモIIに進化する。
MSA-003Tネモ・トレーナー
グリプス抗争後、残存するMSA-003Bネモをパイロット教習用MSに転用した機体。グリプス抗争、第一次ネオ・ジオン抗争を生き延びた機体をベースとしている。
ネモはグリプス抗争においてエゥーゴとカラバの主力機として活躍し、抗争終結後に生産は終了したものの、第一次ネオ・ジオン抗争においてもMS不足を埋めるためにエゥーゴ系部隊において使用されていた。
そして、第一次ネオ・ジオン抗争が終結すると、エゥーゴ指導下の新生地球連邦軍は度重なる戦乱で疲弊した戦力を再編する必要が生じてきた。軍は細分化した主力MSの機種統一を推進することによって予算のスリム化を目指し、主力部隊にはRGM-88A/BヌーベルジムIII系列への統一が図られた。
さらに新型機であるRGM-89ジェガンが次期主力機に採用されたこともあり、グリプス抗争時に生産されたエゥーゴ、カラバ、ティターンズ製の量産機は退役が迫られ、予備戦力としてモスポールが決定された。
MSA-003ネモもそのうちの一機種であったが、ムーバブル・フレームを装備し、機体バランスが良好だったことから代替が検討されていたTGM-79ジム・トレーナーの後継機として、ネモを教習用MSに改装することが決定した。
それがMSA-003Tネモ・トレーナーである。ジム・トレーナーは大戦末期にパイロット訓練用として開発され、以降、長い間、パイロット訓練用MSとして連邦軍MSパイロットの教育課程において使用され続けていたが、0080年代後半から旧式化が指摘されていた。しかし、内紛やネオ・ジオン対策によって代替を行う余裕もなく、教習用新型機の開発は後回しにされ、結局0090年まで使用され続けるに至った。
教習用MSは余程のことがない限り実戦に用いられることはないため、新型機である必要はないが、近年の技術の進歩によって大戦時に設計されたジム・トレーナーだけではパイロット教育に追いつけないという指摘が挙がっていた。
時代はムーバブル・フレーム機が主流となり、スラスターの強化による機動力の向上、リニア・シート、全周回式モニターの標準装備化、試験的ながらもアームレイカーや視点追随システムなどのパイロットをサポートするシステムも充実してきたことからも、これらのシステムに見合った教習用MSが必要となったのである。
当初は0090年に全機退役が決定し、転換作業が行われていたRMS-106Bハイザックが次期教習用MSの候補に上がっていたが、グリプス抗争での損耗率が高く、残存機数も少なかったことから候補から外れた。
最低の条件として、ムーバブル・フレーム機であることと、現在の連邦軍の主力であるRGM系列と共通の機体であることが望ましいとされ、グリプス抗争後も多数が残存し、連邦軍の主力機であるRGM系列に近いネモが選ばれたのである。
T型はネモのコクピット部を大型化し、副座型に変更した以外に外見上の違いはなく、装甲や武装、ジェネレーターはそのままである。教習用に特化し、装甲材質を安価なものにしているジム・トレーナーと違い、有事の際には無改装で攻撃機として転用することも可能である。
教官用コクピットモジュールが操縦用コクピットの上部に増設されるなど、基本的なレイアウトはジム・トレーナーと同様だが、教官用コクピットも全周回式モニターとなり、視認性が向上した。従来のジム・トレーナーは教官コクピットがグラスルーフによる視認しか行えなかったことから、パイロット教官からは好評であった。
増設された教官コクピットは多少狭いものの、教官側からの操縦も可能である。この点もジム・トレーナーから引き継いだ設計となっている。
副座型に改装されたネモ・トレーナーは、0090年からMSパイロット養成を行っている連邦軍の各拠点への配備が開始され、パイロット訓練に使用されはじめた。
ネモ・トレーナー導入と同時に、MS訓練過程が改正され、初等訓練にはシミュレーター、中等訓練からミドル・モビルスーツによる実地訓練を行い、高等訓練においてネモ・トレーナーを使用するようになる。
九年近くも訓練機として使用されていたジム・トレーナーは序々に退役し、ネモ・トレーナーと代替していった。
MSA-004ネモII
エゥーゴの主力MS、MSA-003ネモの発展強化型。ネモは本来、コロニーや月面都市などの警備や迎撃任務用としてAE社が開発した機体で、火力不足が唯一の弱点であった。
エゥーゴはティターンズとの大規模な武力衝突に備え、生産性の悪いMSA-099リック・ディアスと平行してRGM系の発展型であるネモを制式採用し、主力部隊に配備した。火力が若干低かったものの、ムーバブル・フレーム構造の量産機であり、ティターンズの主力機であるRMS-106ハイザックやRMS-108マラサイと対等に戦える程の性能を持つ機体であった。
しかし、エゥーゴ上層部ではネモの性能に満足できず、なおかつティターンズが高い火力と機動力を誇るTMSを試験的に戦線投入してきており、ネモがこれら敵軍TMSに苦戦する局面も出てきた。ティターンズTMSは試作機故、その配備数は少ないものの、元々迎撃任務用として設計されたネモの出力ではTMSに対抗できなかったのである。
さらにジオン公国軍残党「アクシズ」の抗争介入という突発的な要素も加わり、これらアクシズ製MSとも対等に渡り合える程の性能向上を目指さなければならなかった。
そこで、AE社ではネモの改良案をエゥーゴに提案し、ネモの生産ラインとパーツを活用することで迎撃用MSから汎用攻撃型MSへの転換を行った。それがMSA-004ネモIIである。
既に高機動型としてN型がごく少数ながら生産され、部隊配備されていたがジェネレーター自体には改良が施されていなかった。N型の次の機体であるMSA-004では根本的な機動力の強化と、ネモ系の弱点であった火力不足そのものの克服を図ったのである。
ネモIIではジェネレーターの出力を強化するため、ジェネレーター周辺の改良を行い、冷却システムの改良強化を行うことでジェネレーターの稼動率の向上を狙った。そのため、胸部の廃熱ダクトはメインの二基に加えてサブの二基、計四基が並列した形となっている。この形は後のRGM-88AヌーベルジムIII初期生産型の増加ダクトへと結実する。
バックパックの構造は同時期に開発が進んでいたMSF-007ガンダムMkIIIの設計を流用し、機動力向上に一役買った。脚部フレームの一部パーツにMSA-007ネロの同型の物が使用され、当時、すでに生産が開始されていたネロと部品を共用することによって生産性の向上とコストの低下を狙っている。
バックパックにはビーム・カノンを装備することが可能であり、オプション兵装を選択することによって中距離支援機に換装することも可能となった。ビーム・カノンを装備したタイプはMSA-004KネモIIIと呼ばれ、一部の機体はカラバに配備され、地上でのテストに供された。
これらの改良によって、若干コストが上昇ものの、低コストでの高性能機への改良というネモIIの課題は果たされたことになる。生産試作機の初動テストでも、ガンダムMkIIIの簡易量産機と呼べるまでの性能向上が認められ、制式採用を前に増加試作という形で生産が開始され、ロールアウトした機体は順次、月面艦隊を中心に配備されることになった。
当初、ネモIIはMSA-003Sナンバーで開発が続けられていたが、新規開発機に近い改良が施されたため、空きナンバーであったMSA-004が新たにつけられた。MSA-004ナンバーは元々Z計画における偽装ナンバーとして用意されていたもので、ティターンズ情報部の撹乱を狙った処置であったが、MSZ-006Zガンダムの正式ロールアウト後は偽装の必要がなくなり、偽装用の空きナンバーが割り当てられたのである。
MSA-003のバリエーション記号ではなく、新規ナンバーが割り当てられたところに、ネモIIに対して大きな期待がかけられていたことが分かる。
0088年初頭から配備が行われ、メールシュトローム作戦では9機が実戦参加した。その他、第一次ネオ・ジオン抗争時にも月面でゲリラ活動を行っていたネオ・ジオン軍MS部隊の討伐にも投入された記録が残っている。
ネモIIの性能に目をつけたエゥーゴ指導下の地球連邦軍でも、次期主力機候補としてネモIIを他のエゥーゴ製MSと共にコンベションにかけたが、より低コストと高性能を目指した量産機、MSA-011ジェガン(後のRGM-89A)との競作に敗れてしまう。
ジェガンがシンプルな武装を目指したのに対し、ネモIIはグリプス抗争時の敵TMSへの対抗策として、重武装と高機動化を目指した機体であった。このコンセプトは戦乱が終結し、軍備強化よりも軍備のスリム化と経済復興が優先された第一次ネオ・ジオン抗争終結後の世界では過去の物となっていたのである。
結局、エゥーゴの影響力が強く残る月面の艦隊に生産試作機が配備されるのみに留まり、ネモIIはエゥーゴ指導下の連邦軍では主力とはなり得なかった。
MSA-004KネモIII
AE社がMSA-003ネモの発展・強化型として開発したMSA-004ネモIIの武装強化仕様。ネモIIのバックパックに備え付けられたムーバブル・フレームコネクター部にビーム・カノンを装備したタイプがK型と呼ばれる。
ネモIIからIIIへの換装はごく簡単で、作戦に合わせて母艦内での換装が可能となっている。
片側にビーム砲を一門、もう一方には照準センサー・システムを装備する。ジェネレーターの関係上、ビーム砲は一門のみの装備だが、照準用サブ・ユニットを利用することによって、ビーム・カノンの狙撃能力を大幅に高めているのが特徴である。このレイアウトは同様にビーム・カノン搭載機として大戦末期に開発されていたRX-77-4ガンキャノンIIにも見られ、ネモIII開発の際にガンキャノンIIの設計が参考にされたことが見てとれる。
元々、ネモIIとIIIはワンセットで開発されており、ジェネレーターの強化によって出力に余裕が出たネモIIの武装強化案の一つとして提案されていた。
ネモIIのジェネレーターは母体となったネモよりも改良されているものの、基本的に同タイプである。しかし、それに付随する廃熱システムを改良し、稼動率を向上させることによって出力を強化させることに成功した。胸部廃熱ダクトが増設されているのは、冷却効率を上げるための処置の一つである。
しかし、ネモIIIのビーム・カノンは中距離砲撃支援を目的とした物ではなく、純粋な火力強化案の一つである。ビームライフルのEパックがエンプティとなった時の補助火力や、火力の高いTMAとの戦闘や対艦隊戦においてその威力を発揮するのだ。この点ではむしろ、RX-77系ではなくMS-14Cゲルググキャノンに近い運用方法を取る。
メールシュトローム作戦において実戦参加したMSA-004ネモII9機のうち、3機がK型仕様の装備で参加している他に、カラバでも一小隊分が供給され、陸上でのテストに供された。
MRS-003ノバディ
MSA-003ネモのムーバブル・フレームや外装設計を流用して開発された災害救助・重作業用MS。極めて軍用機に近い準民間機というカテゴリーを与えられており、AE社製民生機としては最大の価格と機体規模を誇る。フレームそのものはネモと共通しているため、全体的にネモ系に近いフォルムを持つ民生機である。
当初、AE社では政治的理由からティターンズへの供与に変更されたMSA-002ドミンゴに代わり、MSA-003ネモをエゥーゴ向けに大量生産する方針を決定したが、内訌戦が短期決戦に終わった場合、エゥーゴ向けの需要が早い段階で落ち着くことを見越してネモのムーバブル・フレームを活用する形で民生機の開発を開始し、開発費用を民生機バージョンの売り込みで回収するビジネスモデルを展開したのである。こうした発想は民間のAE社だからこそ可能であった。
また、内訌戦がティターンズの勝利に終わった場合、ネモの将来は絶望的となる。エゥーゴが勝利し連邦軍の実権を握った場合、最悪でもネモをそのまま連邦軍に売り込むことも可能ではあったが前者のケースの場合、敵対勢力に供与されたMSの採用はティターンズの組織体質から見ても望み薄であった。やはり民生機にスピンアウトして、ある程度はエゥーゴとティターンズの対立とは関係のないフィールド上で稼ぐことで損失を軽減し、かつ利益を得る必要があったのだ。
フレームと外装設計の一部はネモと共通とするため開発期間の圧縮に成功し、グリプス抗争勃発直後より民生機市場へと売り込みを開始した。しかし、当初は18mもあるノバディは民生機としてはかなりの大型機であり、民間企業やジャンク屋で運用するにはかなりオーバースペックであった。また運用費も莫大であり、発売当初は18m民生機という触れ込みで市場に出されたノバディは敬遠され、販売も伸び悩んだ。
そこでAE社はノバディを軍用機流用の民生機ではなく、バックパックを換装させることで災害救助機、事故復旧機としても使えるよう、ミッションパックをオプション化させることで、同機の価値をただの軍用機レベルの民生機という以上のものを付加させたのである。
宇宙火災鎮火用ユニットやパワーローダーユニット、クレーン・ユニット、サブ・アームユニット、観測ユニットなどいくつかのミッションパック・ユニットが開発され、これらは全てオプション装備とされた。更にノバディはこれらのワーク・ユニットを稼働させるプラットフォームだけではなく、デフォルトで持つ両腕ユニットを連動させることで、高い汎用性を得るに至った。
様々なワーク・ユニットを操作するため、コクピットは全天モニターの副座型となっており、MS操縦とユニット操縦をそれぞれ担当するようになっているが、ユニットの性質によっては単座での運用も充分に可能とされる。外皮パネルは軍用を想定していないため、従来のチタン合金を使用してコストを下げているが、後期ロットのBシリーズでは軍用よりもワンランク程質は下がるもののガンダリウムγ合金を使用し、堅牢性が向上した。
また、ビーム兵器類の装備は基本的には不可能だが、デフォルト機能としてレーザートーチとプラズマ・ガンを使用できる。前者は事故や災害で発生したガレキや鉄屑などを撤去、切断するためには必要不可欠な装備であり、プラズマ・ガンは小惑星の資源掘削には欠かせないツールである。
こうした高い汎用性と堅牢性を持ち、重作業や災害時の迅速な救助活動に最適化されたノバディは0087年中頃から宇宙警察機構や各サイドの消防庁の傘下にあるレスキュー部隊やコロニー公社、ブッホ・ジャンク・インクといった大手ジャンク回収業、民間の宇宙航空会社などに納入されはじめた。特に内訌戦で各サイドや航空会社が戦災にあいやすいという世情も後押しし、省庁向けへの需要が高まりつつあった。
ノバディの評価を高めたのは、0087年7月に発生した、リーア・カーゴリフト会社が保有していたフォン・ブラウン船籍の宇宙貨物船「ジャンパロード」遭難火災事故であった。イプシロン市を出港した同船がリーア宙域外縁に入った時に積荷の化学薬品タンクから引火して火災が発生し、これを宇宙警察機構リーア支部のレスキュー部隊に配備されたばかりのノバディ二小隊が緊急出動し、迅速な火災鎮火と船内に閉じ込められたクルーの救助作業に従事したのである。この時、クルー全員の救助に成功し、火災も小規模の被害に押さえるという成果を挙げた。
この活躍はノバディの評価と可能性を高め、一気に市場価格が上昇した。従来の連邦軍払い下げのボールやミドル・MSだけの装備では到底、このような成果は残せなかったのは明白であった。
また、ネモを運用していたエゥーゴでは専門のパイロット救助部隊に多数のノバディが配備され、戦闘終息後における戦闘宙域でのパイロット救出作業や、行動不能に陥ったMSの回収に用いた。ノバディに救われたエゥーゴやティターンズのパイロットは多数に上る。
こうした18mクラスの非軍用MSはかなり珍しい存在であり、当初は敬遠されたものの高い生残性と救助能力が評価され、ダカール宣言後には地球連邦軍にも納入され、パイロット救助部隊やレスキュー部隊に重点的に配備されることになった。
一部のMS評論家ではAE社が連邦軍内でのシェアを独占したのはジムIIのジムIIIへの改修工事でも、ジェガン開発製造でもなく、このノバディの納入からであると評価する程、高い救助遂行能力を有する。ささやかではあるが、MSパイロットの生存率や宇宙災害での生存率を向上させたのは、ノバディの活躍によるものであることは間違いはない。
AE社は内訌戦が終息しつつあった0088年初頭にはネモの生産ラインを閉じたが、それは兄弟機であるノバディの生産ラインに振り向けたためとも言われている。
宇宙警察機構や各宇宙航空会社、連邦軍やエゥーゴのレスキュー部隊では災害救助・事故復旧・パイロットやクルー救助用として、AE・サルベージやブッホ・ジャンク・インクではサルベージやジャンク回収といった掃海事業や小惑星鉱山掘削などで、コロニー公社ではコロニーの大規模改修や新規コロニー建造にノバディを使用し、一部の警備会社などでは警備用としても使用した。