ドタバタぱらだいす~戦友(とも)との別れ~
さあっと俺の顔を風が撫でていく
多分、昨日カーテンを開けて寝たからだろう
朝の風は優しいから好きだ
風でなびくカーテンの隙間から朝陽もこぼれてくる
キラキラと目の上を光が行き交っている
……朝陽は俺に優しくないな
つくづくそう感じる
てか、まぶしーつーの…
でも、寝続けるにそう問題はない
そう思い俺は二度寝に入る
うん、この温かい布団の中で顔には微風を感じるこの感じ…やはりいいな
このうとうと感も最高だ
さて、それじゃあ俺はもう一度寝るか
俺は意識を静かに沈めて行った
「朝……朝倉!!起きて!!」
ゆさゆさ…
ゆさゆさゆさ…
んん?揺れる揺れる体が揺れる
でも、その揺れが俺にもっと強い睡眠を促してくる
多分、電車に乗ると眠くなるそれと同じ原理だ
あー…落ちて行く
幸せの中へ堕ちて行く~
「お~き~な~~~さい!!!!!」
おぶ!?
頭の辺りに強い衝撃がある
おかげで一瞬で目が覚めた
「ああ、おはよ…」
そこに立っているのは水越眞子
俺の彼女だ
「お は よ う、朝倉♪」
にっこりと笑顔を浮かべている
でも、目が笑ってない
そして、何か理解しがたい威圧感を感じる
俺のシックスセンスも危ないとエマージェンシーコールを鳴らしている
ヤバイって!!マジヤバイって!!!史上最大の悪夢!?
多少混乱してしまってるなぁ俺
「何か知らんがスマン」
こういう時は謝ってしまうに限る
これ以上機嫌を損ねないためにもな
「もう…今、何時?」
ため息一つそう言い出す
ん?時間?
俺はベッドの上にある時計を探る
「えっと、10時です」
「さて、集合時間は?」
「……ゴメンなさい」
俺は即座に土下座する
そう今日は眞子とデートの約束をしていたのだ
それも集合時間は9時
明らかにオーバー
色々とオーバーだ
時間とか、眞子の怒りの振れ幅とか、俺の謝り方とか
最後のは違うだろと自分に自分で突っ込んでおく
「おかげで映画…見れなくなっちゃったじゃない」
「悪い」
むぅ、ということは俺の計画も失敗か
折角色々と杉並とかに頼んで根回ししてもらってたんだがな
報酬とか弾んだんだけど水の泡か
「あ~あ…」
眞子はかなり楽しみにしていたようだ
いや、俺も相当楽しみにしていたんだけど
今日見に行く映画はまぁ、コテコテの恋愛映画だったはずなのだ
あくまではずであり実際はホラーというそういう魂胆だった
見るものを恋愛物からホラーにすりかえるという作戦
作戦実行は杉並に全て任せてある
そこら辺は杉並のほうが手際がいいのは分かってるからな
俺は眞子がホラーがダメなのは知っているけど俺は眞子がいつもと違い抱き付いてきてくれる
それが堪らなく嬉しい
眞子が自分から俺に抱きついてくるとかほとんどないしな
……俺、サド…かな?
ま、俺のことはいいか
「それもだけど朝倉…良くこんなとこで生活できるわね」
眞子は周りを見渡しながら呆れた様に呟く
「そうか?普通だと思うけど」
「…これで普通って」
まぁ、置いてある物どかさないと座れない程度だろ?
別に普通じゃないか
足の置き場もないって程じゃないんだしさ
「……仕方ない、今日は朝倉の部屋の片付けをするわ」
そう言ってごそごそやり出す眞子
「うう…すまねぇなぁ…俺のせいで」
俺は泣いているふりをしてベッドに倒れこむ
こうすれば、時間を稼げるはず!!
「あんたもすんのよっ!!」
めきょ…
ちょっとマテ広辞苑は投げるものじゃないだろう?
当たったら…というより痛すぎだ!!
広辞苑には約16万の言葉が載ってるんだぞ!
大事にしてくれ、世界のために…何より俺のために
頼むから…
「ほら!さっさと手伝う!!あんたの部屋でしょ」
「は~い」
結局やるはめになった俺もごそごろやる
まず、タンス周辺の服関係
ジャンバーとか着たら着っぱなしで放置したりしてたから無造作にそこらに重ねられている
あんまりだなこれ
自分で普通だとか思ったけど尋常じゃないわ
できるだけ丁寧にたたんでいく
ふと、眞子の方を伺うけど流石だ
かなり綺麗だし速い
頑張んないと終らないかもしれないな…部屋中の掃除
「あたしが本棚やるからあんたは机ね」
「イエス・サー」
とりあえず、敬礼とかしてみる
「そんなのいいからさっさとする!!」
怒られました、分隊長
じ、自分は悲しいでありますッ!
「投げるわよ?」
その言葉で俺の手が速度をあげる
「全く…ちゃんとやりなさ……!?」
眞子が固まる
「ん?どうした?」
「あさ…く…ら…こ、これ!!」
そう言ってそれを俺の前に差し出す
「だから、別にいらなそうなの…!?」
それを見た瞬間に俺は自分の部屋を片付けなかった俺自身を呪った
非常にまずい、これは相当にまずい、烈やばい、爆やばい
それは俺の秘蔵っ子ではないか!!
俺が色々な奴と交渉したり
杉並に頼んで送ってもらったりした
男の子のロマン!?
言いたい…それは捨てちゃダメだって言いたい
というか、それ捨てられたら俺泣くかも
「朝倉…か、彼女とかいても持ってるもんなの?これって…」
蒸気すら上がりそうなくらいに真っ赤に染まった顔で聞いてくる
「そ…それは男だからな」
ったく、おまえがそんなに意識したら俺なんて過剰に反応してしまうだろうが
「言ってくれたら私が…って何言ってんの?あたしってば」(フォント小)
ごにょごにょと何か言いながら俯いている
「え?」
「い、いや!!何でもないから」
あははと笑って誤魔化された
その後、眞子は私がそっちをやるからって言って俺に秘蔵っ子の対処を任せた
もちろん、秘蔵っ子は押入れに直行させた
俺にはそいつらを捨てるほどにできちゃいないからな
集めたときの思いとか色々あるし
でも、眞子がいてくれるなら…
眞子が笑ってくれたら凄く嬉しい
眞子が泣いたら悲しい
こいつらが眞子を悲しくさせるなら―――
捨てるかぁ
俺はそうして秘蔵っ子たちに別れを告げたのだった…
~Fin~
~楽屋裏~
虎「病み上がりに病床で書き上げたSSですッ!!(所要時間30分くらいw)」
眞子「あんた…ふざけてんの!?」
虎「いえいえ…ノリで書いてたら楽しくなって…どう纏めるか……私には出来ない…orz」
虎「ってな感じです」
眞子「永遠に叩き続けるわよ?」
虎「ゴメンなさい…それは勘弁してください」
眞子「朦朧としている頭でこんな煩悩浮かべてんじゃないわよ!!!」
虎「…気遣ってくれるんですか?」
眞子「あんたに使う気はないわ」
虎「ひど!?」
眞子「さっさと彼女見つけてどうにかすることね」
眞子「それよりも…朝倉のあの本の他にもビデオとかDVDとかたくさんあったのよ…」
虎「いや、男ですから仕方ないですって」
眞子「そんなもん?」
虎「そんなもんです、怒らないであげてくださいね…」
眞子「うーん…分かったわよ…鉄拳5発で許す…」
虎「(純一…君の事は忘れないからな)」