地球連邦軍の主力モビルスーツ0093~0153


  UC0093~0123年

 ●RGM-89J/M/Rジェガン

 RGM-89ジェガンのマイナーチェンジ型。地球連邦軍はシャアの叛乱が終息した0093年以降、ジェガンの戦力化を進めており、多数が調達されていた。そして、連邦政府開闢100周年を迎えた頃には主だった宇宙軍部隊においてはジェガンによる機種統一を終えている。
 量産初号機がロールアウトした当時はロンド・ベル隊やルナツー艦隊艦載機部隊などの新鋭機を必要とする実動部隊に優先して配備されていたが、第二次ネオ・ジオン抗争終結後より量産が本格化し、ジムIIIがメインであった地上部隊や環月方面軍、内訌戦期の二線級MS部隊が幅を利かせていたコロニー駐留軍などの一般部隊でも配備が進んだ。
 ジェガンは生産期間、配備期間、生産台数も含めて18m級汎用型MSとしてはMS-06シリーズや一時期は配備数が一万機ものオーダーに及んだRGM-79Rシリーズを遥かに凌駕するベストセラーとなったのである。

 その後も大規模な戦乱もなく、新型機開発も停滞したためロールアウトから20年が経過した0110年代に入ってから連邦軍はジェガンの更新を検討しはじめた。それがRGM-89J/M/Rの各タイプである。
 シャアの叛乱以降、ラプラス事件、環月危機、ムンゾクーデター未遂事件、マフティー一揆といった低劣度紛争や不法事案が発生したものの、大規模な戦乱は最早過去のものとなりつつあったため、主力MSの新規開発が鈍り、現用機であるジェガンは開発・製造から20年近くが経過して性能にも陳腐化が現れていた。しかし、平和が長く続き、軍備の更新に対して鈍化しつつあった政府から新型機を開発する予算が下りづらいのが現状であった。すでにポスト・ジェガンを見据えたRGM-96ジェスタ、RGM-98グスタフ・カールもロールアウトしていたが、平時の装備として強力過ぎる性能を有すること、議会の予算承認が降りなかったことから大量生産に待ったがかかり、これらは一般部隊では普及せず、MSA-007ネロを装備していたエリート部隊や特殊部隊への置き換え用としてスポット生産されたに過ぎなかった。

 加えて、ジェガンは宇宙軍の主力作戦機として5000機程度が配備されている以上、全ての機体を新型に代替させるだけの予算も時間も無い。従って、今保有するジェガンのマイナーチェンジを施して継続使用するのが一番望ましかったのである。

 ジェガンの更新工事は0110年代半ばから開始されたが、内容はアビオニクスやジェネレーターの改良・更新など基本的な改修に留まっており、基本性能そのものは前世代型と代わり栄えしない内容である。

 一般仕様のJ型、接近戦闘に特化した装備を有するM型、指揮管制能力を強化したR型の三機種が更新工事によって生まれたが、基本的な性能はどれも同一である。

 これらのジェガン第二世代型は宇宙艦隊やコロニー駐留部隊、月面駐留部隊などに配備され、連邦宇宙軍の主力機として使用され続けた。0120年から0122年にかけて頻発したオールズモビル軍によるテロ事件には、多数のジェガンが鎮圧作戦に動員されたが、この頃から性能の陳腐化が指摘されはじめており、ジェガンよりも性能的に劣っているはずのオールズモビル軍が動員するMS-06やMS-09Rのレプリカ機に押されるという一面も見られた。
 ただしこれらの問題はジェガンの旧式化という問題だけではなく、実戦から遠ざかり、一年戦争やグリプス抗争、二度のネオ・ジオン抗争を経験していないパイロットの練度不足によるものも大きく、必ずしもジェガンの陳腐化だけが原因であったわけではない。

 30年近くも戦乱から遠ざかり、鈍化しつつあった地球連邦軍はようやく重い腰を上げ、新型MSの開発をサナリィやAE社に対して指示しているが、その結果完成したRGM-109ヘビーガンも必ずしも成功作とは言えず、予算上の関係から当初予定されていた配備数が削減され、依然としてジェガンが主力機の座にあった。
 正式採用から30年が経過し、旧式化が叫ばれていたとはいえ現場のパイロットや整備兵からはかつての「ザク」に代わるMSの代名詞として確立され、性能も安定しているジェガンに信頼を置くということも多く、連邦軍初の15m級MSという得体の知れないヘビーガンは必ずしも用兵側からは歓迎されなかった。

 小型MSの研究は0110年代後半から0120年代にかけて活発化したものの、サナリィやAE社の研究が実り、ようやくものになったのは0119年に地上用として開発されたRGM-119ジェムズガンと、0122年に制式採用されたRGM-122ジャベリン、それにスポット生産されたF71Gキャノンシリーズの三機種からであった。

 0123年に勃発したコスモ・バビロニア紛争にも多数のジェガンが投入されたが、性能の陳腐化とパイロットの練度不足によってクロスボーン・バンガードの小型MSに苦戦を強いられている。戦場となったサイド4・ムーアのフロンティア・サイドに駐留していたMS部隊はそのほとんどがジェガンで構成されており、大半は組織立った反撃も出来ないまま撃破されたという。この紛争によって、ようやく軍はジェガンが既に旧式化しているという事実を突き付けられたのである。

 クロスボーン・バンガードが保有する小型MSの威力に脅威を感じた連邦軍参謀本部は、前年にようやく量産が開始されたRGM-122ジャベリン、およびRGM-119ジェムズガンの調達数拡大を政府予算委員会に対して要求を出し、配備計画も前倒しされることになった。また不足分を補うためFシリーズのスポット生産も開始された。

 翌年より、ジャベリンとジェムズガンの量産と戦力化が本格化すると前線部隊に配備されていたジェガンは順次、退役していった。しかしジェガンは各コロニーや月面自治都市の警備部隊に払い下げられるなどして、各サイド・コロニーの軍備強化に貢献した。
 最後までジェガンを使用していた部隊はサイド6、リーア軍で0136年まで使用し、0133年に勃発した木星戦役にも出動しているが、あくまで補助戦力の一環でしかなかったようだ。

 ●RGZ-95リ・ゼル

 MSZ-006C1Zプラス、RGZ-91リ・ガズィに続く、連邦軍ZタイプMSの最新機種。自己の可変を省略し、BWSにメイン・システムを委ねて非可逆でしか可変できなくなったリ・ガズィの反省を踏まえて、リ・ゼルでは再び可変MSに戻っている。

 Z系量産型MSの本丸とされていたリ・ガズィは当初、可変システムを省略することでZプラスシリーズで課題となっていた生産コストの削減を目指し、またBWSと合体することで可変機構そのもののオプション化を目論んだものであったが、BWSに依存した可変システムは運用面においてTMS特有の柔軟性が失われるという欠点を孕んでいた。BWSと分離してMS形態となった後は再度可変形態を取ることは不可能であり、かつ離脱したBWSは事実上の使い捨てであり、トータル面におけるコストにおいてはZプラスやメタス改以上の高騰を見せてしまったのだ。
 BWS自体も生産性が悪く、一度もBWSを使わずMS形態のままでリ・ガズィを運用していた部隊もあったと言われている。そのため、リ・ガズィの生産台数そのものも伸び悩み、RGM-89ジェガンと混成運用されるに留まった。リ・ガズィはその性能をフルに発揮できないまま、高価な量産機としてその一生を終えたとも言える。

 また、0090年に編成された地球連邦軍の外郭新興部隊「ロンド・ベル」隊所属のMS部隊ではパワー不足が指摘されていたRGM-89ジェガンに代わるエースパイロット用/隊長クラス用の重MSの配備要求が高まっており、BWSの研究発展もそこそこにリ・ガズィの制式化が急がれ、当初想定されていた性能をフルに発揮出来なかったとも言われている。
 ロンド・ベル隊MS部隊を率いていたアムロ・レイ大尉は敵対する再興ネオ・ジオン軍や旧ハマーン残党軍が隠し持っているNT用重MSにロンド・ベルの現用機であるジェガンでは対抗出来ないと主張し、AE社で開発が続けられていたリ・ガズィの早期配備を強く要望していた一人であり、連邦軍各部隊の中でも有数の装備優良部隊であったロンド・ベルでさえも敵対勢力の能力を備えるには不足気味であったことが分かる。

 リ・ガズィで試された「可変システムそのもののオプション兵装化」がコスト面において失敗したため、連邦軍第三のZ系MSとなるリ・ゼルでは再び単体での可変形態が可能なMSとして設計されている。MSZ-006A/CZプラスシリーズと違い、コスト削減のためにMSZ-008ZIIの設計を取り入れており、またRGM-89ジェガンとのパーツ共用度を上げている。
 同機はZ系MSに分類されるものの、実情はRGM系MSで初の可変機といった方が正しいだろう。MS形態時のフォルムはかつて、エゥーゴが実用化したMSA-005メタスの発展型、支援攻撃TMS、MSA-005Sメタス改に近いものとなっている。

 可変MSにありがちなピーキーで気難しい操縦性は改善されており、量産型TMSとしては優秀な部類に入る。また、同時期に開発が進んでいた大気圏内用可変MS、RAS-96アンクシャと一部設計を共有し、開発コストを下げている。リ・ゼルがエゥーゴ系TMSの系譜上にあるのに対し、アンクシャはティターンズ主導時代に連邦軍やティターンズ傘下のNT研にて開発された可変TMAに近いラインを持ち、それぞれの連邦軍軍閥で生み出されたTMSの末裔とも言える。

 0095年より生産が開始され、審査目的でロンド・ベル隊に6機が配備された他、旧エゥーゴからのMSA-005やMSA-005Sを引き継いで哨戒任務などで運用していたTMS部隊、低軌道艦隊所属の機動空母ベクトラ艦載機部隊などにメタス系TMSの後継機として配備されはじめた。

 リ・ゼルはリ・ガズィの後継機であり、同様にZ系量産機であるMSZ-006A/CZプラスシリーズとは使用目的が異なるため、Zプラスの後継機としては想定されてはいなかった。Zプラスは地球軌道艦隊や本星艦隊の艦載機として、地球軌道上での要撃任務や大気圏再突入ミッションに特化しており対するリ・ゼルに課せられた「エゥーゴから連邦軍に引き継がれて運用されていたメタス系MSの置き換え」と「リ・ガズィの反省点を踏まえてのTMSの弾力的な運用」とは重複しなかった。

 しかし0090年も後半に入り、過酷な大気圏上層部ミッションを遂行し続けるZプラス系可変MSの老朽化が深刻化してきたことから、連邦軍ではZプラスの置き換えにリ・ゼルを増産することで解決を図ろうとしていた。

 Zプラス系TMSは、かつてのエゥーゴのフラッグシップモデル、MSZ-006Zガンダムの直系量産機であり、カラバで開発された大気圏型を始祖として発展してきた機体で、連邦軍の統制外で開発されたにも関わらずダカール宣言後の連邦軍はZプラスを高く評価して制式採用し、準生産に移した。ノン・オプションでの大気圏再突入能力を鑑みた場合、Zプラスはプロト機の1/3のコストであり依然として高級機ではあったが、コストに見合った機体であったことが分かる。

 しかし、過酷な大気圏再突入ミッションを日常的にこなすCシリーズは量産機故に耐久性に難があり、再突入ミッションは3回ごとに衝撃波と高熱に晒されるVG翼とSFUの全交換を必要とし、また12回目のミッションで再突入は禁止とされ、特に大気圏再突入ミッションを数多くこなす個体の耐用年数の低さが指摘された。12回目以降はスクラップ処分か宇宙専用機とするか、バリュードを装備しなければ再突入は不可能なのである。

 連邦宇宙軍では老朽化しつつあったZプラスを新規製造のZプラスで置き換えるべく、0094年に生産を終えたZプラスの再生産をAE社に打診し、同社もそれに応えたものの、Zプラスは依然として高コストの量産機であり、ジェガンのようにおいそれと大量配備するわけにもいかなかった。
 第一次ネオ・ジオン抗争後のドクトリンの変化もあいまって、高コストが要因となって連邦軍はZプラスの生産再開を断念。耐用年数が迫り、自然消耗していくZプラスをリ・ゼルで更新することが決定された。

 リ・ゼルは大気圏再突入能力はないものの、ZプラスはC4型といった一部の特殊任務機と違い、常に大気圏再突入ミッションを行っているわけではない。それ以外の軌道パトロールやロングラン航行による長距離侵攻作戦においては充分にリ・ゼルでも遂行できるとされていた。リ・ゼルはZプラスC型の随伴機であったメタス改の置き換えも視野に入れ、事実上のZプラスとメタス改の統合機としての位置づけとなった。

 また、懸念されていた大気圏再突入ミッションはバリュードを装備した通常型MSと、大気圏内ではリ・ゼルの兄弟機であるアンクシャが迎撃任務を行うことで今まではZプラスが単独で遂行していた任務を充分にカバー出来るとした。こうしてリ・ゼルは地球軌道上のパトロール部隊などにも配備が開始され、旧エゥーゴ系部隊で重用されていたZプラス、リ・ガズィ、メタス改といった多種雑多な可変機を統合することに成功している。

 メタス、Zガンダム、Zプラス、ZII、リ・ガズィを経て生まれたリ・ゼルは連邦軍MSにおける可変MSの決定版としての地位を築き上げたものの、その後の0100年代に訪れるMSの小型化という新たな波に打ち勝つことは叶わず、0102年に生産を終了し、0123年のムーア紛争時には前線配備を解かれて偵察や救助部隊へと転換となり、0130年には全機退役となった。

 ●RGM-96ジェスタ

 ポスト・ジェガンを見据えてAE社で開発された次期主力機。RGM-89ジェガンは高い生産性と整備性と、簡便な操縦性から現場から好評で迎えられた機種で、第二次ネオ・ジオン抗争終結後より実戦配備が本格化したが、第二次ネオ・ジオン抗争時にはジェガンを運用していたロンド・ベル隊では損耗率の高さが指摘されていた。
 物量戦を基本ドクトリンとする地球連邦軍正規部隊での集中運用に合致したジェガンであったが、ロンド・ベル隊のような、正規部隊から離れて作戦を取る少数精鋭のエリート部隊では必ずしもジェガンが適していたわけではなく、その性能不足が指摘されていた。
 これはグリプス抗争時、当初、主力MSとしてリック・ディアスとドミンゴによる集中運用を目論んでいたエゥーゴMS部隊が、AE社の思惑などで結局はネモを大量調達してリック・ディアスの不足分と、エゥーゴに大量配備されずに終わったドミンゴの代わりを補った結果、コストパフォーマンス面で難題を抱えたのと似たケースだと言える。

 そうしたジェガンの性能不足を補完し、特殊部隊向けの機体として開発されたのがRGM-96ジェスタである。迅速な作戦行動や隠密行動を尊ぶ特殊MS部隊のために高出力ジェネレーターを搭載し、そのパワーを機体制動に回すことで性能を発揮する。そのため、ガンダム系程ではないものの、操縦するパイロットにも熟練を要する。

 当初はジェガンの後継機として、パワーバランスを平均化したB型がAE社から提案されたものの、軍側はジェガンの生産続行を譲らず、ジェスタは一部の特殊部隊向けにスポット生産されたに過ぎない。地球に潜伏するスペースノイド活動家を取り締まるマン・ハンターや、対テロリスト部隊などに優先的に配備された。ロンド・ベル隊ではRGM-89Bジェガン改との比較テストで数機が配備されたのみですぐに引き上げられ、ジェスタがそのままロンド・ベル隊で普及することはなかった。

 ジェスタは0096年のラプラス事件におけるネオ・ジオン残党狩り作戦や、0099年の月面危機事件の際にも特殊部隊によって運用され、月面での奪還作戦において投入された。また、B・ハウエル元公国軍中将に呼応するように発生したムンゾでの共和国軍極右派によるクーデター未遂事件ではジオン共和国政府からの依頼を受けた連邦軍特殊部隊によって多数が集中運用され、決起部隊の制圧に活躍した。

 ●RGM-98グスタフ・カール

 RGM-89ジェガンの後継機。特殊部隊専用MSであるジェスタと違い、全汎用型MSとして高い性能を誇り、ジェガンの発展型としてはこちらが本筋にあたる。RGM系MSでは初のドム・クラスに近い重MSとなり、かつてのMSA-099系などの技術も導入されている。これはジェガンにおいて問題視された生残性を向上させる狙いがあったようだ。

 同機はミノフスキー・クラフト搭載型MSとの連携戦を重視しており、地上ではミノフスキー・クラフト搭載型SFSとのコンビネーションを想定した設計だったとも言われている。グスタフ・カールと同時期に開発されたベースジャバーやド・ダイ改の後継機「ケッサリア」は結局は熱核ジェット・エンジンで稼働するメカだったが、ほぼグスタフ・カールとのコンビネーションにおいて性能を発揮した。
 
 グスタフ・カールは0097年から量産が開始され、特殊部隊ではRGM-96ジェスタ、前線部隊ではグスタフ・カールといった具合で役割分担が予定されていたが、地球偏重派将校団による横槍が入ったため、その大半が地球上の防空部隊やエリート部隊に配備が偏っている。また、軍がサナリィからのレポートを受け、MSの小型化を進めつつあったため、グスタフ・カールと兄弟機とも言えるジェスタの行き先も不安となり、結局はジェガンを淘汰することなく生産を終了し、後の生産をRGM-109ヘビーガンに譲っている。

 0105年のマフティー一揆の際、謎のテロリスト集団「マフティー」討伐のためにキンバレー隊を再編して結成されたキルケー隊で集中運用され、見事マフティー軍を鎮圧している。地球上での戦果が多いが、0099年のムンゾでのクーデター未遂事件ではジェスタやネロといったRGM系の上位機種と共に混用され、決起軍鎮圧に参戦した記録も残っている。

 ●RGM-109Aヘビーガン

 0109年に採用された連邦軍初の小型MS。0093年に設立された軍の諮問機関「サナリィ」が提唱するMSの小型化に則って開発された機体で、15mクラスの小型機である。当初、ポストジェガンとして開発され、就役から20年が経過して陳腐化しつつあったRGM-89ジェガンシリーズの後継機と目されていた機体であった。F-50Dロトを始祖とする可変小型MSを除いては、地球連邦軍初の15m級量産型MSである。

 しかし実際にはヘビーガンはジェガンを15mクラスに縮めただけの機体であり、多少性能は向上しているものの、次世代機としてはジェガンと変わり映えのしない機体であった。また、開発当時はマフティーの乱が平定された後だったこともあり、予算獲得に苦労して戦力化が進まず、宇宙軍主力部隊に広く配備されているジェガン全機を駆逐するには至らないまま調達を終えている。
 また、MSとして性能が安定して、MSとしてのブランドを確立していたジェガンの方に信頼を置くパイロットも多く、連邦軍初の小型MSであるヘビーガンは小型MSとしてはまだまだ課題の残る習作とも言える機体であった。

 ヘビーガンはAE社、ルナツーやコンペイトウに設置された生産ラインで製造され、主に各サイドのコロニー駐留部隊に配備されたが、大半はジェガンとの混成部隊を構成しており、一部の特殊部隊ではヘビーガンのみで構成されることもあったが、これが当時の連邦軍MS部隊の現状であった。

 最初に経験した戦闘はオールズモビル軍との低劣度紛争で、多数のヘビーガンが鎮圧作戦に動員されている。しかし、0120年代に入るとヘビーガンと言えども旧式化しつつあり、連邦軍ではヘビーガンに続く主力機の開発を進めなければならなかった。
 サナリィの小型ガンダム・タイプ「Fシリーズ」の試作を経た結果、ようやく次期主力機としてRGM-119ジェムズガンと、RGM-122ジャベリンがロールアウトしている。また、F71Gキャノンといった機体も制式採用され、部隊配備も開始され、連邦軍でも小型MSが主力機として台頭しはじめた。

 ヘビーガンはジャベリン配備と共に代替が進み、各部隊から捻出された機体はジェガンと共に各コロニーの自衛軍に譲渡された。これらは0123年に勃発したサイド4・フロンティアコロニーにおけるコスモ・バビロニア紛争時に台頭したクロスボーン・バンガードの軍事力と、彼らが掲げる貴族主義を脅威に感じた各コロニー政庁が連邦軍の駐留部隊増強を政府に対して要求したものの、弱体化が著しい政府はC・V軍対策で二転三転し、宇宙軍主力部隊の装備更新によって捻出された旧式兵器を各サイドへ譲渡し、これをもって自衛せよという姿勢を見せた結果であった。

 こうした連邦政府の弱腰姿勢がなし崩し的に各コロニーを軍事的に独立させ、宇宙戦国時代と呼ばれるコロニー国家間の戦争が頻発する要因にもなっている。くしくも連邦政府は長年スペース・コロニーの自治独立を一切認めず、独立運動を押さえ込むために各サイドに部隊を駐留させていたが、独立戦争の嚆矢であったジオニストの活動が弱体化し、対する連邦軍も度重なる戦乱や0087年の内訌戦が原因で弱体化したこと、更にC・Vの出現と連邦の二転三転の弱腰政策がコロニー独立を後押しする結果となった。

 しかしこの時期のコロニー国家の軍事的独立はいたずらに武器流出と地域紛争を促すだけであり、スペースノイド独立に目を光らせていた連邦軍の弱体化と相俟ってコロニー国家間の軍事力の均衡を崩し、宇宙上の治安は急速に悪化していった。
 かつてのジオン公国やその後継組織、及びエゥーゴが成し遂げられなかったスペースノイドの自治・独立は、皮肉にも前時代的な貴族主義を掲げるクロスボーン・バンガードの出現と、当時の連邦政府の度重なる失策と後手後手によって皮肉にも実現はしたものの、結果として「木星動乱」や「サイド間紛争」といった新たな戦乱の種を撒いただけで紛争の縮小再生産を続けるに過ぎなかった。

 コロニー間紛争やスペースノイド同士の争いが顕在化したのは木星動乱平定後のことであり、かつてのザビ家やコスモ・バビロニア帝国を彷彿とさせる木星帝国という共通の敵が消滅したためである。また、戦乱から立ち直った各サイドの経済復興が軌道に乗ったこと、連邦政府からのコントロールを抜け出し、木星動乱時には連邦政府と対等の外交力を実現させたことも決して無関係ではない。
 そして宇宙世紀の第二段階とも言えるスペースノイド同士の武力衝突に連邦政府は関心を持てず、またそれらに武力介入する体力すら失われていた。

 ちなみに各コロニー防衛軍に移管されたヘビーガンはその後も各コロニー国家軍や、連邦軍MS部隊によって主力機として使用され続け、0133年の木星戦役時、0153年のザンスカール戦争時にも旧式化しつつも多数が連邦軍や各コロニー国家軍によって使用され続けた。

 ハッテの地方軍閥による軍事政権が樹立していたサイド2・マケドニア軍では、リガ・ミリティアとザンスカール帝国軍との戦闘に介入した時に独自にマイナーチェンジしたヘビーガンを多数動員した記録が残っているが、旧式機ゆえにザンスカール帝国軍MSの猛攻に対してはほぼ無力であった。

 ●RGM-111ハーディガン

 RGM-109ヘビーガンは連邦軍初の小型MSであったが、軍側が要求する仕様を満たせずにごく少数の生産に終わった。小型MS開発においては新興組織であるサナリィと、ガンダム開発計画からエゥーゴ時代を経て数十年いらい、連邦軍とは懇意にしてきたAE社の二社局が苛烈な競争を繰り広げていた。

 しかし、連邦軍へのMS開発と納入では長い実績を誇り、業界では老舗となるAE社は後発故に小型MSへの開発意欲が高く、軍からも注目されていたサナリィに大きく水を開けられてしまう。連邦軍初の小型機であるRGM-109ヘビーガンはAE社が手掛け、まだ実機を完成させていなかったサナリィより一歩リードしたかに見えたものの、取り合えずジェガンを小型化させただけのヘビーガンは軍が要求する仕様を満たせず、ジェガンとの並行配備のみで短期で調達は終了してしまった。

 対するサナリィはヘビーガンの事実上の失敗を他山の石とはせず、ただ小型化させただけのジェガンの発展型ではない、一から小型MSのノウハウを構築することを推し進めた。こうして完成したのがFシリーズであり、0111年にはF90がロールアウトした。F90“ガンダム”は基本となるMSも高いポテンシャルを持つだけではなく、各種ハードポイントを有することで様々な作戦に対応できるマルチロール機を目指した。
 今までもRX-78やRMS-141、MS-09系などの汎用MSに様々なオプションを付与して局地戦闘に対応させることはなされてきたが、F90ではあらかじめ各種オプションに対応したドライバをデフォルトで装備し、換装後の調整を省くことに成功した。

 F90はただ小型化させるだけではない、各種局地戦闘、空間戦から大気圏再突入戦、地上戦、空中戦、水中戦といった戦闘環境を考慮し、それらをオプション兵装を装備させるだけで対応させることに成功したのである。F90はサナリィにとってはまだ途中発展の機体であったが完成度は高く、AE社は焦りを感じた。AE社ではサナリィに産業スパイを送り込んでF90のデータを入手。これを元にAE社が開発したのがRGM-111ハーディガンである。
 同機はただのヘビーガンの再設計機ではなく、事実上のF90のAE社版量産機とも言える内容である。ハードポイント数はF90より少ないが、ただのジェガンの小型版であるヘビーガンより、進歩した設計を持つ。基本性能だけではあれば、RGM-98グスタフ・カールを大きく凌駕する。

 ハーディガンはヘビーガンに次ぐ採用を見込んでいたが、サナリィ側からの抗議もあって大量生産には至っていない。AE社とサナリィはこのハーディガン開発を巡っては訴訟騒ぎにまで発展する程関係が悪化したが、AE社はその莫大な生産能力をサナリィに提供することをバーターにサナリィ側から小型・高出力ジェネレーターの設計図やF90系のハード・ポイントシステムのソース供給を提供してもらうことで和解している。
 これには連邦宇宙軍の仲裁があったとも言われており、小型MSにおいて業界をリードしていたサナリィが軍のMS開発競争で必ずしも有利に立っていなかったことを証明するものでもある。
 サナリィはAE社のテリトリー下ではないルナツーやコンペイトウの軍工廠での生産を目指していたものの、連邦軍は30年前の内戦において主だった拠点を失っていることや、AE社との繋がりが深い旧エゥーゴ系の将軍が宇宙軍に多数在籍していたことから、軍工廠のみでのMSの生産については消極的であり、結局はAE社の力を借りなければ旧式化したジェガンやジムIIIを置き換える程の大量生産は不可能だったのだ。

 だが、AE社にとってはサナリィの技術を使わなければならない、サナリィから技術提供をしてもらうという後ろめたさもあり、小型MS開発競争では事実上の敗北を喫したことになる。以降、AE社はサナリィ開発機を委託生産、あるいはサナリィのライセンス下において技術を改良するという脇役に甘んじることになるのだった。ハーディガン産業スパイ事件はそれだけのインパクトを持っていたと言える。

 産業スパイ疑獄に関わったことからハーディガンはダーティーなイメージがついてしまい、軍も大量投入という決断が下せずヘビーガン以上に生産数が少ない機体となり、一部のテスト部隊やAE社傘下のトライアルグループで試用されるに留まっている。F90の試作機数が足りない場合は、機体特性の近いハーディガンが兵装テストなどに利用されることもあり、F90の量産機という面目だけはどうにか保つことが出来たがAE社の技師たちにとっては忸怩たる思いだったことには変わりはないだろう。


  UC0123~0153年

 ●RGM-119ジェムズガン

 0119年に採用された小型MS。ただ単にジェガンを15m級にダウンサイズさせたRGM-109ヘビーガンの失敗を踏まえて設計されたものでMCA構造を採用し、大幅な軽量化が実現している。開発はサナリィ、製造はAE社が行っており、空間戦用のRGM-122ジャベリンと共通した設計を持つ。

 当時の連邦軍は共通規格の設計に、それぞれ空間戦用と陸戦用、二種類のMSを開発することで開発コストを下げようとしていたという。本来であれば汎用型一機種のみ、あるいはF90シリーズのように一機種に対して陸戦用・空間戦用のオプション装備を開発すれば事足りたが、連邦軍の地上部隊ではジェガンではなく、それよりも更に旧式であるRGM-88ヌーベルジムIIIを依然として主力機としている状態にあったため、足並みを揃えるために独自に陸戦用MSを調達する必要に迫られていた。
 一見して、空間用と陸戦用の機体を別々に開発するのは、F71やF90で実現させたオプショナル構想からは正反対のアプローチとも言えなくもないが、F90の場合は大胆にオプション対応にした結果、運用面ではコストダウンや時間短縮に成功したものの、連邦軍の基本ドクトリンである大量調達には向かないという弱点が表面化したこともあり、サナリィの開発チームではジェムズガンとジャベリンにおいては基本構造は共通化させつつも、陸戦と空間戦で用途を固定させる方向性を模索した。F90のように全汎用型MS+オプションで対応させるのではなく、設計を共通化させつつも異なる用途に対応させようとしたのがジェムズガン/ジャベリンなのだ。

 また、この時期には地球上からは長年連邦軍を悩ませていたジオン残党勢力が消滅し、地上には敵勢力はほぼ存在していなかった。当時の仮想敵であるクロスボーン・バンガードも降下部隊は送っておらず、軍上層部では今後地上では大規模な戦闘は発生しないだろうという判断を下し、地上の戦力削減を進めることを決定した。
 そこで汎用機よりも機能を地上用に限定してコストを削減した機体を少数投入すればよいという考えから、RGM-119ジェムズガンは産み出された。あくまで共通規格設計の本丸はジャベリンであったことが分かるだろう。

 0119年より、政府が置かれているワシントンの防空隊を中心に配備が行われたが、当初は投入ペースは極めて遅かった。しかし0122年にオールズモビルのテロが頻発すると急遽、配備計画が前倒しとなり、翌年には大量生産が決定されている。これはオールズモビルが限定的ながらも降下作戦を敢行し、MS部隊をバリュード降下させ地上の連邦軍基地や各都市を攻撃したためである。
 その後、ジェムズガンは地上部隊の主力機として30年近くの間、君臨し続けたがその間に発生した戦乱の大半は宇宙上で発生しており、ジェムズガンがそれらの戦乱平定に寄与することはほとんどなかった。

 0153年に発生したザンスカール戦争では、ようやくジェムズガンにも戦闘の機会が与えられたが、既に30年前の設計のまま配備され続けていたジェムズガンは旧式化しきっており、地球へ次々と降下してくるザンスカール帝国軍「ベスパ」の新型MSに対抗できることなく、各地で奮闘空しく撃破されていった。奇しくも、ザンスカール帝国軍の主力MSはサイド2に置かれていたサナリィ・ハッテ支局が開発に携わっており、歳の離れた兄弟機が砲火を交えたことになる。

 一部の機体はリガ・ミリティアと共闘する部隊でゲリラ戦闘に使用され、リガ・ミリティアの戦線を支えたという。しかし大半の地上部隊はベスパの新型MSに苦戦を強いられ、戦線を大きく後退させたことには変わりはない。これらの機体は全汎用機に改良されたRGM-122Bジャベリン後期生産型や当時の最新機種だったRGM-147ジェイヴスに序々に取って代わられていった。

 ●RGM-122Aジャベリン

 0122年に採用された小型MS。RGM-119ジェムズガンと共通した設計を持ち、こちらは空間戦仕様として設計された。しかし後年は汎用型に設計が修正されたB型も量産に乗った。これらの機体はザンスカール紛争において連邦軍MS部隊の主力作戦機としてリガ・ミリティアMS部隊と共にザンスカール帝国軍「ベスパ」と戦ったことで知られている。

 ジャベリンは制式化当時、ムーアにおいて猛威を振るっていたクロスボーン・バンガード軍の高い格闘性能を持つMSに対抗するために、背部バックパックに実体型のショットランサーを装備しているのが大きな特色となっている。
 元々は対艦戦用のローテク兵器として想定されていた武装だが、C・V軍のMSもコロニー制圧戦を想定して、ランサーを装備する機体が多くそれらを意識した武装だったようだ。
 また、ジェムズガン同様、量産型MSとしては初めてビームシールドを実用化した。しかし初期生産型は実体型シールドを装備する機体も多数存在し、ビームシールド装備が本格化したのは木星動乱時を前後していると思われる。

 ジャベリンは、サナリィで開発されたFシリーズをはじめとする試作機群をベースに設計されており、当時の量産型MSの中では高性能機でオールズモビルのMS群とも対等に渡り合える性能を持っていた。旧式化したRGM-89ジェガンを置換えるべく生産が開始されたが、当初は月に一機程度しか生産されず、配備されたのも一部の試験部隊でジェガンを置換えるのは当分先のことだと思われていた。

 しかし、ジャベリンの運命を変える事件が制式採用年の翌年に発生した。それはコスモ・バビロニア紛争の勃発であった。この紛争でC・V軍が投入した小型MSは高い機動性と格闘性能を誇り、旧式化しつつあったムーア駐留軍のジェガンを文字通り蹴散らし、サイド4・フロンティアコロニーの占領とコスモ・バビロニア国家樹立を許してしまう散々たる結果に終わった。

 当初、連邦政府は辺境のコロニーで起こったスペースノイド同士の内輪揉めと決め付け、事態を静観しC・V軍に対して日和見を決め込む議員や逆にこの事件をきっかけにマフティー一揆いらい、一旦は終息したスペースノイド独立運動が再び活発化するのではないかと懸念を抱くアースノイド派議員もおり、政府はフロンティア・サイドの役に関しては大きく対応が揺れてC・Vへ割譲を認めるか、軍を動員して鎮圧するかで二転三転した。
 対応を誤ればかつてのティターンズ動乱のよう過激な反スペースノイド運動が活発化しかねない状況でもあり、当時の連邦議会は身動きの取れない状況であった。

 しかし、ムーアからの割譲を容認した直後、フロンティアIIでの大量虐殺事件が明らかとなり、C・V軍のダークサイドを目の当たりにした世論は一気に反C・Vへと傾いていった。弱腰姿勢だった政府も世論の突き上げを食らう形で重い腰を上げ、ついにC・V軍対策へと乗り出した。
 連邦宇宙軍に対してはジャベリンの大量配備を挙行し、MS部隊の増強と機材更新を行いつつ、捻出された旧式MSや一部艦艇を各コロニーの警備軍に払い下げ、C・V軍の他サイドへの侵略に対する牽制とした。兵器のコロニーへの払い下げは当初、議会内でも根強い反対論があったが宇宙軍内の旧エゥーゴ派をはじめとするスペースノイド出身の軍人グループや、コロニー軍編成による利益拡大を目論むAE社がロビイングを行った結果、兵器払い下げが実現した。

 しかし、この各サイドや月面自治都市へのなし崩し的な兵器払い下げは、後の宇宙戦国時代のきっかけを作った要因でもあり、連邦の対C・V施策では唯一の、そして最大の失策だったと言えるだろう。

 またC・V軍もコスモバビロニア建国戦争後、ベラ・ロナ率いる左派と、極端な貴族主義を貫きフロンティアIIでの虐殺を正当化する右派に分裂し、内紛を演じたことがきっかけで対策後も未だ弱腰で、当初は最終的な軍事行動は起こさないという基本方針を固めつつあった連邦政府もついにC・V軍を武力鎮圧すべしと方針転換した。
 この頃、フロンティア・サイドを領有していたムーア政庁では連邦政府のC・V対応に不満を募らせつつあり、また国境を接するためいつムーアとコスモ・バビロニアとの間で紛争が勃発してもおかしくはない状況であった。ムーア政庁やムーア市民から見ればいつ、フロンティア・サイドのようにC・V軍の蹂躙を受けかねない状況であり、次第にムーアでは反C・V感情が高まっていった。
 折りしも兵器払い下げ政策によってムーア警備軍が増強されていたため、早い段階で連邦が武力介入しなければ、人類史上初のコロニー国家間戦争が勃発しかねないという危機的状況にまで発展しつつあったのだ。

 そして各コロニーサイド政庁、月面自治都市連合といった連邦陣営が反クロスボーン・バンガードを掲げ、情勢は一気に連邦優勢となった。一旦はコスモ・バビロニアと国交を結んだムンゾやリーア、月のフォン・ブラウン市までもがフロンティアII市民虐殺を理由に経済制裁を始めるに至り、前時代的な貴族主義の宇宙国家は追い詰められていった。

 かくして、フロンティア・サイドで発生した内紛に、連邦軍が軍事介入することが決定され、翌年0124年に連邦軍はフロンティア・サイドへ進軍し、分裂したC・V軍を排除・殲滅することに成功する。この時に大量生産されたジャベリンが初めて実戦投入され、C・V軍MSと対等に渡り合い今度はC・V軍MSを一気に旧式化に追い込んだ。
 左派と右派に分裂し、内部抗争に明け暮れていたC・V軍は連邦の軍事介入によって脆くも瓦解し、市民からの支持を受けていた左派はいずこへと姿を消し、また右派の貴族たちは軍によって身柄を拘束され、劇的な侵攻劇によって幕を開けたコスモ・バビロニア帝国は一年足らずで崩壊するに至った。
 後ろ盾となっていたブッホ・グループも連邦政府の管理下に置かれ、一旦国営化された上でブッホ・エアロダイナミクス社はエンジン部門がAE社、MS開発・製造部門をサナリィのハッテ支局、関連会社のブッホ・ジャンク・インクをムーア政庁がそれぞれ吸収して消滅した。

 かくして新MSジャベリンはサイド4・フロンティアサイド解放戦争の立役者となったというわけである。この時に実績を見せ付けたジャベリンは本格生産に移され、連邦宇宙軍の主力機としてジェガンを退役に追いやったが、ジャベリンもまたジェガンの二の轍を踏むかのように、30年近くも主力機として君臨し続けた。
 0153年のザンスカール紛争時には、連邦軍MSでは唯一、ザンスカール帝国軍MSに対抗できる性能をかろうじて維持していたため、最前線ではほぼジャベリンが主力作戦機となっていた。フロンティア・サイド解放作戦、木星動乱、ザンスカール紛争と三つの戦争を戦い抜いたジャベリンは隠れた名機と言えるかも知れない。

 空間戦に限定した初期生産型のA型、全領域での投入を可能としたB型、ビーム・カノンパックを装備したC型(ジャベリン・キャノン)、F90の大気圏飛行ユニットからフィードバックされたミノフスキー・クラフト装備型のD型、電子戦(EWAC)仕様のE型、ビーム・ローター試験型のF型、ヴェスバーを装備し、第二世代バイオセンサーを操縦系に組み込んだG型(ストライク・ジャベリン)など、バリエーションも多い。
 このうち、F型にて試されたものの、連邦軍にて採用されずに終わった飛行用ビーム・ローターの雛形は後のザンスカール帝国軍の可変飛行型MS、ZM-S08Gゾロのビーム・ローターへと発展している。

 ●F71AGキャノン
 
 サナリィが開発した中距離砲撃支援用MS。RX-77ガンキャノンシリーズのコンセプトを受け継いだ、ガンキャノンシリーズの後継機でもある。その原型はサナリィが0114年に開発した小型MS、F70キャノンガンダムであり、キャノンガンダムの量産機的な位置付けがなされている。
 ちなみにF70は後のリガ・ミリティアの初期の主力作戦機、LM111-E02ガンイージーの原型ともなっており、Gキャノンとガンイージーは年の離れた兄弟機ということになる。それだけF70の設計コンセプトが優秀だったとも言えるだろう。

 連邦軍は約30年間、MSをRGM-89ジェガンに機種統一しており、一部を除いて独自の特殊作戦機はこの頃はほとんど保有していなかった。しかし火星征伐、オールズモビルとの紛争の戦訓によって中距離砲撃支援機の必要性が再び出てきたため、Gキャノンが開発された。
 先発機であるF90のハードポイントシステムがフィードバックされており、両肩に装備するキャノン砲そのものが大胆にオプション化され、ガトリングタイプ、実体弾タイプ、ビーム砲タイプなど数種類のオプション兵装が用意された。

 0115年に量産が開始され、0120年のオールズモビル紛争時に実戦投入された。その後、コロニー駐留部隊などに重点的に配備され、コスモ・バビロニア紛争、0133年の木星戦役時などにもその姿を見せている。

 Gキャノンはサナリィや軍工廠で製造されたA型、AE社で独自の改良を施された上で製造されたB型などがあり、A型はコロニー駐留部隊、B型は月面の防空隊に配備され、それぞれ役割を分担した。

 0153年のザンスカール紛争時には、各コロニー国家軍や月面自治都市の警備軍、リガ・ミリティアのゲリラ部隊でも使用されていたが、既に旧式化著しく、戦争の趨勢に寄与することは無かった。

 ●F91B

 F91の準量産型。量産化のためにデチューンされているのが特徴で、エースパイロット用や特殊部隊用にスポット生産されたものである。
 F91は、F90シリーズの後継機、サナリィが目指していた小型MSの本丸、フラッグシップモデルとして0122年にロールアウトし、翌年のコスモ・バビロニア紛争に試作機が1機、反C・Vレジスタンスの手によって運用され、クロスボーン・バンガードMS部隊に出血を強いたことで知られている。

 戦後、F91のポテンシャルの高さに目をつけた連邦軍が、特殊部隊向けに量産、制式採用を決定した。F91はコストダウンと軽量化を目指してムーバブル・フレーム構造に代わる新構造、MCA構造を採用しており、試作機であってもある程度の量産が効くという利点を持っていた。

 F91Bは試作機と外見上の違いは全く無いが、搭載されているバイオコンピュータの一部に制限がかけられており性能も若干低く押さえられている。従って高速戦闘モードに移ることも不可能である。

 0126年より生産が開始され、特殊部隊やエースパイロット用に配備された。0133年の木星戦役時には、新生クロスボーン・バンガードと共闘した連邦軍ハリソン小隊で使用され、他部隊でも隊長機クラスは全てF91Bであった。

 F91シリーズは、0153年時のザンスカール紛争時においても現役だった部隊もあり、リガ・ミリティアでも3機を運用していた。さすがに30年前の試作機ともなるとザンスカール帝国軍の新型MSに対して苦しい戦いを強いられたが、LM312V04VガンダムやLM111-E02ガンイージーの機種転換用の訓練機として最適だったようだ。

 ●RGM-147ジェイヴス

 地球連邦軍、最後の制式量産機。RGM-119ジェムズガン/RGM-122ジャベリンの統合型で、全汎用型MSとして完成している。RGM-109ヘビーガンを始めとする、RGM系「センチュリーシリーズ」の集大成的な機体で、その特性はむしろF91に近く、F91の量産機というべきMSであった。0153年の時点で連邦軍MSで唯一、ザンスカール帝国軍MSに対して性能面で優位に立つ機体であった。

 量産MSとしては初めて操縦デバイスに第三世代バイオ・センサーを標準装備し、NT能力の無いパイロットでも脳波パターンをある程度読み取ってそれを操縦系にフィードバックさせることが可能である。また、補助コンピュータでそれらの操縦系や火器管制がサポートされるため、パイロットに負担をかけることはない安全な簡易サイコミュ・システムである。
 機体設計はサナリィ・ノア支局とルナツー兵器工廠の共同開発だが、第三世代バイオ・センサーやソフトウェアはAE社グラナダ支社が開発に携わっていた。サナリィ内ナンバーはF93として開発が進められていた。

 機体バランスは良好で、RGM系では「ガンダムを越えた」と言わしめる程の高性能機として完成した。0147年に制式化されて、以来生産が続いていたが0153年現在、連邦軍に配備されているヘビーガン/ジャベリン/ジェムズガンといった旧式機を代替する数を調達できておらず、一部のエリート部隊でジャベリンB型と混用されているに過ぎない。
 決してコストは高く無い機体だが、この時期の連邦政府は宇宙上での紛争に関して無関心を貫いており、宇宙軍への予算調達を怠っていたことがジェイヴス大量量産の最大の妨げであった。

 ザンスカール紛争後期、リガ・ミリティアと共闘する宇宙軍ムバラク艦隊の艦載機として少数が戦線に投入された記録が残っている。ザンスカール紛争後、連邦政府の機能が加速度的に崩壊していったため、このジェイヴスが連邦軍最後の量産MSとなった。


 

 

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