第16話 小木田の棒の手

愛知県春日井市                                                

 旧関田村の一部に位置する愛知県春日井市小木田の一帯は、今ではすっかり現代的な住宅地に様変わ
りしている閑静な町である。当地にも愛知県指定無形民俗文化財の棒の手が伝承され、当地の保存会によ
って演技の公開と後継者の育成が成されている。


  平成7年10月15日、この日は秋祭りということも
 あって近隣の町内からも御神輿が繰り出し、貴船
 神社を経由して小木田神社へと巡行、神社では
 棒の手と共に関田神楽も奉納され、多数の地域の
 方々に披露された。


  小木田の棒の手は、その名を源氏天流という総合
 武術である。当流は奥州十二年の合戦で名を馳せた
 勇将、八幡太郎義家を元祖とし、三州吉良家を経由
 した後、尾張国瀬古村の住人、村瀬七郎左衛門尉
 良章に伝授された。



彼は自村に民間道場を開設して当流の教授に尽力し
幾多の門弟を育成、やがて近隣の村落である当地に
も伝来して現在に至っている。


なお、資料によれば当地の源氏天流の演目は以下の
とおりとなっている。

 太刀棒  手割棒  小手返  棒合  十手槍
  
 手鎌槍  長柄槍  日傘槍  傘槍  竹切  長刀



 当流の演技は、質実剛健飾り気がなく、激しい気合を伴う
 豪快な演技は戦国の威風を漂わせる勇壮さがある。


 ある演目では、相手が繰り出した棒を抜打ちで下段受した
 刹那、雨よ霰よと繰り出される棒を、跳躍を伴いつつ右に
 左にと切り返して受け流す。


 太刀で防戦する方は、攻防の最中に左手で相手の棒を
 掴むと、一転してこれを奪取せんとして強力を駆使して
 逆襲に転じ、右手で太刀を掴んだまま、両手で相手の棒
 を完全に地面に押さえ付けた。


 これに対して、得物を諦めて相手から離れた棒使いは素手で挑戦し、打ち掛かって来た相手を投げ放つと、
素早く棒を拾って止めを刺し、演技は終了したかに見えた。

 
ところが地面に伏した方は実はこれが死んだふりで、
悠然と立ち去る相手を再び背後から襲撃するといった
風で、非常に目まぐるしい攻防の演技である。


 また、傘対槍の演技もある。この種の演技では傘を
用いて奇麗に受け流すのが普通であるが、当地では
槍を繰り出す度にメッタ刺しにする為、非常に緊張度
の高い演技である。この際疾い演技の傘使いには
少年が大役を果たし、観衆の喝采を浴びていた。


 演技にはこの他にも、十手、長柄鎌など様々な武器
が使用されるが、この日は斬試も行われ、観衆の注目
を集めていた。

この演技は青竹を棒の代用として攻防を行い、相手が竹を繰り出して来た時に一刀両断する等、形の中に斬試
が組み込まれた演技である。
 全ての演技終了後、楽しい餅投げ等も行われ、境内は終日、地域の方々の歓声で溢れていた。当地でも人々
の暮らしの中で、古武術が躍動している。

 (参考文献)

・春日井市史 資料編4            発行所    春日井市

・愛知の馬の塔と棒の手沿革誌       編集発行  愛知県棒の手保存連合会

・愛知県の歴史散歩 上,下         編者 愛知県高等学校郷土史研究会  発行所 ㈱山川出版社

・愛知県文化財調査報告書 第55集 愛知県の民俗芸能 

-昭和61~63年度 愛知県民俗芸能総合調査報告書-             発行  愛知県教育委員会



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