第4話 ケンケト祭

滋賀県蒲生郡竜王町                                             

 滋賀県蒲生郡の各所には長刀振りと呼ばれる芸能が伝承されているが、ここ竜王町山之上では、5月3日に
ケンケト祭りの名で長刀振りが行われ、国の無形民俗文化財に指定されている。

 当地を訪問した午前10時頃、祭礼の一団は長刀を
振りながら日吉神社に練り込んで行くところであった。


 長刀を小脇構えた少年達が、風雅な鉦の音に合わせ
ながら左右にステップを踏みつつ静々と前進する。
そしてその最中に、長刀を頭上で回転させたり、又は
自身がその場で回転するなどして演技を披露している。







 また、少年達の衣装だが、裾に鈴の付いた縞模様
の腰巻を着用していて、観る者に南方の民族衣装の
ような印象を受けてしまったが、これは鎧の草摺りを
模しているのかもしれない。


 さて、祭礼の一団が神社に到着したところで、少年
達が一人ずつ演技奉納を行った。相撲の弓取り式の
ように自在に長刀を操りながら各々が妙技を披露。


片手でクルクルと回転させつつ背中を通したり、あるいは足下で風車のように回転させつつ観衆をかすめる
ように円を描いて疾走したりする。

そして圧巻は長刀を掴んだ両手の間を、まるで縄跳び
をするかのように、連続跳躍して前後に体を抜く技で、
非常に難易度の高い演技である。


 伝承によると当地の長刀振りは、織田信長の甲賀
攻めに参戦した地元の郷士達の姿を表現したものだと
されているが、その起源由来は諸説があり、詳細は
不明のようである。








 演技の最後は、何度も空高く長刀を放り上げては、
落下してくるところを素手で掴む所作である。周囲から
は、「もっと高く放れ!」と盛んな声援が浴びせられて
いた。


この声援も演技者の所作ごとに口上が決まっている
ようで、連続跳躍の時は「軽い!軽い!」、足を踏み
鳴らす時は、「トン。トン。トン!」、長刀を回転させる
時は、「回せ!回せ!」と叫んでいた。


 この後、先端に大鷺を掲げた大鉾を先頭に、祭礼の一行は、日吉神社、山王神社、そして杉之木神社などと、
各所を巡行して演技を披露、併せて艶やかな風流踊りも行われ、町は中世の遺風に溢れた。

※写真は後年撮影の物を使用。

 (参考文献)

・日本民俗芸能事典  編集 日本ナショナル・トラスト 監修 文化庁 発行 第一法規出版㈱

・山之上ケンケトまつり     編集発行 竜王町山之上祭礼保存会

 



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