イヴァン・ウラジーミロヴィチ・マスロフ
戦車兵。驚嘆すべき戦歴。何しろ1939年のポーランド侵攻以来7年間を戦車の中ですごし、最後はベルリンにまで行ってしまうのだ。その間もカレリア、イラン、クリミア、ドン流域など様々な戦場を駆けめぐり、6度の負傷を経験。これくらいのキャリアの持ち主になると、前線ではすでに神様のような存在で、事実その談話からは狷介と言っていいほど誇り高い古参兵の姿が浮かび上がってくる。上官たちとしてもさぞ扱いにくかったことだろうが、このような人材を大事にしないと戦争に勝てない台所事情はどこの国の軍でも変わりがない。
また、15で働きに出なければならないほど恵まれない家庭に育ち、ストリートで喧嘩に明け暮れた不良少年という生い立ちにも注目したい。そんなマスロフ氏にとって、赤軍は衣食住を保障し、様々な技能や規律を習得することもでき、ある程度は除隊後の生活に備えられるだけの俸給が出る「素晴らしい軍隊」であった。これはソ連に限らない話であろうが、世界が今よりずっと貧しかった時代、マスロフ氏のような軍隊観を共有する者は多かったはずである。こうした社会背景を無視して当時の人々の軍国主義的な世界観を断罪したり、逆に軍隊を「人生の学校」として無闇に賛美したりすることは、ごく控えめに言っても歴史的センスを欠く振る舞いではないかと思う。(出典:http://iremember.ru/tankisti/maslov-ivan-vladimirovich.html)
イヴァン・マスロフへのインタビュー:
「兵士たちとの対話」へ戻る