【芸能・社会】ショーケン死す 68歳 破天荒な人生のエンディング2019年3月29日 紙面から
ミュージシャンで俳優の萩原健一さん(はぎわら・けんいち=本名・萩原敬三)が26日午前10時30分、東京都内の病院で消化管間質腫瘍(GIST)で死去した。28日、所属事務所が発表した。68歳。さいたま市出身。「ショーケン」の愛称で親しまれ、グループサウンズ全盛時代の1960年代にザ・テンプターズのボーカルを担当し、「神様お願い!」などのヒット曲で一世を風靡(ふうび)。70年代に俳優に転じてからも日本テレビ系の刑事ドラマ「太陽にほえろ!」で故・石原裕次郎さんらと共演、演じた「マカロニ刑事」は語り継がれている。 ◆お茶の間のスター役者としての存在感は映画「青春の蹉跌」で74年、キネマ旬報の最優秀主演男優賞に輝いたほか、名探偵・金田一耕助が登場する「八つ墓村」、追い込まれた誘拐犯を演じた「誘拐報道」、黒澤明監督の「影武者」など話題作に次々と出演を重ね、評価を高めていった。 一方で恋愛の話題にも事欠かず、75年に結婚した最初の相手と離婚後、80年に歌手いしだあゆみと結婚、84年に離婚するなど、結婚、離婚を繰り返し、2011年、モデルの冨田リカ(理加)さんと結婚し、現在に至っている。事務所によると、11年は萩原さんの闘病が始まった時期と重なっていた。 破天荒な人生を歩んだのもショーケンだった。再三の逮捕など、トラブルメーカーとしてのショーケンをそのたびに世に印象づけた。 83年、大麻所持で逮捕され、執行猶予判決を受け、一時芸能活動は封印された。だが、復帰後の84年、飲酒運転で事故を起こし、再び逮捕。さらに85年には女優倍賞美津子との写真を撮られたことに激高し、カメラマンに暴行を加え、摘発された。2004年にはまたも交通事故で逮捕、出演料をめぐるトラブルから恐喝容疑で告訴され、05年、執行猶予付き有罪判決を受け、しばらく活動停止を余儀なくされた。 唯一無比な存在の俳優としての地位を築きながら、プライベートはまさに波瀾(はらん)万丈の人生。スキャンダルまみれになる前には人気を誇ったテレビドラマ「前略おふくろ様」、水谷豊との共演が印象深い「傷だらけの天使」などに出演、当時で言う「お茶の間」でもスターダムにのし上がっていた。 ◆妻にみとられ…所属事務所によると、萩原さんは2011年から消化管間質腫瘍に患い、闘病を続けていた。26日、容体が急変、妻理加さんに看とられる中、旅立ったという。故人の遺志で、葬儀は家族のみで執り行われ、東京都内の斎場で27日、荼毘(だび)に付されたことも明らかにされた。 理加さんは「生前に、お世話になりました仕事関係の皆さま、ファンの皆さまに、心よりお礼申し上げます。これまで、本人の強い意向により、病のことは公表せずに参りました。最期は、とても穏やかで安らかに、ゆっくりゆっくり、眠るように息を引き取りました。今はまだ、心の整理がついておりませんので、皆さま、どうかご理解いただけると幸いと存じます」と談話を発表した。 また、故人の遺志に従い、お別れの会や偲(しの)ぶ会を後日行う予定はない、としている。 ◆グループサウンズから始まった栄光の足跡萩原健一さんのホームページ(HP)では昨年11月19日、TBS系の番組に出演、ザ・スパイダースのメンバーだった堺正章と対談し、グループサウンズ(GS)時代の共通の話題や懐かしいエピソードで盛り上がっていた。 HPではGS“卒業”後には大野克夫さん、沢田研二らとロックバンド「PYG(ピッグ)」を結成したが、音楽より俳優に傾き、映画「約束」で好演が評価され、「太陽にほえろ!」などのヒット作など、栄光の足跡を紹介している。 ミュージシャンとしては1975年に初のソロアルバム「惚れた」をリリース。俳優のかたわら音楽活動も継続し、デビュー50周年の2017年にはスタジオライブアルバム「LAST DANCE」を発表、ミュージシャン・ショーケンの健在ぶりを示していた。 最近のテレビドラマでは18年9月から放映されたNHK土曜ドラマ「不惑のスクラム」も取り上げられていた。高橋克典演じる主人公をラグビーに引き込んでいく役柄を演じていた。当時、記者会見でラグビーについて聞かれた萩原さんは「私は球技はまったくダメで…」と答えていたエピソードも紹介されていた。 萩原さんは昨年3月、テレビ朝日系日曜ワイド「明日への誓い」で元刑事の牧師役を演じていた。同作は主演・原案を萩原さんが担っていた。 昨年、萩原さんは自身のレーベル「Shoken Records」を設立。また、妻理加さんの運営しているHP「RIKA VOICE」には今年2月7日に萩原さんとくつろぐツーショット写真がアップされ、理加さんが「普通の1日」とのタイトルで萩原さんとの出会いなどなれそめを英語で記していた文章が添えられていた。 一部を紹介すると、2009年に彼(萩原さん)と出会い、10年が過ぎた。普通の日を過ごせることがありがたい…と前置きし、「Over the Rainbow」の歌詞が紹介されていた。 ◆素顔は常識的▽テレビドラマ「傷だらけの天使」を撮影した恩地日出夫監督 「演じた役柄のせいもあり、反世間的でハチャメチャなイメージがあったかもしれないが、素顔は常識的でまともなやつだった。(2011年の)脚本家の市川森一の葬儀で会ったのが最後だったかと思う。闘病していたとは知らず、突然のことで言葉がない」 <GIST(消化管間質腫瘍)> 胃がんや大腸がんが粘膜の表面に腫瘍ができるのに対し、GISTは消化管の粘膜より下層の筋肉層にできる腫瘍。消化管細胞の遺伝子の突然変異によって発症する。胃や小腸に多く、吐き気や下血などの症状があるが、表面化しにくく、診断が難しい。50~60歳代に多く、発症率は1年間で10万人に2人前後と極めて少ない。 <萩原健一(はぎわら・けんいち)> 1950年7月26日、埼玉県生まれ。17歳のとき、ザ・テンプターズの「忘れ得ぬ君」でデビュー。以降「エメラルドの伝説」「神様お願い!」などヒットを連発。映画出演は「約束」(72年)「青春の蹉跌」(74年)「八つ墓村」(77年)「影武者」(80年)「誘拐報道」(82年)「226」(89年)「居酒屋ゆうれい」(94年)「JOKER疫病神」(98年)、「TAJOMARU」(2009年)など。テレビドラマは「太陽にほえろ!」(72年)「同棲時代」(73年)大河ドラマ「勝海舟」(74年)「前略おふくろ様」(75年)「飢餓海峡」(88年)大河ドラマ「利家とまつ」(2002年)など多数。著書に「俺の人生どっかおかしい」(ワニブックス)「ショーケン」(講談社)など。
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