防衛省は26日、宮古島市上野野原(のばる)に整備した陸上自衛隊宮古島駐屯地に、宮古警備隊約380人を新設した。海洋進出を強める中国を念頭に、その動きを封じ込めるための防衛力強化の一環と位置づけられている。

 沖縄の日本復帰後、自衛隊施設の新設は、2016年3月の与那国町での与那国駐屯地(沿岸監視隊)に続き2カ所目となる。

 警備隊は、19年度以降に配備予定の地対空・地対艦ミサイル部隊のミサイルを警備したり、有事の際の初動対応を担ったり、増援部隊の受け入れが円滑に進むように港湾など重要施設を防御するのが任務である。

 今後ミサイル部隊が配備されれば隊員数は最終的に700~800人になる予定だ。

 防衛力強化の動きが続く一方で、住民生活との関係では、駐屯地の安全性に疑問も呈されている。

 駐屯地内の燃料タンクや宿舎などの地下3カ所に空洞が見つかっており、地震が起きても耐えられるのか、事故は起きないかとの懸念が住民から上がっている。

 防衛省は「強度上、問題ない」と強調する。だが、地質学の専門家らは「安定性を評価するデータが不十分で、強度的に妥当とするのは無理がある」としており、懸念は拭えていない。

 地元が配備容認の前提としたミサイルを保管しない、ヘリパッドを設置しないとの約束も、順守されるのか疑念が示されている。

 政府は最低限、十分な説明や情報公開をすべきである。

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 防衛省は南西地域を「自衛隊の空白地帯」とし、態勢強化を着々と進めている。

 宮古警備隊の新設と同じ日に、鹿児島県の奄美大島にも警備部隊と地対空・地対艦ミサイル部隊を約550人配置。1日には石垣島でも陸自配備に向けた基地の造成工事に着手した。ここ数年の動きは自衛隊新設、増強のラッシュである。

 さらに、占領された島を奪還するための「島嶼(とうしょ)防衛用高速滑空弾部隊」が離島などに配備される予定だ。作戦を担う水陸機動団はすでに長崎県に2個連隊あるが、3個目が20年代前半に米軍キャンプ・ハンセンを共同使用して配備されることも取り沙汰されている。

 鹿児島の種子島から、奄美、沖縄本島、宮古、石垣、与那国の各島をつないだ自衛隊の増強は、南西諸島の「軍事要塞(ようさい)化」というほかない。

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 政府は島嶼防衛や抑止力を高めるなどとして、自衛隊配備の必要性を説明する。沖縄では名護市辺野古での新基地建設もあり、自衛隊と米軍の軍事力増強が同時に進む。

 抑止力とはいっても、軍事偏重の取り組みだけでは、安全保障のジレンマに陥り、逆に隣国との緊張を高めることにもなりかねない。隣国との対話や融和の努力が欠かせないのは言うまでもない。

 不測の事態から仮に紛争が起これば、標的になるのは沖縄を含むこの一帯の島に住む人たちである。

 住民視点を欠いた軍事増強はあり得ない。