零細事業者の廃業などでソウルではオフィスの空室率が昨年10-12月期に11.4%にまで上昇した。2013年の6.4%に比べると、5年でほぼ2倍に上昇した格好だ。漢江の南北を問わず、空きオフィスが増え、空室率が20%前後に達している地域も少なくないという。店舗物件の空室率も2013年の5.5%から昨年10-12月期には7%に上昇した。これまでの景気低迷局面でも灯りが消えることはなかったノンヒョン洞・清潭洞など江南商圏、梨泰院・新村・明洞などソウルを代表する商圏でも空室率が2-3倍に上昇し、20%に達するところも多い。ソウル都心の人気地区でこの有り様なのだから、ソウル郊外や地方ではもっとひどいだろう。それだけ現場の景気低迷が深刻であることを示している。
昨年廃業した自営業者は100万人規模に増えた。苦境に立った自営業者が借金に走った結果、卸小売業向けの融資は過去9年で最大の伸びとなる9.7%増だった。自営業の景気低迷は最近のことではないが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の所得主導成長政策がさらに冷や水を浴びせた。最低賃金を急速に引き上げ、労働時間を無理に短縮した結果、庶民の働き口がなくなり、所得が減少した。宿泊・飲食・卸小売りなどの雇用が1年間で9万人分減り、所得下位20%の層の勤労所得が37%も減少した。空いたオフィスとシャッターを下ろした店舗は誤った政策実験による産物だ。 それでも文在寅政権は所得主導成長政策を継続するとしている。最低賃金引き上げの速度調節と週52時間労働制の補完に向けて発足した経済社会労働委員会まで全国民主労働組合総連盟(民主労総)の暴走で動きが取れずにいる。最低賃金の決定時に「企業の支払い能力」を基準にし、引き上げペースを調節するという政策は、労働界の反対に直面し、見直し案から除外されてしまった。弾力労働制の拡大も民主労総が単位期間の拡大自体に反対しており、進展していない。
民主労総がバックで経済社会労働委を無力化しているにもかかわらず、民主労総には弱い政府は顔色をうかがってばかりだ。このままであれば、来年の最低賃金も大幅に上昇し、週52時間労働制の見直しはうやむやになりかねない。庶民経済はそれこそ酷寒期を迎えることになる。