提督の憂鬱 作:sognathus
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実家からだそうです。
さて、内容は......。
時雨「大佐。大佐宛てにお便りが来てるよ」
提督「本部からか?」
時雨「ううん違うみたい。これは......ごめん。よく分からないな」
提督(よく分からない? どういうことだ?)
提督「見せてみろ」
時雨「うん。はい」
提督「ふむ......」
時雨「何処から?」
提督「実家だ」
時雨「実家?」
提督「俺が生まれた家、故郷だ」
時雨「へぇ、大佐にもそういうのがあるんだ」
提督「それはどういう意味だ?」
時雨「なんか大佐ってずっと基地に居るイメージだったから、生まれたのも基地なのかなって思ってた」
提督「俺は生まれも育ちも鎮守府だと言いたいのか......」
時雨「似合ってるよ?」
提督「悪いが、欠片微塵も嬉しくない」
時雨「え? そうなの?」
提督「仮に基地で生まれたとする」
時雨「うん」
提督「生まれたての俺はどうやって基地で生きて行けばいいんだ?」
時雨「資材庫があるから大丈夫だよ」
提督「俺は人間だ」
時雨「あ、そっか。大佐は人間だったね」
提督「なぁ、俺はそんなに人間らしくないか?」
時雨「以前と比べれば、大分人間らしいと思うよ」
提督「そうか。そいつは安心した」
時雨「資材を食べることができないからね」
提督「お前の判断基準はそこか? 俺はそんな食べれそうな顔をしているのか」
時雨「大佐だったらいける気がするな」
提督「割とショックなものだな......」
時雨「どうしたの?」
提督「もういい。何でもない。取り敢えず実家からの便りということだ」
時雨「大佐が生まれた所かぁ......。ねぇ、どんなとこ?」
提督「ん? 田舎だな。山と川がある。後は殆ど家の周りは田んぼと畑だった」
時雨「ふーん......」
提督「お前、俺が言った光景を想像できてないだろ」
時雨「あはは。実はさっぱり」
時雨「写真とかないの?」
提督「写真か......」ゴソゴソ
提督「あった。昔の写真だが、ほら背景に山とか田んぼが写ってるだろ」
時雨「......ねぇ、この小さい子は誰?」
提督「俺だ」
時雨「え!?」
驚いた時雨は写真と提督を何回も見比べた。
提督「どうしたんだ」
時雨「え、だってこれ全然似てないよ?」
提督「それは子供の頃だからな」
時雨「え、大佐って生まれた時からその姿じゃなかったの?」
提督「俺は人間だと言っているだろう......」ガク
時雨「へぇ、そっかぁ。大佐も昔は小さかったんだ」
提督「頼む。納得してくれ。俺の人間としての尊厳を認めてくれ」
時雨「な、なんでそんなに必死なの?」アセアセ
提督「今まで生きてきてこれほどまでに精神的に叩きのめされたのは初めてだからだ」
時雨「そ、そんなに僕酷い事言った?」
提督「他の人には言うなよ。ここには俺以外の人間はいないけどな」
時雨「うん。分かった。本当にごめんね?」
提督「分かればいい」
時雨「でも大佐が小さい頃の写真かぁ......。ねぇ、これ貰っていいかな?」
提督「親が焼き増しているはずだから構わないが......そんなのが欲しいのか?」
時雨「うん。何だかとても珍しい物を見つけた気がするからね」
提督「返せ。動機が不純だ。俺は天然記念物か何かか」
時雨「わ、わ。ごめん! 大事にするからちょうだい」
提督「大事にするかどうかはお前に任せるが、少なくとも珍獣扱いはやめろよ?」
時雨「うん。分かった、ありがとう。大事にするね♪」
提督「本当に頼むぞ」
時雨「さてとそれじゃ......あ。うーん......」ゴソゴソ
提督「どうした?」
時雨「この服ポケットがないからしまえないんだ。ま、いいや此処に入れとこ」
そういうと時雨はおもむろに提督の写真を胸元に入れ始めた。
提督「おい」
時雨「ん......何?」
提督「お前それ絶対に人前で出すなよ」
時雨「え? 他の人に見せちゃいけないの?」
提督「そうじゃない。そこに入れてるときは人前で出すなと言ってるんだ」
時雨「......よく分からないけど分かったよ。手に持ってたらいいんだよね?」
提督「そうだ」
時雨「じゃ、今はこの後直ぐに部屋に戻るからここに入れておくよ」
提督「そうか......くれぐれも慎重にな」
時雨「さっきからどうしたの? 元気がないね」
提督「少し疲れてるからな。悪いが、仮眠をとるから用がないならもう出て行くように」
時雨「うん、分かった。またね、大佐」フリフリ
バタン
提督「.....」
提督「疲れた......」ガク
提督お疲れ様です。
自分で書いてて提督に同情してしまいましたw