挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
踏み台転生者になったので全力で役割を全うします。〜世界最強の踏み台転生者〜 作者:清水 彩葉

第一章 ニュウガク

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
14/16

初授業、そして





 「は〜い! それでは皆さん、二人組を作って下さい〜」



 ………………うっ! 頭が!

 ここはSクラスの教室。結局昨日は全員俺の部屋に泊まり、キングサイズよりも大きいベッド(天蓋付き)で一緒に寝た。キングサイズより大きいとは言っても精々寝れて四人が限界なベッドに無理やり六人で寝たのだから、とても狭かった。隣がリーナであったのなら間違いなく一睡も出来なかったであろう。四方から漂ってくる甘くていい匂いと全身に感じる柔らかい感触のせいで、正直今も寝不足気味である。

 と、話が逸れたな。今日はこの学院に入って初めての授業だ。一流の踏み台転生者として好成績を残さねば! と、張り切って気合を入れていたのだが、フレアさんに初手で前世のトラウマを抉られた。

 だが! 何を隠そう俺には可愛い可愛い妹が居るのだ! もう何も怖くない! 別にアレ(二人組分け)を倒してしまっても構わんのだろう?



「お兄さまっ! 私と組みましょ――」

「あ〜、ちなみにアラン君とアイラさん、そしてグレン君とテーネさんはそれぞれ別の人と組んで下さいね〜」

「そんな!?」

「だって、こう言ってないと皆さん同じ人としか組まなくなってしまうでしょう〜?」



 なんてこったい。やばい……前世のトラウマが……。もう先生と柔軟体操するのは嫌なんだ……!

 待て待て待て、落ち着けアランよ。このクラスは偶数! つまり俺一人余ることはない! それに、この場には友達がいっぱい居るじゃないか!



「ならボクと組もうよアラン!」

「なあアラン! お前はオレと組むよな!?」

「アラン、宜しければ一緒に組みませんか?」

「…………アランと組む」



 ありがとうみんな!! これで俺のぼっちは回避されたと言ってもいいだろう。ふははは、勝ったな。でも、誰を選べばいいのだろうか。

 俺が誰を選ぶかで悩んでいると、アイラがすっと立ち上がったかと思うと俺達の間に入り込み、ふしゃーっと威嚇を始めた。え、ちょっと待ってアイラちゃん?



「私はお前らがお兄さまと組むなんて絶対認めねぇぞ!」

「まあまあ、そう嫉妬すんなよアイラ。オレ達と組むかどうかはアランが決めることだろ?」

「そうはいかねぇよ!! お兄さまはとても優しいお人ですから、そんな四人同時に迫るなんてしたら誰を選ぶかで迷ってしまうに決まってます! ですよねお兄さま!?」



 アイラは可愛いけどちょっと残念なところがあるからまたとんちんかんなことを言うんだろうなと思ってたから、俺の考えていることをドンピシャで当てられたのには正直結構驚いた。

 流石はずっと一緒にいる家族だ、妹の俺に対する理解度がめっちゃ高い。片時も離れず風呂やトイレにまで着いてこようとするだけのことはあるな。



「あぁ。今まさにそれで悩んでいたところだ」

「ほらぁー! ほらぁー!! 諦めろよお前ら!」

「うぅー! 一緒に組みたいけど、でもボクもアランを困らせたいわけではないし……うぅー!」

「そう、ですね。ですが、ならアランは誰と組むんですか?」

「…………勿論、私」

「そいつはズリぃよ、クリスティーナ。オレだって本当はアランと組みてぇんだから」



 ……うーむ。平行線だな。どうしたもんか……。

 と、俺が唸っているとちょんちょんと肩を叩かれる感覚。ん? なんだ?



「アランくん、私と組もうよ」

「む。テーネか」

「いやー、私もグレンくんと組んじゃダメって言われちゃってさ……。君が組んでくれたら嬉しいんだけど……」

「あぁ、そうだな。構わない。寧ろこちらからお願いしたいくらいだったからな」

「ほんと? やったね!」

「「「「「あー!!」」」」」



 アイラ達がこちらに気付くが、時既に遅し。

 よろしくね! と悪戯げに笑いながら右手を差し出す彼女にこちらこそと返しながら、こちらも右手を差し出し握手する。………………ふむ、なるほどな。


 結局、組み合わせは俺とテーネ、ユリアとリーナ、エルナとクリスティーナ、アイラとグレン君の四組に決まった。アイラがテーネのことをまるで親の仇でも見るような形相で睨みつけていたのが印象的だった。ちなみにテーネの方はどこ吹く風で、むしろ俺にボディタッチとかすることでアイラを煽って楽しんでるようだった。ドSか。



「さて、皆さんしっかりペアを組めましたね〜。では早速実技授業を始めましょうか〜」

「はいはーい! フレアせんせー! なんでいきなりペアなんて作ったんですか? 最初は座学からじゃないの?」

「流石はユリアさん、いい質問ですね〜」

「えへへー! でしょー! アラン見てた? ボク褒められたよ!」



 やっぱユリアは可愛いな。見た目も勿論そうだけど、何よりその見てるだけで元気が出てくるような明るい性格が可愛い。やっぱ元気っ娘はいいなぁ。



「では、最初に説明しておきましょうか〜。まず、何故初めから座学じゃなく実技から入るのかというと、皆さんがSクラスだからです〜」

「……成程、このクラスには成績優秀者しか居ないからですか」

「はい〜、グレン君の言う通り、このクラスの人達なら基礎的な座学は必要ありませんからね〜」



「んーと……アラン、どういうこと?」

「そうだな……。ユリア、俺達が何故Sクラスに配属されたか覚えているか?」

「うん! 確か、ボク達は成績が良かったから既存のクラスでは授業のレベルが合わない……って、そっか」

「あぁ、俺達は既に試験で好成績を残している事から座学を飛ばして実技の授業を受けても大丈夫だと判断されたのだろう」



 疑問符を浮かべていたユリアは今の説明で納得してくれたようで、ありがとー! と満面の笑みで感謝を伝えてくる。やっぱ元気っ娘はいいなぁ。

 と、フレアさんの説明はまだ途中だったな。



「納得して貰えたみたいなので、次は授業内容について説明しますよ〜。まあ、そうは言っても内容は単純ですから安心してください。これから皆さんにはペアで除魔草を採取してきて貰います〜」

「除魔草というと、あの『悪夢の迷い森』に自生するあの除魔草ですか?」

「おぉーっ! 『悪夢の迷い森』って言えば国から立ち入り禁止ダンジョンに認定されてる危ねぇ森じゃねぇか! いきなりそんな所に行くなんて腕が鳴るぜ!」

「はい、お二人の言う通りです〜。本来であればいきなりそんな危険な場所に行くなんてありえませんけど、Sクラスのあなた達であれば大丈夫だと判断しました〜。いざとなったら私達教師も巡回してますから、大声を出してくださいね〜」



 フレアさんはほんわかと笑いながらそういうが、中々凄いことを言ってるな。

 この世界にはダンジョンと呼ばれる未開の地を開拓することを生業とする『冒険者』という職業があるのだが、立ち入り禁止ダンジョンとは、そんな冒険者の中でもほんのひと握り、国から腕利きの冒険者だと認められた者しか入れないようなとても危険な場所だ。とても生徒が授業で行くような場所とは思えない。スパルタ教育にも程があるだろ。



「それでは早速行きましょう〜! 皆さん、着いてきてくださいね〜」

「待ってくださいフレア先生! ここから『悪夢の迷い森』まではかなり距離があります。今から出発すると向こうに着くのは日没後になってしまうのでは?」

「エルナさんの言うことはごもっともです〜。でも、それは普通に向かったらの話ですよね〜?」

「? ということは、普通の行き方ではないということですか?」

「はい〜。説明するより見てもらった方が早いですね〜」



 教室から出て移動中にもエルナの質問に答えるフレアさん。そのままいくつかのやり取りを交わしていると、みんなを引率していた彼女がある一室の前で立ち止まった。その扉は厳重にロックされていたようだが、フレアさんが手を翳すと独りでに開きだす。

 部屋の中はむき出しの岩に囲まれるようになっていて、まるで掘り出した場所をそのまま部屋にしたかのようだ。そしてその地面には大きな魔法陣が光り輝いている。これは…………。



「こ、これは……?」

「ん〜、そうですね〜。では、アランくん。これが何か分かりますか〜?」

「かなり大規模で複雑な魔法陣。魔法陣の構造を見る限り、空間転移系の魔法。まず間違いなく現代では失われた魔法、古代魔法(ロスト・マジック)でしょう。この規模の魔法陣、そして流れている魔力量から考えるに、複数人を一度に運べる程の大魔法。この複雑な魔法構造、恐らくこれを作ったのは人類ではない。これは俺の予想ですが、この転移魔法は風の原初の精霊ヴェントのものでしょう」



 この学院にこんなものがあるとは思わなかった。聖硬石の壁といい、この学院には現代では失われたアーティファクトが多過ぎないだろうか。



「アランくんが全部説明してくれましたね〜。流石は研究者としても一流なだけあります〜。…………まあ、この魔法が風の原初の精霊が作ったものだとまでは私も知りませんでしたが」

「この魔法を解析させて貰いましたが、これは『空気のある場所に瞬間転移する』という魔法のようです。移動距離が遠ければ遠い程、転移する質量が大きければ大きい程、消費する魔力も大きくなるみたいですね」

「……………………解析、ですか〜? この短時間で、原初の精霊が作った古代魔法(ロスト・マジック)を?」



 信じられないものでも見るかような目でフレアさんに見られた。ドン引きされとるやんけ! 俺も一応研究者の端くれとして、ついつい熱く語りすぎてしまっただろうか。やってしまった。



「…………まあ、アランくんが人間離れしてるのは今更ですし、いいです。それより今は転移魔法ですね〜。もう皆さんお察しかも知れませんが、今からこの魔法陣を使って『悪夢の迷い森』まで転移してもらいます〜」

「転移魔法……。お、お兄さま、大丈夫なんでしょうか?」

「俺が見た限り安全性は高いな。流石は原初の精霊といったところか。だからそんなに怖がるな、アイラ」

「お兄さまが言うのなら間違いありません! もう私不安なんて吹き飛びました!」



 はいはいさすおにさすおに。可愛い。やっぱり俺の妹は天使だった。

 テーネ以外の他のみんなも少し緊張してたようだが、俺の言葉を聞いてか今はもう安心出来たようだ。信用されているみたいで嬉しい限りだな。



「さて、そういう訳で今から二人ずつ『悪夢の迷い森』の入り口に転移しますね〜。除魔草を採取出来たら入り口に集合です〜。全員集まったら帰りますからね〜」



 では、最初はどのペアにしましょうか〜。そう言いながら悩むフレアさんに相方のテーネが声を上げた。



「それじゃあ、まず私達が行くよ! アランくんもそれでいいよね?」

「あぁ、構わない」

「そうですか、ありがとうございます〜! なら早速送っちゃいますね〜。こっちに立ってください〜」



 テーネと並んで魔法陣の上に立つ。すると魔法陣が眩く光り輝き始めた。魔力の高まりを感じる。

 お兄さまっ! 気を付けて下さいね! と呼び掛けてくるアイラに微笑みながら軽く手を振り返すと、光が俺達を包み込んだ。



「楽しみだね、アランくん」

「あぁ。頼りにしてるぞ、テーネ」

「ふふっ、こちらこそ!」





 さて、楽しい課外授業の始まりだ。初めての授業、一流の踏み台転生者として好成績を残すために、張り切っていこう。


 ・今話のハイライト


 アラン→美少女達とお泊まりイベント&同じベッドで寝るとかいう羨ま……けしからん行動。ある意味踏み台転生者らしいムーブかもしれない。爆発しろと言われても仕方ないと思う。


 テーネ→ヒロイン達がわちゃわちゃしてる時に横からアランをかっさらっていった伏兵。原初の精霊の大魔法にも怯まない強メンタル。



 読了ありがとうございます。次話以降もどうぞ宜しくお願い致します。





 アイラ→風呂やトイレにまで着いてこようとすることが判明した拗らせブラコン。


               清水彩葉

宜しければワンクリックお願い致します!→小説家になろう 勝手にランキング ↓こちらの方もよろしくお願い致します!→cont_access.php?citi_cont_id=879252013&s script?guid=on
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。