安倍晋三首相の自民党総裁としての任期をさらに三年延ばす発言が党幹部から相次いでいる。「余人をもって代え難い」場合との条件付きだが、長期政権の弊害にこそ目を向けるべきではないか。
昨年九月の総裁選で連続三選を果たした安倍氏の任期は二〇二一年九月まで。この任期をさらに三年延ばす可能性に、二階俊博幹事長ら党幹部が言及し始めた。
安倍氏の政権運営は比較的順調で、トランプ米大統領ら各国首脳と人脈もあり、「党内外、特に海外からの評価もある今の状況では十分に(任期延長が)あり得る」(二階氏)という理屈だ。
連続三選されて日が浅い段階で四選の可能性に言及する背景には政権のレームダック(死に体)化を避け、求心力を維持する狙いがあるのかもしれない。
自民党総裁の任期は、安倍氏の任期途中で連続二期六年から連続三期九年に延長された。その流れをつくり、党の実権を握る幹事長に就いたのが二階氏だ。今回も連続四選支持をいち早く表明することで、自らの続投に道筋をつける思惑があるとも指摘される。
安倍氏自身は昨年「最後の総裁選」と明言し、続投は考えていないとされる。党則改正を必要とする連続四選が実現するか否かは現時点では不透明だが、その弊害は指摘しておかねばなるまい。
一般に、長期権力は腐敗する、というのが歴史の教訓だ。それ故に民主主義社会では、権力者の任期を制限することで権力の過度の集中を防ぐとともに、人材活性化を図り、組織停滞を防いできた。二期八年という米大統領任期も、権力の大きさゆえの制限だろう。
自民党総裁は一政党の役職にすぎないが、その任期が注目されるのも首相選びと不可分だからだ。もはや党員以外の、私たち一般の有権者も無関心ではいられない。
連続四選された安倍氏が任期を全うすれば、任期途中で総辞職した第一次内閣と合わせて十三年近くも首相の座にあることになる。
すでに「安倍一強」の下、首相官邸に権限や権力が過度に集中し、公平公正であるべき行政が官僚らの忖度(そんたく)によって歪(ゆが)められたと指摘されてきた。これ以上、一強の弊害が続いていいのか。
共同通信社の最新世論調査では安倍内閣の支持率は40%を超えるが、理由で一番多いのは「ほかに適当な人がいない」だ。連続四選発言が相次ぐのも、ポスト安倍候補の迫力不足があるのだろう。与野党を問わず、奮起を促したい。
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