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この作品 「【翻訳】きみがいない500日」 は「原作者様に10点、翻訳者様に10点」「工藤新一」等のタグがつけられた作品です。

Hikari-chanさまの英語による作品 "500 Days Wit...

Nessa F.

【翻訳】きみがいない500日

Nessa F.

2015年4月14日 20:17
Hikari-chanさまの英語による作品 "500 Days Without You" が大好きで、このたび許可を得て日本語に翻訳させていただきました。

原文:https://www.fanfiction.net/s/10026028/1/500-Days-Without-You

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Special thanks go to Hikari-chan who has originally written this story in English and kindly given me the permission to translate it into Japanese.
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拙い訳ですが、英語でコナンを楽しんで、たくさん調べ物をして日本を舞台にしたファンフィクションを執筆していらっしゃる海外在住の作者さんの情熱を、なんとかお伝えできれば、と。

※組織崩壊後。解毒剤も完成しています。志保さんのほうは作中ではずっと「灰原哀」という呼び名で認識されていますが、いちおうタグは「新志」にしてあります。途中で少し、新一と蘭ちゃんがおつきあいする展開が入ります。

※4/15追記:ブクマ、評価等ありがとうございます。あと、とても光栄なタグも(ひゃー)。

 
 東の名探偵・工藤新一としてのかつての栄光をどのようにして取り戻すかということについて、小学生・江戸川コナンは幾通りもの空想をしてきた。しかしながら現実の経緯は、思い描いていたどんな夢よりも、盛り上がりに欠けていたのだった。

 一年にわたる熱心な捜査の末に黒幕が逮捕され、組織は崩壊した。ただしFBIの提案により、コナンはその後も、自分の正体については口をつぐんだまま過ごしていた。

「モグラども、つまり一部の潜伏している組織員たちがまだ捜索中だ」と、赤井秀一は諭してきた。「実際に大人の身体に戻れるようになるまでは、例の薬のことは秘密のままにしておくほうが安全だろう。それに、もしきみについての真相がおおやけになってしまったら、十歳も若返ることができる薬に、世間はどんな反応をすると思う?」

 コナンは、この赤井との会話について、灰原には一切、語ることはなかった。ただ単に、引き出すことができたAPTX-4869の情報をすべて渡しただけだ。そして、そのままコナンとしての生活に戻った。なんといっても、黒の組織を倒す過程において、敵を欺くにはまず味方からだということを、彼は学んでいたのだ。身近な人々――蘭、小五郎、高木、目暮など――が、コナンに対する態度を変えなければ、誰かの注意を引きつけてしまうこともないだろう、と。

 夏に入ったばかりのある日、郵便物を抱えた蘭が毛利家のリビングに入ってきて、コナンに小さな包みを手渡した。薄くて平べったい、小説の本くらいの大きさのものだ。

「コナンくん宛てよ」と、蘭は言った。「なにか注文した?」

「ううん、してない」コナンはゆっくりと返答した。少しいぶかしげに、小包を眺める。住所ラベルの下の部分に、おかしな走り書きのようなものがいくつかあった。それが暗号によるメッセージだと気付くまでには、そう長くはかからなかった。「ええっと、ぼく、ちょっとトイレ!」

 飛び上るように椅子から降りて、コナンは階段を駆け下り、小五郎の探偵事務所に向かった。遠ざかるその後姿に、蘭は戸惑ったような視線を投げかけ、自分の右側を指差して「でも、トイレならそこに……」と言いかけたが、肩をすくめ、ほかの郵便物に目を戻した。

 コナンは事務所のドアを開け、周囲に誰もいないことを確かめたうえで鍵をかけ、小包を覆う紙を破り取った。「他人がいないところで開けるように」と、メッセージには書かれていたのだった。

 息を詰める。爆弾かなにか、あるいは罠、あるいは謎かけ、あるいはFBIからの手掛かりかもしれないのだから。しかし出てきたのは、小さな金属製の箱だけだった。ミントタブレットが入ったケースみたいなやつだ。コナンはゆっくりとそれを開けた。中には、薄紙に包まれた、赤と白のカプセル。

 小包に手紙は同封されていなかったが、コナンは自分が手にしているものがなんであるかを、確信を持って悟っていた。これ以上にはなり得ないほどの大きな笑みが、彼の顔に広がった。これは、あの日トロピカルランドで失ったものすべてを取り戻すための鍵だ。

 ケースをぱちんと閉じて事務所をあとにすると、コナンは階段の上に向かって「蘭姉ちゃん、博士んち行ってくるね!」と叫んでから駆け下りて外に出て、米花町二丁目二十一番地にある自分の家を目指した。

 工藤邸は、ちょっとばかり埃っぽくはあったが、記憶していたままの状態だった。コナンは階段を駆け上がって自室に入り、水もなしに薬を飲み込んだ。身体がもとの大きさに戻っていくときの、馴染んだ痛みが湧き起こる。数分後には、白熱のような感覚の最後の名残をやり過ごし、その激しさに意識を失うことがないよう、胸を押さえながら耐えていた。

 自分の身体を見下ろし、笑みを浮かべる。十八歳の身体に戻ったのだ。しかも願わくば、今度こそ、ずっとこのままでいられるはず。

 まずは、衣服を身につけた。

 それから、ふたたび玄関を走り抜け、大急ぎで毛利探偵事務所に戻って行った。幼馴染みのあいつを、びっくりさせてやるんだ。
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