坂中英徳の最後のミッション
最近の私は、晩節を全うするためいかに生きるべきかについて考える時間が増えた。自分が背負っている責任の重圧に押しつぶされそうになる時もある。なかんずく新生の移民国家を担う人材の育成で頭を悩ますことが多い。
言うまでもなく、移民国家の建設のような世紀の大事業は、幕末の吉田松陰、坂本龍馬らの俊英のごとく、20代の若者が決起しないと完成しない。今こそ、明治維新の時の志士たちのように、当代のサムライたちが日本の世直しのため立ち上がる時だ。
いつの時代も、新しい歴史の扉を開くのは決まって若い人たちだ。斬新な発想と行動力のある若き精鋭たちが移民国家をつくる舞台で主役を演じ、移民政策の理論に詳しい古老が後方から支えるのが理にかなった革命のやり方である。
移民政策研究所所長として移民国家の中枢部門を担当する人材を育てるのが私の最後のミッションである。そのことについてはあまり心配していない。国家存亡の危機の時代には、あたかも天が危機を救うため送り込んだかのように逸材が輩出するものである。
そうは言っても、移民政策の世界において坂中英徳のあとに坂中英徳は現れないかもしれない。万一私の後継者と目せられる人物が現れなかったとしても、後世の人々の参考になればと思って30冊余の移民政策論文集を書き残した。これらの著作物を参考にして政治家と行政官が世界屈指の移民国家をつくりあげてくれるだろう。民間からも坂中移民革命思想に共感する人々が続出するだろう。それらの群像の中から移民革命とそれに続く日本革命を牽引する国民的リーダーが出現するだろう。