国民の分断と移民政策
2018年末現在の国の借金が1000兆円を超えるところ、人口の少子高齢化の流れを食い止めることはできないので、国の抱える借金はこれからもエンドレスで増え続ける。
借金地獄の国を襲う悲劇のひとつとして、膨れ上がる一方の社会保障費の負担をめぐっての若年層(負担者)と高年層(受益者)の対立の激化がある。またたくまに世代間闘争が勃発する。最悪の場合には、国民的規模での骨肉の争いが起きることにもなりかねない。それだけではない。日本人が培ってきた和の精神も非常時に命がけで助け合う美風もそこなわれてしまう。
日本の悲劇を避ける方法はあるのか。考えられる唯一の策は移民立国に活路を見いだすことだ。「国民の分断」を阻止するには、猛烈な勢いで減少してゆく若年人口を補うのに効果的な移民政策をとる以外の選択肢はないのである。
人口崩壊と財政破綻を回避し、最小限の社会保障制度を後世の国民に残すのに必要な移民国家への転換について早急に国民合意を取りつけるのは政治家の責務だ。世代間の利害の調整をはかって国民統合を維持することは、日本政治に課せられた最優先課題だ。
だが、国民統合の重要性を認識する国会議員がいることは寡聞にして知らない。私は国民の分断を阻止するため移民政策の導入の緊急性を提言しているが、政界からの応答はない。残念無念であるが、政治家の中に子供の将来に思いをいたす人士はいないようだ。人口崩壊の脅威に手をこまねいて移民鎖国を続ける政治の愚と罪は大きいと言わなければならない。2050年の世代間闘争が激化する時代に生きる日本人は、50年前の無責任政治に憤りを爆発させるに違いない。
超少子化時代の今も毎日3000人近くの子供が生まれている。日本の宝である子供たちの将来に何を残すのか――すべての日本人が真剣に考えるべき問題である。
付言すると、移民にとっても日本の充実した社会保障制度は魅力的なものである。日本に骨を埋める決意の移民をひきつけるためにも社会保障制度の骨格を維持する必要がある。